天ケ瀬温泉(大分県日田市) ※写真と本文は無関係です |
【東洋経済の記事】
総選挙は与党(自民党、公明党)の大勝で終わった。投票率は53.68%と戦後下から2番目だった。要するに盛り上がらなかったのである。それはなぜか。
希望の党の失速もあるが、選挙が盛り上がらなかった最大の要因は、政策の対立軸が不鮮明であった、もしくは野党がうまく対立軸を構想、設定できなかったことではないか。
順に考えてみよう。まず外交・安全保障であるが、現実の世界情勢を踏まえると、日米安保条約を基本とする以外の選択肢がありえようか。つまり外交・安全保障については争いようがないのである。これは欧米の先進国も同様であって、何も不思議なことではない。
通商政策については、わが国は自由貿易体制を堅持するほかはない。近代の工業社会に必要な化石燃料をほぼ産しない以上、自国ファースト主義は取りえないのだ。世界の先進国の中で自由貿易の恩恵を最も受けているのは実はわが国なのだ。
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「自由貿易」が「国家が輸出入品の禁止・制限、関税賦課・為替管理・輸出奨励金などの規制、および保護・奨励を加えない貿易」(デジタル大辞泉)という意味ならば、日本の現状が「自由貿易体制」でないのは明らかだ。多くの商品に当たり前のように関税がかかる。「規制」も山のようにある。
記事の筆者である「ウーミン」氏は「通商政策については、わが国は自由貿易体制を堅持するほかはない」「自由貿易の恩恵を最も受けているのは実はわが国なのだ」と主張する。ならば話は簡単だ。TPPなど参加する必要はない。既に「自由貿易」は実現できていて、あとはその体制を「堅持する」だけでいい。だが、本当にそうだろうか。
鳥栖プレミアム・アウトレット(佐賀県鳥栖市) ※写真と本文は無関係です |
ついでに言うと、「外交・安全保障」についても思考停止が過ぎる。「現実の世界情勢を踏まえると、日米安保条約を基本とする以外の選択肢がありえようか。つまり外交・安全保障については争いようがないのである。これは欧米の先進国も同様であって、何も不思議なことではない」と「ウーミン」氏は言い切っている。しかし、「欧米の先進国も同様」とは言い切れない。
「日米安保条約を基本とする以外の選択肢がありえようか」というのは「米国との同盟関係を基本とする以外の選択肢はない」との意味だろう。これを「欧米の先進国」にも当てはめられるだろうか。まず「米」に当てはめても意味がない。米国が米国の同盟国にはなれないからだ。
では「欧州の先進国」はどうか。これも他に選択肢がないとは言えない。スイスとオーストリアは永世中立国なので米国の同盟国ではない。「欧米の先進国も同様」との前提自体が誤りだ。
「日米安保条約を基本とする以外の選択肢」はあると考えるべきだ。「現実の世界情勢」の中で米国の同盟国でないのはスイスやオーストリアに限らない。そして、「米国の同盟国ではない=自国防衛が困難」と言える状況でもない。日本の場合は米国の同盟国であるが故に北朝鮮に敵視されている面もある。安全保障の「選択肢」については、固定観念に囚われず幅広く検討していくべきだ。
※今回取り上げた特集「ミスターWHOの少数異見~財源論なき政策論議で盛り上がり欠いた総選挙」
※記事の評価はD(問題あり)。
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