2018年4月13日金曜日

未熟さ感じる日経「ポスト平成の未来学~ ゴミはなくせる」

12日の日本経済新聞朝刊未来学面に載った「ポスト平成の未来学 第6部 共創エコ・エコノミー ゴミはなくせる~『捨てる』情報、世界で共有」という記事は、全体として作り手の未熟さを感じた。そこで、担当者らに以下の内容でメールを送ってみた。
竹崎城址展望台公園(佐賀県太良町)
        ※写真と本文は無関係です

【日経へのメール】

日本経済新聞社 大平祐嗣様 嘉悦健太様 田辺省二様

ポスト平成の未来学 第6部 共創エコ・エコノミー ゴミはなくせる~『捨てる』情報、世界で共有」という記事について意見を述べさせていただきます。

まず、冒頭に出てくる「ピリカ(東京・渋谷)が運営する無料アプリ『PIRIKA』」に関しては色々と疑問が残りました。「拾ったゴミを写真で報告しあう。全地球測位システム(GPS)と連動し、投稿されると地図上に拾った場所に星印がつく。世界81カ国で拾われたゴミは約7600万個」と記事では説明しています。

これらのデータを活用して「これまで見えなかったゴミの実態を見える化すれば、喫煙所やゴミ箱の設置場所のほか、そもそもゴミが捨てられにくい地面の舗装の開発に生かせる可能性があるという」と皆さんは記しています。ここがよく分かりませんでした。

「(道に落ちている)ゴミの実態」は基本的に「見える化」できています。皆さんも自宅周辺の道に落ちている「ゴミの実態」をある程度は把握しているのではありませんか。

「PIRIKAを使えばより詳細かつ正確に見える化できる」と反論したくなるかもしれません。しかし、このアプリで分かるのは「拾われたゴミ」についてです。熱心にゴミを拾うAさんがいた場合、Aさんの生活圏では多くのゴミが拾われるでしょう。ですが「Aさんの生活圏にはゴミがたくさん落ちている」と結論付けられるわけではありません。

「世界81カ国でデータを共有することに意味があるんだ」との反論も考えられます。しかし、「喫煙所やゴミ箱の設置場所」を考える上で、海外と情報を共有する意味があるでしょうか。そもそも日本では公園や路上に「ゴミ箱」がほとんどありません。それにポイ捨ても海外に比べて少ないと言われています。海外の情報を基に「ゴミ箱の設置場所」を工夫しても、「ポイ捨て」を防止する効果は期待しにくいのではありませんか。

そもそもゴミが捨てられにくい地面の舗装の開発に生かせる可能性がある」という説明も謎です。まず「ゴミが捨てられにくい地面の舗装」がどんなものかイメージが湧きません。これに触れるのならば、もう少し説明が必要です。それに、そんな素晴らしい「舗装」が技術的に可能ならば、アプリでのデータ収集を待たずにさっさと開発してほしいものです。開発にはデータ収集が必須なのかもしれませんが、記事からはそうした事情が読み取れません。

次は「スマートゴミ箱」についてです。「赤外線センサーでゴミの蓄積状況を把握し、リアルタイムで発信する」このゴミ箱を導入すれば「収集作業を最適化」できると解説しています。問題はこの後です。

スマートゴミ箱を実験する東海大学の撫中達司教授は『スマートデバイスの存在がリサイクル意識を高めるのに役立つ』という」との説明が謎です。「スマートゴミ箱」は見た目には普通のゴミ箱だと推測できます。「収集作業を最適化」できるとしても、ゴミを捨てる人の「意識」を変える効果は期待できそうもありません。「撫中達司教授」が的外れなことを言うとは考えにくいので、記事の説明が足りないような気もします。

記事ではさらに「収集状況が見える化されれば『要らないから捨て、たまったから収集する』という従来の意識や行動を大きく変える可能性がある」とも述べています。これは皆さんの考えなのでしょう。しかし、スマートゴミ箱の導入で「収集状況が見える化」できても、記事で言うような変化が起きそうな感じはしません。
片の瀬公園の桜と筑後川橋(福岡県久留米市)
          ※写真と本文は無関係です

