天ケ瀬温泉(大分県日田市) ※写真と本文は無関係です |
今回の記事には「大衆薬 女性が選ぶ『即効性』『漢方』」との見出しが付いている。実際にそう納得させてくれる「ミクロデータ」が出てくるか検証してみよう。
まずは「即効性」に関わる部分を見ていく。
【日経の記事】
調査会社のインテージ(東京・千代田)がまとめた国内の大衆薬市場は16年度、1兆938億円と20年前に比べ15%縮小した。その中で頭痛や生理痛に効く解熱鎮痛剤の市場規模は538億円と、同時期に15%増加。伸びが目立った。
第一三共ヘルスケアの解熱鎮痛剤「ロキソニンS」シリーズは、購入層の7割が女性だ。同社の調べでは、働く女性の3人に1人が週1回以上の頭痛を経験。特に管理職層が頭痛に悩まされているという。頭痛のタネは多いが、仕事や育児は休めない。そこで「即効性を訴えたら売上高が伸びた」と第一三共ヘルスケアの宮崎亨祐ブランドマネジャーは語る。
◎どこに「即効性」のミクロデータ?
「即効性を訴えたら売上高が伸びた」というコメントはあるものの、女性が「即効性」を重視して「解熱鎮痛剤」を選んでいるというデータは見当たらない。
「解熱鎮痛剤の市場規模は538億円と、同時期に15%増加」というデータは「即効性」との関連を示すものではない。「ロキソニンS」の売上高ならば多少関係があるのかもしれないが、「即効性」を訴えた後でどの程度の増収になったのかは不明だ。
「ロキソニンS」に限った話でも構わないので、「即効性」を訴える前と後でどう売り上げが変化したのか、それに女性がどう関わっているのかは欲しい。例えば「横ばい基調だった売り上げが、『即効性』を訴えた後は年率で5%以上の伸びを続けている。購入層の女性比率も50%から70%に跳ね上がった」などと書いてあれば「女性が選ぶ『即効性』」に説得力を感じる。
「漢方」に話を移そう。
【日経の記事】
「もやもやした体調不良」に悩む女性を癒やす漢方薬も好調だ。漢方には医者が処方する医療用とドラッグストアなどで買える一般用があり、一般用の漢方薬市場は16年度に489億円。20年前の1.8倍に増えた。中高年女性が中心だが、冷えやむくみなど女性特有の悩みにも効くと若い愛用者が増えている。
6月下旬、東京・丸の内の女性向け漢方専門店「カガエカンポウブティック」では、美容関連に勤める20歳代の女性2人が薬剤師から説明を受けていた。そのうちの1人で埼玉県に住む女性会社員(28)は頭痛と貧血が悩みだったが、漢方薬を服用して「頭痛の回数が減った」と喜ぶ。
カガエカンポウブティックを運営する薬日本堂(東京・品川)の鈴木養平取締役によると、同社が展開するシニア、中年、若い女性向けの3種類の店舗のうち、「百貨店からの出店要請が最も多いのは、若い女性向け店舗だ」という。
◎女性関連のデータは?
「漢方薬」について「中高年女性が中心だが、冷えやむくみなど女性特有の悩みにも効くと若い愛用者が増えている」と言うものの、その根拠となる肝心の「ミクロデータ」が見当たらない。データを紹介しないまま「女性向け漢方専門店」の話に移り、「漢方薬」の話を終えている。これで「女性が選ぶ『漢方』」と言われても困る。
キリンビール福岡工場(朝倉市)のコスモス ※写真と本文は無関係です |
今回の記事で女性関連の「ミクロデータ」をある程度は提示したと思えるのは、最後の「胃腸薬」の事例だけだ。ここでは「肉食女子」という言葉の使い方が引っかかった。問題のくだりは以下のようになっている。
【日経の記事】
(オジサンに)代わって元気に食べて飲んでいるのが「肉食女子」と呼ばれる活動的な女性だ。新生銀行の調査では、1カ月の飲み会数は男性会社員で最も頻度が高い50歳代で2.5回だったのに対し、20歳代の女性会社員は2.8回と上回った。「20~30歳代女性の胃腸薬の年間購入額は増えている」(インテージ)
◎「肉食女子」=「活動的な女性」?
「肉食女子」(あるいは「肉食系女子」)とは「恋愛に積極的な女性」という意味だと思ってきた。しかし、今回の記事では「活動的な女性」という意味で用いている。ちょっと違う気がする。
※今回取り上げた記事「ミクロデータは語る(上)大衆薬 女性が選ぶ『即効性』『漢方』」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171121&ng=DGKKZO23720710Q7A121C1TJ2000
※記事の評価はD(問題あり)。西岡杏記者への評価も暫定でDとする。
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