2017年9月7日木曜日

堀内亮記者の説明下手が目立つ週刊ダイヤモンド「Inside」

週刊ダイヤモンド9月9日号の「Inside~産ガス国に反旗を翻した日韓『LNG取引』主導権争いが勃発」という記事の問題点をさらに指摘したい。まずは「産ガス国への根強い不信感」について。筆者である堀内亮記者の説明では、なぜ「根強い不信感」が生まれるのかよく分からない。
豪雨被害を受けた筑前岩屋駅(福岡県東峰村)
        ※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

日本は世界1位の、韓国は同2位のLNG輸入国だ。そのツートップが時を同じくして、産ガス国に反旗を翻した。その背景には、産ガス国への根強い不信感がある

日本の場合で説明しよう。まず、「価格」が高い。2008年以降、天然ガスの価格は米国・欧州で下がる一方なのに、原油価格と連動する日本では高止まりしている。

次に、日本の電力会社やガス会社のそれぞれが、どの程度の「量」を調達すべきなのかが読みにくくなっている。電力・ガスの自由化で競争が激化したことにより、各社の需給の見通しが不透明化しているからだ。仮にLNGが余ってしまった場合、仕向け地条項により転売が制限されているため、電力会社・ガス会社の経営へのインパクトは甚大だ。


◎「不信感」を抱く理由はないような…

不信感を抱く第一の理由は、価格の高さらしい。「原油価格と連動する日本では高止まりしている」という。原油価格と連動する値決め方式を日本側も同意して契約を結んだのならば、原油価格が下がらない限り、LNG価格も安くならないのは当然だ。日本側に読み違いがあったとしても、「産ガス国への根強い不信感」を抱く理由にはならない。「産ガス国」が契約通りの価格でLNGを供給している場合、「不信感」を持つ日本側にこそ問題がある。

日本の電力会社やガス会社のそれぞれが、どの程度の『量』を調達すべきなのかが読みにくくなっている」という第二の理由も謎だ。「電力・ガスの自由化で競争が激化したことにより、各社の需給の見通しが不透明化している」ことに「産ガス国」は何の責任もない。「仕向け地条項」の存在が日本側にとって困ったものなのは分かるが、日本の市場環境が変わってきたから「産ガス国への根強い不信感」を抱くというのは、おかしな話だ。

次に「仕向け地条項」が撤廃されたかどうかを見ていきたい。堀内記者の説明だと、どちらとも取れる。まず、最終段落を見てみよう。

【ダイヤモンドの記事】

ある業界関係者は、「今回の仕向け地条項の撤廃は、日本がLNG市場を形成するための大きな第一歩」と歓迎する。とはいえ、長期契約から短期契約・スポット取引への移行、トレーダーの育成など、日本がLNG取引の主役となるための課題は山積している。



◎仕向け地条項は撤廃された?

今回の仕向け地条項の撤廃は~」というコメントを使っているので「仕向け地条項は既に撤廃された」と理解したくなる。
豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です

しかし、その前には以下の解説もある。

【ダイヤモンドの記事】

韓国に先んじて、日本も同様の見解を示したばかりだ。この6月末、日本の公取委はLNG取引に関する調査報告書をまとめている。それには、LNGの引き渡し地点を出荷基地とするFOB(Free On Board)契約において、「(産ガス国が)仕向け地条項を規定することは独占禁止法上問題となる恐れがある」と盛り込まれた

◇   ◇   ◇

これを読むと、話が違ってくる。「今後は仕向け地条項を含む契約をしてはいけない」と決まったわけではなさそうだ。既に存在する仕向け地条項が無効になるとも考えにくい。なのに「今回の仕向け地条項の撤廃」と言い切ってしまってよいのか。他社の報道などを見ると「仕向け地条項の撤廃」は実現していないと思える。

今回の記事を読む限り、堀内記者は経済記事の書き手として必要最小限の実力を身に付けていないと推測できる。今回のような記事を再び世に送り出すことがないよう対策を考えてほしい。


※今回取り上げた記事「Inside~産ガス国に反旗を翻した日韓『LNG取引』主導権争いが勃発
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/21183

※記事の評価はD(問題あり)。堀内亮記者への評価は暫定でDとする。今回の記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。

天然ガスは「高止まり」? 週刊ダイヤモンド堀内亮記者に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_6.html

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