まず「要らないから捨て」について考えましょう。「スマートゴミ箱」では、ゴミ箱からゴミがあふれて追加でゴミを捨てられない事態が減るはずです。ゴミ箱が使えない時にはゴミを自宅に持ち帰ったりしていた人が、従来よりも「要らないから捨て」られるようになるでしょう。これは皆さんの想定とは逆の変化です。

たまったから収集する」についても同様です。これまでは決められた時間に収集していたのを、「スマートゴミ箱」では「たまったから収集する=たまっていないときは収集しない」に改められるはずです。だとすると「たまっていなくても決まった時間に収集する」から「たまったから収集する」への変化が起きそうです。これまた皆さんが想定しているのとは逆の変化です。

ついでに記事の書き方について、いくつか指摘をしておきます。

まず「全地球測位システム(GPS)と連動し、投稿されると地図上に拾った場所に星印がつく」という文についてです。「地図上に拾った場所に」は「地図上の拾った場所に」とした方が自然な感じがします。「投稿される」は受身にする必要がありません。記事は受身表現は少なくした方が読みやすくなります。例えば「全地球測位システム(GPS)と連動し、投稿があると地図上の拾った場所に星印が付く」と直すとどうでしょう。どちらが読みやすいか比べてみてください。

次は「これまで見えなかったゴミの実態を見える化すれば、喫煙所やゴミ箱の設置場所のほか、そもそもゴミが捨てられにくい地面の舗装の開発に生かせる可能性があるという」という文です。

これは「喫煙所やゴミ箱の設置場所」のほか「そもそもゴミが捨てられにくい地面の舗装の開発」に「生かせる」--と言いたいのでしょう。しかし「喫煙所やゴミ箱の設置場所に生かせる」だと日本語として不自然です。また「可能性があるという」には冗長さを感じます。例えば、以下のようにしてはどうでしょう。

これまで見えなかったゴミの実態を見える化すれば、喫煙所やゴミ箱を従来より効果的な場所に設置したり、そもそもゴミが捨てられにくい地面の舗装の開発に生かしたりできるかもしれない

次は「横浜市などと実験を始め、アブダビ政府と商談も進める」という説明についてです。これは「無料アプリ『PIRIKA』」に関する記述です。まず、注釈なしに「アブダビ政府」と書いているのが引っかかります。「アラブ首長国連邦(UAE)を構成する首長国の1つであるアブダビ首長国の政府」を指すのでしょう。説明がないと「そんな国あったっけ?」と思う読者が多いはずです。

また、ゴミを拾って投稿する無料アプリに関して「横浜市などと実験を始め、アブダビ政府と商談も進める」と書いていますが、どんな「実験」なのか、どんな「商談」を進めているのか全く触れていません。無料アプリをアブダビ政府に売るのための「商談」ですか。おそらく違うでしょう。「アブダビ政府」の件も含めて説明不足が過ぎます。重要性が高い訳でもなさそうなので、このくだりは省くのが正解だと思えます。

最後に「青空背景に缶をスマートフォンで撮り、交流サイトにアップした」についてです。ここでは「青空背景に」が気になりました。こういう使い方をする人が今はいるのかもしれません。個人的には「青空を背景に」でないと違和感があります。

私からの意見は以上です。今後の記事作りに生かしてもらえれば幸いです。

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※今回取り上げた記事「ポスト平成の未来学 第6部 共創エコ・エコノミー ゴミはなくせる~『捨てる』情報、世界で共有
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180412&ng=DGKKZO29256050R10C18A4TCP000


※記事の評価はD(問題あり)とする。大平祐嗣記者、嘉悦健太記者、田辺省二記者への評価は暫定でDとする。今回の記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「海にゴミを捨てるのは合法」と解説する日経 未来学面の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post_13.html

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