2017年9月16日土曜日

問題多過ぎの日経 山本修平記者「銅、高値修正は限定的」

16日の日本経済新聞朝刊マーケット総合2面に載った「ポジション~銅、高値修正は限定的 投機筋の売りで上げ一服 実需の買いが下支え」 という記事の問題点をさらに指摘していく。まず見出しに問題ありだ。「投機筋の売りで上げ一服」となっているが、「ピークから7%下がった」過程で「投機筋の売り」が出たとの記述は記事中には見当たらない。いわゆるカラ見出しだ。
九州北部豪雨後の福岡県東峰村 ※写真と本文は無関係です

記事の前半部分を見てみよう。

【日経の記事】

9月上旬に3年ぶり高値をつけた銅の値上がりが一服している。ロンドン金属取引所(LME)では現在1トン6500ドル前後と、ピークから7%下がった。もともと大口ファンドなど投機の買いが膨らんでいただけに警戒感が強かった。ただ需要は堅調で、下値は限定される公算が大きい。


米商品先物取引委員会(CFTC)によると、大口ファンドの買い越し幅は直近5日で12万枚強と歴史的な高水準だ。7月に米系投資銀行が「銅は7000ドル台半ばになる」と推奨したこともあり、相場は今月上旬に6970ドルまで上昇した。

英調査会社、ウッドマッケンジーのリチャード・ウィルソン金属部門会長は「銅は買われすぎの側面が強い」と指摘する。実際、相場は前週末から高値修正されている。

問題はどこまで下げるかだ。大口ファンドの買いの規模を勘案すれば、買い持ち高の解消売りも大きく「第4四半期以降下がるだろう」(イタリアの投資助言会社、ティーコモディティー)。

一方、最大消費国の中国経済は堅調を維持。主産地チリの通貨ペソも対ドルで上昇し、銅の生産コストも上がった。銅の上昇は投機買いだけが要因でない可能性はある。


◎「どこまで下げるか」はどうなった?

やはり、「値上がりが一服している」ことと「投機筋の売り」を結び付ける記述はない。
豪雨被害を受けた「地鶏ラーメンとりまる食堂」
   (福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

また、「問題はどこまで下げるかだ」と問題提起しておきながら、「どこまで下げるか」を論じないまま別の話に移っているのも感心しない。「第4四半期以降下がるだろう」といった話につなぐならば、「問題はいつまで下げが続くかだ」などとすべきだ。

ついでに言うと「第4四半期以降下がるだろう」というコメントは記事の流れと合っていない。「現状は高値修正局面」というのが記事の前提だ。「第4四半期(10~12月?)以降下がるだろう」と言うと、まだ下げに転じていないように感じる。

次は記事の終盤を見ていこう。

【日経の記事】

T&Dアセットマネジメントの神谷尚志チーフ・エコノミストは「銅は6000ドルはまず割らないだろう」とみる。輸入動向を見る限り中国景気の腰折れは考えにくい

商品市場では相場上昇時に、投機の影響の議論がたびたび起きる。ある米系ヘッジファンドのエコノミストは「(銅に限らず)最近は非鉄全般が上昇しており、その場合は実需に基づく」との見解を示す。



◎色々と気になる点が…

T&Dアセットマネジメントの神谷尚志チーフ・エコノミスト」は「銅は6000ドルはまず割らないだろう」と見ているようだが、その根拠は不明だ。「中国景気」と絡めた判断かもしれないが、何とも言えない。「6000ドルはまず割らない」という相場見通しを語らせるならば、その理由は入れてほしい。
豪雨被害を受けたJR日田彦山線(福岡県東峰村)
    ※写真と本文は無関係です

輸入動向を見る限り中国景気の腰折れは考えにくい」という説明も納得できない。「輸入動向」は基本的に過去の実績だろう。そこから将来は見通しにくい。なのになぜ「中国景気の腰折れは考えにくい」と結論付けられるのか。「輸入動向」から「中国景気」の行方がかなり正確に判断できると言うのならば、根拠を示してほしかった。

ある米系ヘッジファンドのエコノミスト」の「最近は非鉄全般が上昇しており、その場合は実需に基づく」というコメントも引っかかる。投機資金が流れ込んできてコモディティー全体が上昇基調となる局面は十分にあり得る。

それに銅に関しては「大口ファンドの買い越し幅は直近5日で12万枚強と歴史的な高水準だ」と記事でも書いている。ならば投機筋の買いが相場押し上げに関係していると考えるのが自然だ。なのになぜ「投機の影響」はほとんどないような書き方をしてしまうのか。

結局、この記事は問題が多すぎる。山本修平記者には猛省してほしいし、商品部デスクの責任も重い。


※今回取り上げた記事「ポジション~銅、高値修正は限定的 投機筋の売りで上げ一服 実需の買いが下支え
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170916&ng=DGKKASDJ15H3A_V10C17A9EN2000

※記事の評価はE(大いに問題あり)。山本修平記者への評価も暫定でEとする。今回の記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 山本修平記者「銅、高値修正は限定的」の支離滅裂
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_16.html

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