2018年2月15日木曜日

「まとめ」に無理あり 日経「米アパレル市場 迅速配送で開拓」

記者が書くからなのか、デスクが求めるからなのか--。14日の日本経済新聞夕刊総合面に「米アパレル市場 迅速配送で開拓 『鎌倉シャツ』は現地に倉庫」という記事が載った。いわゆる「まとめ物」だ。一応は3社の動向をまとめているが、中身はスカスカだ。このレベルで世に送り出しても、記事の作り手としての能力の低さを証明するだけだ。
水天宮(東京都中央区)※写真と本文は無関係です

記事の全文を見た上で問題点を指摘してみる。

【日経の記事】

日本のファッション企業が倉庫を使った迅速な配送で米国市場を開拓する。メーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)は米国に設置する物流倉庫からの配送を3月に始める。カジュアル衣料店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも物流施設の設立を検討する。米国ではアマゾン・ドット・コムが強敵だが、迅速な配送によるネット販売の強化で米国進出に本腰を入れる。

メーカーズシャツ鎌倉はニュージャージー州に倉庫を設ける。当初の広さは約330平方メートル。定番のドレスシャツを中心に幅広い商品を扱う。日本から空輸で2週間ほどかかっていたのが、米国の倉庫から直送することで、ニューヨークなど東海岸の近い場所なら最短で翌日に届くという。

倉庫などの初期投資額は1千万円弱を見込む。ネットの売上高は約10億円だが、数年内に15億~20億円に増やす計画だ。

バロックジャパンリミテッドも米国の倉庫を活用して短時間配送に取り組む。昨年11月に米国向けの通販サイトを立ち上げたが、注文から数日内に届けるようにする。ファーストリテイリングも将来的に米国で物流施設の設置を検討する。物流を強化して、米国のネット販売を増やす戦略だ


◎実質1社モノのような…

この記事は実質的には「メーカーズシャツ鎌倉」の1社モノだ。

バロックジャパンリミテッド」については、自社の倉庫なのかどうか不明だし、米国のどこに倉庫があるかも分からない。既に「米国の倉庫を活用」しているのか、これから「活用」するのかも判然としない。これでは情報としての価値が乏しい。

ファーストリテイリング」に関しては、さらに苦しい。最初の段落で「ファーストリテイリングも物流施設の設立を検討する」と出てきたので、第2段落以降で詳細な情報を提供するのかと思ったが「ファーストリテイリングも将来的に米国で物流施設の設置を検討する。物流を強化して、米国のネット販売を増やす戦略だ」と同じような話を繰り返しているだけだ。

では「メーカーズシャツ鎌倉」の話は凄いかと言うと、これも大したことはない。「当初の広さは約330平方メートル」で「初期投資額は1千万円弱」。1社モノならばベタ記事が精いっぱいだ。まとめ物にして扱いを大きくしようとの意図は理解できるが、無理があり過ぎる。

ついでに言うと「ネットの売上高は約10億円だが、数年内に15億~20億円に増やす計画だ」との説明にも問題を感じた。ここでは「メーカーズシャツ鎌倉」の国内も含むネット販売の話をしているのだろう(断定はできない)。だが、「倉庫を使った迅速な配送で米国市場を開拓する」というテーマなのだから、米国での「ネットの売上高」を説明すべきだ。非常に小さい金額になるかもしれないが、そこは仕方がない。

さらに言うと「約10億円」が年間の「売上高」ならば、その点は明示した方がいい。いつの「売上高」かも欲しい。「数年内」もできるだけ具体的な年数を入れたい。例えば「2017年3月期のネット販売は約10億円だったが、3~4年後には15億~20億円に増やす計画だ」となっていると「ちゃんと書いている感じ」がかなり出てくる。



※今回取り上げた記事「米アパレル市場 迅速配送で開拓 『鎌倉シャツ』は現地に倉庫
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180214&ng=DGKKZO26882330U8A210C1EAF000

※記事の評価はD(問題あり)。

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