2018年2月13日火曜日

エーザイに厳しすぎない? 週刊ダイヤモンド土本匡孝記者

週刊ダイヤモンド2月17日号に載った「財務で会社を読む エーザイ~特許切れの崖から落ちたまま 次の認知症薬が復活の鍵を握る」という記事では、「特許切れの崖から落ちたまま」との状況認識に疑問が残った。筆者の土本匡孝記者はエーザイに関して「崖の下から這い上がれるか」「崖下に落ちた業績低迷の状態から抜け出るべく」などと記しているが、実際の業績を見ると「崖下に落ちた」とは言い難い。
善道寺(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

記事では以下のように説明している。

【ダイヤモンドの記事】

今年で経営トップに就いて30年、創業家筋の内藤晴夫代表執行役CEO(最高経営責任者)が率いる同社の顔といえばアルツハイマー型認知症治療薬だ。この領域で世界初の薬「アリセプト(一般名ドネペジル)」を1997年に発売すると、ピーク時の10年3月期には世界で約3200億円を売り上げた。アリセプトはエーザイの名を一気に世界に広めた。

エーザイは武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共と並んで、国内大手製薬4社の一角に数えられる。業界最高水準の給与(17年3月期有価証券報告書で平均年間給与1039万円)、「日本製薬団体連合会」トップなどを務めてきた会社としての“格”──などを総合評価して、業界内でそう位置付けられてきた。

だが肝心の売上高はアリセプトが10年以降、米国など世界の主要マーケットで相次いで特許が切れると、他社から後発品が発売されて一気に落ち込んだ。いわゆる「パテントクリフ(特許の崖)」に突入したのだ

同じく主力製品だった消化性潰瘍治療薬「パリエット(一般名ラベプラゾールナトリウム)」もほぼ同時期に特許切れし、主力2製品の後退と歩調を合わせて売上高は減少。10年3月期は他の3社よりやや劣勢という程度だったが、今では3社と比べ2分の1~3分の1ほどだ。純利益も徐々に見劣り感が出てきた(図(2)、(3))。

収益性を測るROE(自己資本利益率)は、柳CFOが「いまだ十分な数字ではない」と認める通り、17年3月期で6.8%。こちらも徐々に低下してきた(図(4))。

大手製薬会社のある幹部は、「エーザイが座ってきた『国内大手』と呼ばれる席はいいかげん、好調な中外製薬に入れ替えるべき」と、“エーザイ切り”を言ってはばからない。それほど、エーザイの足元の業績は厳しい

製薬会社の業績はイノベーションによるところが大きい。製品の当たり外れで業績が乱高下するのは常である。

冒頭の柳CFOの発言のように、エーザイは手をこまねいているわけではない。崖下に落ちた業績低迷の状態から抜け出るべく、「アリセプト景気をはるかに超える頂を築き得る」とうわさされる新薬を仕込んでいる。

米バイオ医薬大手バイオジェンと共同開発中の次世代アルツハイマー型認知症治療薬3剤のことで、それらは2月2日時点で第2~第3相試験中だ。


◎「崖下に落ちた業績低迷」?

売上高はアリセプトが10年以降、米国など世界の主要マーケットで相次いで特許が切れると、他社から後発品が発売されて一気に落ち込んだ」のは分かる。しかし「崖下に落ちた業績低迷の状態」と言われるほどだろうか。

土本記者は「(大手3社に比べて)純利益も徐々に見劣り感が出てきた」というものの、純利益は10年3月期が403億円で17年3月期が394億円。18年3月期の見通しも398億円といずれも400億円前後だ。

崖下に落ちた業績低迷の状態」かどうかを見る上で重視すべきなのは売上高よりも利益だ。アリセプトの特許切れの後も利益水準をほぼ維持しているのであれば、健闘と評価してもいい。

しかも「13年3月期以降、研究開発費が売上高比率約21~24%と高い傾向にあり、業績を圧迫している」という。将来への投資を削って利益を確保しているわけでもない。これで「崖下に落ちた業績低迷の状態」と評するのは酷だ。


※今回取り上げた記事「財務で会社を読む エーザイ~特許切れの崖から落ちたまま 次の認知症薬が復活の鍵を握る
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/22688


※記事の評価はD(問題あり)。土本匡孝記者への評価もDを据え置く。

0 件のコメント:

コメントを投稿