2018年4月23日月曜日

論説フェローになっても苦しい日経 芹川洋一氏の「核心」

論説委員長から論説主幹に肩書が変わったと思ったら、今度は「論説フェロー」になっている日本経済新聞の芹川洋一氏。ただ、記事に問題が多いという傾向は変わらない。23日の朝刊オピニオン面に載った「核心~『官僚たちの夏』の終わり 幹部人事の傾向と対策」という記事に関して問題点を指摘してみる。
甘木公園の噴水と桜(福岡県朝倉市)
       ※写真と本文は無関係です

まず記事の前半部分を見ていこう。

【日経の記事】

内閣人事局が2014年にできて首相官邸が府省幹部の人事権をにぎり、忖度(そんたく)がうまれて政策がゆがむようになった――。世の中ではそんなイメージができつつある。本当なのだろうか

実は、官邸が幹部人事に関与する仕組みができたのはもっと前で1997年。官房長官を中心とする人事検討会議がそうだ。橋本龍太郎内閣の行政改革会議の提言を受けたものだった。内閣人事局で600人の評価をするようになったが、安倍1強の長期政権で各省へのグリップがきいているとみた方がよさそうだ。

ではどこまで官邸で人事を差配しているのか。具体例をあげながら点検してみよう。「官僚たちの夏」の終わりに浮かびあがってくるのは、安倍官邸の人事の4原則とその運用の問題である。

17年夏の霞が関。関係者が息をひそめて見守っていた人事があった。経済産業省の事務次官だ。嶋田隆氏(昭和57年入省)が昇格するかどうかだった。東日本大震災のあと東京電力の取締役につき、官房長で経産省にもどり通商政策局長をつとめていた。

同期入省組のひとりは「嶋田を次官にしなかったら省内はおさまりがつかない」と言い切っていたが、ある経産次官経験者は「東電改革のすすめ方で官邸とぎくしゃくしていたからなぁ」と心配顔だった。嶋田次官は誕生、杞憂(きゆう)におわった。

なぜ彼らがピリピリしていたのか。その理由は、安倍官邸の人事の第1原則が「各省の既定路線による順送りはしない」だからである。

同期の順位がきちっと決まっていた旧海軍の「ハンモックナンバー」ほどではないにしろ、各省では幹部の序列はあらあら定まっていき、この期なら誰が事務次官かという暗黙の了解ができあがっていくものだ。

各省の秘書課長―官房長―事務次官のラインで決めていく官の人事構想。政は大方認めてきた。しかし官僚主導の根っこはそこにあるとみた。幹部人事を官邸で一元的にチェックし、内閣主導をはっきり示そうとしたのが人事検討会議であり、その拡大版である内閣人事局だった。

霞が関を驚かせた人事はいくつもある。ひとつの例が総務省の事務次官人事だ。13年、本命視され“次官待ち”の総務審議官だった大石利雄氏(昭和51年入省)が消防庁長官に回った。別の同期が総務次官になった。官邸の意向が働いたとみられた。さらに人事権をみせつけたのは1年後の14年。大石氏は次官ポストについた。同期のトップをはずさなかった。官僚秩序を守るかたちをとった。

財務省で昭和54年入省組から3人の次官が出たのも異例だった。ある大蔵次官経験者は「昭和28年、49年など同期で2人次官が出たことはあるけど、3人というのは安倍内閣でなかったら誕生しなかっただろうね」と語る。

各省の「簿価評価」ではなく、政権にとっての「時価評価」で人事を行っているとみていい。

◇   ◇   ◇

問題点を列挙してみる。

(1)「第1原則」は成り立ってる?

各省の既定路線による順送りはしない」という「第1原則」が成り立っているようには見えない。「経済産業省の事務次官」人事で「嶋田隆氏(昭和57年入省)が昇格するかどうか」に関しては、「嶋田次官」が誕生して経産省の「既定路線」通りになったのではないか。
門司港(北九州市)※写真と本文は無関係です

「これは例外で、ほとんどの場合は原則通りだ」と芹川氏は言うかもしれない。だが、記事には「官邸筋は『人事はすべて官邸で決めているように言われるがそんなことはない。8割方は各省からあがってきた案のままだ』と漏らす」との説明もある。これを信じれば、「8割方」は「各省の既定路線による順送り」の人事になりそうだ。


(2)「官僚たちの夏」の説明はなし?

『官僚たちの夏』の終わり」と見出しでも使っているが、「官僚たちの夏」に関する説明が全くない。「『官僚たちの夏』の終わりに浮かびあがってくるのは~」と、読者も現状が「『官僚たちの夏』の終わり」だと了解しているとの前提で話が進む。不親切にも程がある。

「官僚が元気だった時代の終わり」とでも言いたいのだとは思うが、「官僚たちの夏」という小説は昭和30年代の通商産業省が舞台なので、「終わり」は既に訪れている。今は春なのに「夏の終わり」になってしまう点も含めて、例えとしてもしっくり来ない。


(3)相変わらずの平仮名好きだが…

芹川氏はなぜか大の平仮名好きだ。それが読みにくさを感じさせるレベルに達しているが、改善の兆しはない。それでも一応、「漢字で書けばいいのに…」と感じる部分を抜き出してみた。

具体例をあげながら」→「具体例を挙げながら

浮かびあがってくるのは」→「浮かび上がってくるのは

東京電力の取締役につき、官房長で経産省にもどり通商政策局長をつとめていた」→「東京電力の取締役に就き、官房長で経産省に戻り通商政策局長を務めていた

同期のトップをはずさなかった」→「同期のトップを外さなかった

感触をさぐっていく」→「感触を探っていく

各省からあがってきた案のままだ」→「各省から上がってきた案のままだ

政治の運びをかえていくうえで」→「政治の運びを変えていくうえで


このぐらいにして、記事の後半に話を移そう。ここで気になったのは第4の原則だ。

【日経の記事】

第4の原則も忘れてはならない。「事前に人事情報が漏れたら差し替える」というものだ。16年の外務省人事にそうした痕跡が残った。

中略)官僚主導から内閣主導へと政治の運びをかえていくうえで、4原則は決しておかしなことではない



◎「第4の原則」はおかしいのでは?

