2017年11月7日火曜日

週刊ダイヤモンド特集「外食チェーン全格付け」に注文

週刊ダイヤモンド11月11日号の特集「味から儲けの仕組みまで 外食チェーン全格付け」に関して、引っかかった点をさらに述べてみたい。まずは「Part 1~寿司&肉 『早い! 安い! 旨い!』の裏側」の最初に出てくる「高原価率をIT化でカバー 装置産業化する回転寿司」という記事の役に立たない情報から見ていこう。
大分県日田市の三隈川(筑後川)
       ※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

ところで、消費者は何を基準に店を選べばいいのか。『回転寿司の経営学』の著者である米川伸生氏によれば、店の実力を測ることのできるネタはマグロとタイ、ハマチ。これらがまずい店は「避けた方が無難」。仕入れる力の有無、ネタの品質にこだわっているかが如実に表れるのだ。



◎店選びの参考になる?

店の実力を測ることのできるネタはマグロとタイ、ハマチ。これらがまずい店は『避けた方が無難』」という情報を得て「なるほど。今後の店選びの参考にしよう」と思えるだろうか。「マグロとタイ、ハマチ」がまずい店は「避けた方が無難」ではなく、絶対に避けた方がいい。改めて言われるまでもない。

この書き方だと「米川伸生氏」が愚か者に見える。実際にそうなのか、ダイヤモンドの書き方に問題があるのかは分からないが…。

次は「Part2~隣の客イタダキマス! 新勢力の面取り合戦」の最初に出てくる「ビジネスマンの財布に狙いを定めた麺系たちの一等地争奪戦」を取り上げる。


【ダイヤモンドの記事】

幸楽苑は1954年に福島県会津若松市に開店した食堂が起源で、北海道から広島県まで約550店を展開。看板商品は390円(税込み421円)の「中華そば」で、2015年に290円から値上げした。この老舗ラーメン大手を苦境に追い込んだのが、日高屋を展開するハイデイ日高である。看板商品は同じく390円の「中華そば」だが、こちらは税込みだ。

さいたま市大宮区に73年に開店した中華料理店を祖業とするハイデイ日高の店舗数は、首都圏を中心に約380店。歴史の長い幸楽苑に差をつけられている。

ところが16年度の決算で、幸楽苑の売上高が前年度比1.0%減の378億円だったのに対して、ハイデイ日高は同4.7%増の385億円と逆転したのである。営業利益も幸楽苑の1.4億円に対して、ハイデイ日高は45億円と、収益力の差を見せつけた。

売上高に占める原価率は、幸楽苑が27.0%でハイデイ日高は27.7%とそれほど差がない。本誌アンケート調査の顧客総合満足率でも、幸楽苑は38.3%、日高屋は38.1%と、ほぼ互角だ。

似たような低価格ラーメンを手掛ける業態でありながら、明暗を分けたものは何か。鍵を握るのは、出店戦略の差である

日高屋がこだわってきたのは、駅前への出店。見本となったのは、かつて駅前で当たり前の存在だったラーメンやおでんの屋台である。

屋台が終電近くまでビジネスマンでにぎわう光景を見た日高屋創業者の神田正会長は、「今後、駅前の屋台は時代の流れとともになくなっていくだろう。ならば、屋台の代用になる店をやろう」と考えた。だから、日高屋は駅前を重点的に攻め、屋台の代用となるべく当初からアルコール飲料の販売を前提としていたのだ。

一方、幸楽苑は郊外のロードサイドや商業施設を中心に出店してきた。店舗の9割以上に駐車場を備える徹底ぶりだが、車での来店客にはアルコール販売が見込めないという弱点があった。

この違いが、日高屋の売上高を押し上げた。ハイデイ日高の売上高に占めるアルコール飲料比率は、ビールのおいしい季節である夏場には約17%に達する。通常のラーメンチェーンの3~4%と比較すると、頭一つ抜けている。


◎ハイデイ日高が幸楽苑を追い込んだ?

この老舗ラーメン大手(幸楽苑)を苦境に追い込んだのが、日高屋を展開するハイデイ日高である」と書いているが、続きを読むと話が違ってくる。「日高屋がこだわってきたのは、駅前への出店」で「幸楽苑は郊外のロードサイドや商業施設を中心に出店してきた」。だとすれば、直接的に競合するわけではない。両社が「似たような低価格ラーメンを手掛ける業態でありながら、明暗を分けた」としても、それを「ハイデイ日高が幸楽苑を苦境に追い込んだ」と分析するのは無理がある。
キリンビール福岡工場(朝倉市)のコスモス
           ※写真と本文は無関係です

明暗を分けた要因として「鍵を握るのは、出店戦略の差である」と記事では解説するが、これも分析が甘い。例えば、両社ともに当初はロードサイドに店を出していたのに、最近になってハイデイ日高が駅前出店に切り替えて業績を伸ばしてきたのならば、明暗が分かれた理由を「出店戦略の差」に求めるのも分かる。

だが、ずっと前から両社の「出店戦略の差」はあったはずだ。なのに、なぜここにきて明暗を分ける展開になっているのか。そこを考えてほしかった。


※今回取り上げた特集「味から儲けの仕組みまで 外食チェーン全格付け
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/21750

※特集への評価はC(平均的)。特集の担当者への評価は以下の通りとする。

山本 輝記者(暫定D→暫定C)
臼井真粧美副編集長(暫定D→暫定C)
大矢博之記者(D→C)
小島健志記者(D→C)

※今回の特集に関しては以下の投稿も参照してほしい。

週刊ダイヤモンド外食格付け「160チェーン」の選定基準は?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/160.html

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