2018年4月6日金曜日

必須情報が抜けた日経「 日立金属、特殊鋼の生産能力増強」

5日の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「特殊鋼の生産能力増強 日立金属、需要増で90億円投資」という記事は、必須情報が抜けていたりと問題点が目立つ。記事の全文を見て上で具体的に指摘したい。
甘木公園の噴水と桜(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

日立金属は約90億円を投じて安来工場(島根県安来市)の特殊鋼生産能力を増強する。有機ELパネル用の部材や、半導体の組み立てに使うリードフレームなど電子材料の需要増加に対応する。有機ELパネル用材料は2021年度までに生産能力を17年度の約3倍に増やす

特殊鋼の冷間圧延工程の建屋を拡張し、生産性が高い広幅の圧延機や焼鈍炉などを導入する。設備は20年度上期に稼働させる。安来工場はフル生産が続いており設備増強が急務となっていた。

有機ELパネルはモバイル機器で採用が広がる。あらゆるモノがネットにつながるIoT技術の活用にはセンサー半導体が不可欠のため、フレーム材料も需要が高まっている。日立金属によると、有機ELパネルの需要は24年までに面積ベースで17年の約7倍になる見込み。パネルメーカーが事業を拡大していることから主力工場の能力を向上させて対応する。

日立金属は生産能力拡大や販売体制の強化により、16年度800億円だった電子材料事業の売上高を20年度に1000億円規模に高める。成長戦略の一環として、異なる金属を貼り合わせた材料「クラッド材」を生産する子会社を統合し、新たな生産ラインを茨城県の工場に導入した。

◇   ◇   ◇

問題点を列挙してみる。

(1)特殊鋼生産能力はどのぐらい増える?

今回の場合、「安来工場(島根県安来市)の特殊鋼生産能力を増強する」のが話の柱だ。しかし、記事を最後まで読んでも、どの程度の「増強」なのか分からない。「有機ELパネル用材料は2021年度までに生産能力を17年度の約3倍に増やす」「16年度800億円だった電子材料事業の売上高を20年度に1000億円規模に高める」といった情報はあるが、ここから「安来工場の特殊鋼生産能力」がどうなるのか推測するのは困難だ。
佐世保港(長崎県佐世保市)※写真と本文は無関係です

特殊鋼生産能力を増強する」という話を柱に据えるのならば、生産能力がどの程度増えるのかは必ず入れてほしい。


(2)具体的な生産能力は?

安来工場の特殊鋼生産能力」が現状でどの程度あるのか不明なのも引っかかる。「有機ELパネル用材料」についても「生産能力を17年度の約3倍に増やす」とは書いているが、どの程度の能力を有しているのかは分からない。これでは苦しい。「16年度800億円だった電子材料事業の売上高を20年度に1000億円規模に高める」という情報で補っているつもりかもしれないが、ここから「特殊鋼」や「有機ELパネル用材料」の生産能力を推定するのもやはり難しい。


(3)日立金属全体ではどうなる?

安来工場(島根県安来市)の特殊鋼生産能力を増強する」という話を柱に据えるのは問題ない。だが、その場合でも「日立金属全体で見て特殊鋼の生産能力がどうなるのか」には言及すべきだ。

安来工場」については「主力工場」との情報があるので、他にも拠点があるのだろう。そこも合わせて「特殊鋼」や「有機ELパネル用材料」の生産能力がどうなるのかは重要なポイントだ。

成長戦略の一環として、異なる金属を貼り合わせた材料『クラッド材』を生産する子会社を統合し、新たな生産ラインを茨城県の工場に導入した」といった話を盛り込むのは、その後でいい。


※今回取り上げた記事「特殊鋼の生産能力増強 日立金属、需要増で90億円投資
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180405&ng=DGKKZO28993610U8A400C1TJ1000


※記事の評価はD(問題あり)。

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