2017年9月24日日曜日

「東芝に庇護なし」はどうなった? 大西康之氏 FACTA記事に矛盾

ジャーナリストで元日本経済新聞編集委員の大西康之氏がFACTA10月号に書いた「東芝『日米韓連合』逆転の真相」という記事を読んで驚いた。8月号では「(経産省の)庇護を受けられなくなった東芝には、応分の沙汰が下ることだろう」と解説していたのに、10月号では「東芝本体の救済にこだわる」経産省の姿を描いている。
豪雨被害を受けた大分県日田市 ※写真と本文は無関係です

FACTAには以下の内容で問い合わせを送っている。

【FACTAへの問い合わせ】

大西康之様 FACTA編集部 担当者様

10月号の「東芝『日米韓連合』逆転の真相」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは、7月5日の経産省人事に関する記述です。10月号では以下のように記しています。

7月5日、経産省で大きな人事異動があった。東芝再建の窓口である商務情報政策局の局長には、安藤久佳に代わり貿易経済協力局長だった寺澤達也が就任した。同時に東芝問題を担当していた情報通信機器課は情報産業課に改組され、課長も三浦章豪から成田達治に代えられた。通常、中央官庁の人事では、仕事の継続性を考え、重要案件を担う部署の局長と課長が同時に代わることはない。局長、課長セットでの交代には東芝問題に対する世耕弘成経産相の苛立ちが透けて見える。『とにかくメモリ事業を早く売らせて東芝本体を守れ』とのお達しである

これを信じれば、7月5日の人事は経産省が東芝本体を守る姿勢を鮮明にしたものと言えます。ところが8月号の「東芝弄んだ『経産の大ワル』」では全く異なる解説になっています。記事の最後で大西様は以下のように記事を締めています。

しかし経産省による東芝救済はついにデッドロックに乗り上げた。7月の経産省人事を見れば一目瞭然。安藤は外局の中小企業庁長官、ターゲティング派の頭目とされた経産政策局長の柳瀬唯夫は経産審議官に棚上げされ、次官の目はほぼ消えた。ターゲティング派に黄昏が迫る。庇護を受けられなくなった東芝には、応分の沙汰が下ることだろう

ここでは7月5日の人事を「ターゲティング派に黄昏が迫る」動きと捉え、「庇護を受けられなくなった東芝」の救済の道が絶たれつつあると結論付けています。同じ日付の人事を同じ筆者が解説しているのに、正反対とも言える分析です。

10月号では「『もう時間切れ。政府は東芝メモリの売却を諦め、別の方法で東芝本体に金を入れる方法を考え始めた』(金融関係者)」「そうまでして政府が東芝本体の救済にこだわるのは『原発推進』という国策を堅持する上で東芝が必要不可欠な『手駒』であり、『防衛産業』という裏の顔を持つからだ」との記述もあります。これも「庇護を受けられなくなった東芝には、応分の沙汰が下ることだろう」という8月号の解説と整合しません。

8月号と10月号の説明は矛盾していると考えてよいのでしょうか。問題ないとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。8月号の分析が間違っていたので10月号で修正を図ったと見るのが自然だとは思います。その場合、8月号の解説に問題があったことを10月号の記事で読者に伝えるべきです。

お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。


◇   ◇   ◇

10月号の記事の冒頭で大西氏は以下のようにも書いている。

【FACTAの記事】

東芝メモリの売却について、主力銀行から「最終リミット」とされていた9月13日、東芝は簡単なリリースを出した。
九州北部豪雨後の福岡県朝倉市※写真と本文は無関係です

「本日開催の取締役会でベインキャピタルを軸とする企業連合と同新提案に基づいて9月下旬までの株式譲渡契約締結を目指して協議を加速していくこととし……」

企業のニュースリリースで「目指して」「加速」するとは、「何も決まっていない」の同義。「米ウエスタンデジタル(WD)への売却で決まり」と書いてきた新聞は、軒並み誤報を打ったことになる



◎自分の誤報はどう釈明?

『米ウエスタンデジタル(WD)への売却で決まり』と書いてきた新聞は、軒並み誤報を打ったことになる」などと言う前に、大西氏は自分の「誤報」について説明責任を果たすべきだ。

10月号の記事の解説が現実に即しているとの前提で言えば「ターゲティング派に黄昏が迫る。庇護を受けられなくなった東芝には、応分の沙汰が下ることだろう」との8月号の説明は「誤報」に当たるはずだ。8月号では経産省の動きを見誤っていたとしても、それ自体を責めるつもりはない。問題は大西氏が自らの不明を認められるかどうかだ。


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「東芝『日米韓連合』逆転の真相
https://facta.co.jp/article/201710003.html


※記事の評価はD(問題あり)。大西康之への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。大西氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_49.html

大西康之編集委員が誤解する「ホンダの英語公用化」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_71.html

東芝批判の資格ある? 日経ビジネス 大西康之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_74.html

日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_31.html

 FACTAに問う「ミス放置」元日経編集委員 大西康之氏起用
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_28.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」が空疎すぎる大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_10.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」 大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_12.html

文藝春秋「東芝 倒産までのシナリオ」に見える大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_74.html

大西康之氏の分析力に難あり FACTA「時間切れ 東芝倒産」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/facta.html

文藝春秋「深層レポート」に見える大西康之氏の理解不足
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_8.html

文藝春秋「産業革新機構がJDIを壊滅させた」 大西康之氏への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_10.html

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