2017年9月23日土曜日

事実誤認のマスコミ批判が残念 池田清彦氏「正直者ばかりバカを見る」

経済記事でも経済メディアでもないが、今回は角川新書の「正直者ばかりバカを見る」という本を取り上げたい。筆者の池田清彦氏は賢くて立派な人だとは思う。ただ「日本のマスコミが政権を追及しない」という誤った認識に基づいた批判は残念だった。この件でKADOKAWAに問い合わせを送ったところ、約半月後に回答が届いた。本の当該部分と併せて、その内容を紹介したい。

【「正直者ばかりバカを見る」の一部】

豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です
日本のマスコミが政権を追及しないのは、マスコミの中枢にいる人も落ちこぼれたマジョリティではなく、政権とグルになっている成功したマイノリティだからである。アメリカでは、大手新聞の1つNYタイムズが、トランプは史上最低の大統領候補だと切り捨てる社説を掲載したところを見ると、マスコミの矜持はまた健在のようである。日本のマスコミの多くは腐っているので、日本のトランプ・安倍晋三の批判はしないようである


【KADOKAWAへの問い合わせ】

担当者様

池田清彦氏が書かれた「正直者ばかりバカを見る」という新書を購入して拝読させていただきました。ほとんどは納得できる内容だったのですが、事実誤認と思われる記述が37ページにありました。

日本のマスコミが政権を追及しない」「日本のマスコミの多くは腐っているので、日本のトランプ・安倍晋三の批判はしないようである」と池田氏は述べています。しかし、加計学園の問題だけを取っても「日本のマスコミが政権を追及しない」と考えるのは無理があります。ご承知の通り、テレビ、新聞、雑誌などで「追及」は山のようになされています。「安倍晋三の批判はしないようである」と池田氏が感じたのも不思議です。例えば朝日新聞や毎日新聞の社説を見るだけでも、数多くの「安倍晋三批判」を見つけられます。「日本のマスコミの多くは腐っている」かもしれませんが、政権批判は珍しくありません。

37ページの説明に関しては、事実誤認と考えてよろしいでしょうか。誤りではないとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。


【KADOKAWAからの回答】

KADOKAWA カスタマーサポートです。
この度は角川新書『正直者ばかりバカを見る』をお買上げいただき、誠にありがとうございます。

また、返信までにお時間をいただきましたことを深くお詫び申し上げます。

ご指摘の個所につきましては、形としての「追及」や「批判」ではなく、マスコミとして求められる「追及」や「批判」に足りえているかどうか、という著者自身の見解や主張が含まれている行であると認識しています。

しかしながら、鹿毛様からお寄せいただいたご指摘は、貴重なご意見として真摯に受け止め、表記及び表現等の参考とさせていただきたく存じます。

読者の皆様にお楽しみいただける書籍作りに努めてまいりますので、これからも弊社製品をご愛顧くださいますよう心よりお願い申し上げます。

◇   ◇   ◇

回答の内容から判断すると、筆者の池田氏に「こういう問い合わせが来てますが…」と伝えてはいないのだろう。なのに、なぜ回答に半月もかかったのかとは思うが、無視で済ませなかったことは評価したい。回答は当然にかなり苦しい内容となっている。
豪雨被害を受けた大行司駅(福岡県東峰村)
         ※写真と本文は無関係です

池田氏に限らず、マスコミ批判というのは自分の思い込みに基づく不正確なものが多い。そう言えば、ジャーナリストの櫻井よしこ氏も週刊ダイヤモンド9月2日号で加計学園の問題について「『朝日』『毎日』『東京』などは、氏を徹底的に無視した」と書いていた。

ここで言う「」とは前愛媛県知事の加戸守行氏を指す。しかし、調べてみると少なくとも毎日新聞は加戸守行氏の主張をしっかりと伝えていた。この点を週刊ダイヤモンドや櫻井氏のホームページを通じて問い合わせたが、何の回答もない。

マスコミ批判は大いになされるべきだ。その場合、事実確認はきちんとすべきだ。事実誤認があったのに無視で済ませるような人間にマスコミ批判の資格はない。


※格付けは見送るが、「正直者ばかりバカを見る」という本は全体で見れば読むに値する内容だった。池田清彦氏への高い評価も崩していない。


※櫻井よしこ氏への問い合わせについては以下の投稿を参照してほしい。

毎日は加戸氏を「徹底的に無視」? 櫻井よしこ氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_29.html

0 件のコメント:

コメントを投稿