横浜赤レンガ倉庫(横浜市) ※写真と本文は無関係です |
【日経ビジネスの記事】
国民投票のハードルの高さも相当なものだ。参考になるのが16年、英国やイタリアで国民投票が否決され、ともに首相が退陣に追い込まれたケースだ。欧州連合からの離脱を巡る国民投票が事実上信任投票になった末に敗北した英のキャメロン前首相が衆院憲法審査会議員団に語った言葉が示唆に富む。「人々は現状維持に傾きがち。現状を変更したい側は少なくとも60%程度の賛成者がいるような状況にしておく必要がある」
◎本当に「示唆に富む」?
上記の解説を読んで「キャメロン前首相の言葉は示唆に富むなぁ…」と思えただろうか。個人的には「えっ? どういうこと?」と混乱してしまった。
まず、「欧州連合からの離脱を巡る国民投票」の直前の状況を確認しておこう。2016年6月27日の日経ビッグデータの記事では以下のように記している。
【日経ビッグデータの記事】
報道で多く取り上げられている調査は、ユーガブ(YouGov)という調査会社が発表したものである。2014年のスコットランド独立住民投票の際に、ほぼ正確に結果を予想したことで注目された会社だ。ユーガブの調査は何回か行われているが、投票の前日に発表された投票前最後の調査の結果は残留支持が51%で離脱支持が49%、投票日に行われた調査では残留支持が52%で離脱支持が48%だったという。しかしながら、実際の投票結果は、残留支持が48.1%、離脱支持が51.9%というみなさんご存じの結果となった。
◇ ◇ ◇
英国では国民投票前に残留支持と離脱支持が拮抗しており、強いて言えば残留支持が優勢だった。しかし、投票結果は離脱支持が上回った。当然ながら「現状を変更したい側」に当たるのが離脱支持だ。そして、キャメロン前首相は残留(現状維持)を目指していた。
「現状を変更したい側は少なくとも60%程度の賛成者がいるような状況にしておく必要がある」という発言が説得力を持つためには「直前の世論調査では離脱支持がやや優勢だったのに、結果としては残留派が勝利した」となる必要がある。しかし、結果は逆だ。
「現状を変更したい側」の賛成者は直前まで50%弱だったのに、国民投票では勝利を得ている。なのになぜ「現状を変更したい側は少なくとも60%程度の賛成者がいるような状況にしておく必要がある」とのキャメロン前首相の言葉を「示唆に富む」ものとして受け止めたのか。安藤編集委員の気持ちが理解できない。
英国の国民投票から教訓を得るとしたら「現状を変更したくない側は少なくとも60%程度の賛成者がいるような状況にしておく必要がある」となるはずだが…。
※今回取り上げた記事「ニュースを突く~11年前のトラウマと改憲」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/092900002/020700136/?ST=pc
※記事の評価はD(問題あり)。日経ビジネスでこれまでに書いた記事の安定感を評価して安藤毅編集委員への評価はC(平均的)とする。
0 件のコメント:
コメントを投稿