第4の原則も忘れてはならない」と芹川氏は言うが、詳しい解説はない。そして「4原則は決しておかしなことではない」と結論付けている。しかし「第4の原則」は本当ならば問題ありだ。

人事案Aが採用されそうな時に、それを潰したい側はその案をメディアなどに流せばいい。そうすれば、人事はなしになる。人事案Aが最も適材適所であっても「事前に人事情報が漏れたら差し替える」というやり方に何のメリットがあるのか。「官僚主導から内閣主導へと政治の運びをかえていく」効果があるとも考えにくい。

次は記事の結論部分を見ていこう。

【日経の記事】
 
問題は運用にある。主要ポストを歴任し半世紀以上にわたって霞が関をみてきた官僚OBは次のように指摘した。

「人事には権力者の自制心がなにより大事だ」

事務次官や官房長ににらまれても1、2年たてば代わる。それが官僚組織の風通しの良さにつながっていた

「もし事務次官がおかしな人事だと思えば任命権者は大臣なのだから大臣と組んで官邸に対抗していくしかない」

竹下―村山7代の内閣で官房副長官をつとめた石原信雄氏が、学士会会報(18年3月)に寄せた随想の一節にこんなくだりがあった。

「政権及び与党の幹部に望みたいのは(略)当面(略)採用し難いもの(政策)であっても、発案した職員を差別しない雅量を持って欲しい」

制度は運用次第。運用は人次第。最後は人の問題ということなのだろう。


◎色々と引っかかる点が…

まず「事務次官や官房長ににらまれても1、2年たてば代わる。それが官僚組織の風通しの良さにつながっていた」とのコメントが引っかかった。「官僚組織って、そんなに風通しがいいの?」との疑問も浮かんだが、実態を知っているわけではないの良しとしよう。ただ、だとすれば別に大きな問題はない気がする。政権が誰を「事務次官や官房長」に選ぼうと、「官僚組織の風通し」は良いままではないのか。
基山町役場(佐賀県基山町)※写真と本文は無関係です

そして、最後は「制度は運用次第。運用は人次第。最後は人の問題ということなのだろう」という当たり前の結論に辿り着く。これが間違っているとは言わない。だが、「内閣人事局が2014年にできて首相官邸が府省幹部の人事権をにぎり、忖度(そんたく)がうまれて政策がゆがむようになった――。世の中ではそんなイメージができつつある。本当なのだろうか」という記事の冒頭での問題提起には、結局答えを出していない。

これでは紙幅を費やしてあれこれ論じてきた意味がない。「きっと芹川氏なりの答えを出してくれるはず」と期待して読む方が間違っているのかもしれないが…。


※今回取り上げた記事「核心~『官僚たちの夏』の終わり 幹部人事の傾向と対策
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180423&ng=DGKKZO29654420Q8A420C1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。芹川洋一論説フェローへの評価はE(大いに問題あり)を据え置く。芹川論説フェローについては以下の投稿も参照してほしい。

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_50.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_98.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_51.html

日経の芹川洋一論説委員長は「裸の王様」? (1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_15.html

日経の芹川洋一論説委員長は「裸の王様」? (2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_16.html

「株価連動政権」? 日経 芹川洋一論説委員長の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_31.html

日経 芹川洋一論説委員長 「災後」記事の苦しい中身(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_12.html

日経 芹川洋一論説委員長 「災後」記事の苦しい中身(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_13.html

日経 芹川洋一論説主幹 「新聞礼讃」に見える驕り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_33.html

「若者ほど保守志向」と日経 芹川洋一論説主幹は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_39.html

ソ連参戦は「8月15日」? 日経 芹川洋一論説主幹に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/815.html

日経1面の解説記事をいつまで芹川洋一論説主幹に…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_29.html

「回転ドアで政治家の質向上」? 日経 芹川洋一論説主幹に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_21.html

「改憲は急がば回れ」に根拠が乏しい日経 芹川洋一論説主幹
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_29.html

2 件のコメント:

  1. テレ東の芹川洋一さんが出てる動画だけ何故か毎回コメント欄非公開何でなぜかと思ってたんですが、元々問題のある人なんですね。
    失礼ながら、顔立ちが受け付けないので動画みたことないんですが、見なくていいかって気になりました

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  2. 芹沢洋一様お答え下さい!
    世界唯一外国産日本国憲法の成立経緯を検討すべきです。西鋭夫氏の著書が存在します。国会で憲法改正国民投票法が成立しましたね。現状の日本国憲法の成立経緯を国民に正確に知らせる責務が有リます。小生個人の意見ですが,現状日本国憲法は、英国・米国中心の白人社会国家が世界で唯一有色人種の日本大和民族の頭脳に脅威を感じて,今後日本人が白人社会国家に従う様に思考停止・平和呆けの憲法を起草したのです。
     それが矛盾条文だらけの憲法第9なのです。日本人は完全に洗脳されてしまったのです。この洗脳を解かないと真の日本人は生まれないのです。よろしくお願い致します。
    szhkjp1997@yahoo.co.jp
    この小生のアドレスにご回答下さい。
    2022/04/24
    名古屋市南区三吉町 志田欣治

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