2017年9月17日日曜日

九州知らずが目立つ週刊ダイヤモンド特集「大学序列」

週刊ダイヤモンド9月16日号の特集「1982~2017 35年の偏差値と就職実績で迫る大学序列」で「地方有力4大学『東西南北』の深層 西日本編~九州は『西福APU』時代の幕開け」という記事が引っかかった。九州の事情に詳しくない記者が書いているのかなと思わせる記述が目立ったからだ。
福岡大学(福岡市城南区)

具体的に見ていこう。

【ダイヤモンドの記事】

九州地区のトップ私立大学といえば西南学院大学だけというのが、かつての常識だ。しかし、時代は変わった。福岡大学が追い上げて西南の1強体制は終焉している。

20年前までは西南と福大ではかなり難易度に差があった。でも福大には医学部があり、文系でも西南と同系学科がある。もともと商、経済など実学系学部が難関資格実績や公務員などへの就職に定評があったため、差が縮まった」と福岡市内の大手塾職員は解説する。

トップ私大として「西福」のくくりが生まれ、今後は「2大学のポジションが逆転する可能性もある」(塾職員)という。


◎昔から西南・福大が「2強」では?

文系学部に関して「九州地区のトップ私立大学西南学院大学」というのは20年以上前から変わっていないとは思う。しかし、かつては「西南の1強体制」で、近年になって「トップ私大として『西福』のくくりが生まれ」たとの認識は違う気がする。少なくとも1980年代には、西南と福大はくくられていた。九州の私大としては当時から「2強」だったはずだ。
中村学園大学(福岡市城南区)

記事に付けた地図には「福大が近年上昇で大学のくくりが誕生 『西福』『西福APU』のくくり」と説明が入っている。「福大が近
年上昇で『西福』のくくりが誕生」とは、とても思えない。

付け加えると「20年前までは西南と福大ではかなり難易度に差があった」が「差が縮まった」というコメントは、記事に付けた「九州主要私大の偏差値推移」と整合しない。両校の偏差値の差を1997年と2017年で見ると、法学部は6→5、経済学部は4→3。つまり20年で1しか縮まっていない。これだと誤差の範囲内だ。偏差値の推移も「昔から2強」を裏付けているのではないか。

さらに言えば、以下の記述も気になった。

【ダイヤモンドの記事】

両校は同じ福岡市にキャンパスを構える。西南はキリスト教系でオシャレな校風だ。福大は九州随一のマンモス総合大学。九州で唯一、文系学部から医学や薬学など理系学部まで、幅広くそろう。また、付属高校を持ち、医学部を目指せる高校として人気が高い。

◎久留米大学と九州産業大学は?

福大に関する「九州で唯一、文系学部から医学や薬学など理系学部まで、幅広くそろう」という説明は間違いではないとしても、誤解を招く。久留米大学があるからだ。文、法、商、経済、人間健康、医の6学部をそろえている。

久留米大学に「薬学」はないが、「文系学部から医学など理系学部まで、幅広く」そろえてはいる。

九州産業大学も文系学部から理系学部まで学部の数はかなりある。記事の書き方だと「九州で文系学部から理系学部まで幅広く有しているのは福大だけ」との印象を受けてしまう。

最後に「西福APU」にも触れておきたい。

 
【ダイヤモンドの記事】

西南、福大それぞれの特色も大学選びに影響しよう。もっとも、受験生を送り込む高校関係者たちの間では、くくりが「西福」からさらに進化している。

大分県にグローバル人材を育成する立命館アジア太平洋大学(APU)が2000年に開校し、「西福APU」でくくられるようになったのだ。APUは国公立大学との併願が増えている。

一方、福岡工業大学が志願者、難易度とも伸びていることを受けて、いっそ「西福APU工」とくくりを4大学まで広げようという教育関係者の声もある。


◎本当に「西福APU」と呼ばれてる?

立命館アジア太平洋大学(APU)が2000年に開校し、『西福APU』でくくられるようになった」と言うのだから、この「くくり」は10年以上の歴史があるのだろう。だが、使っているのはごく一部ではないか。
九州大学伊都キャンパス(福岡市西区)

西福APU」でネット検索してみても、ダイヤモンドの記事絡み以外では使用例が非常に限られている。それに略語として長すぎる感じもある。「せいふくえーぴーゆー」で3校しか表せない。MARCHならば「まーち」で5校だ。使い勝手は良くない。

いっそ『西福APU工』とくくりを4大学まで広げようという教育関係者の声もある」という記述を見ると、取材した特定の「教育関係者」に吹き込まれた話を、あまり検証せずにそのまま書いたのではと疑いたくなる。

ついでに言えば、「立命館アジア太平洋大学(APU)が2000年に開校し、『西福APU』でくくられるようになった」という記述は、「九州は『西福APU』時代の幕開け」という見出しと整合しない。見出しだと「『西福APU』時代」は始まったばかりか、まだ始まっていないと取れる。しかし本文の説明では、APUの開校後すぐに「『西福APU』時代」が始まったと解釈できる。


※今回取り上げた記事「地方有力4大学『東西南北』の深層 西日本編~九州は『西福APU』時代の幕開け
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/21212

※記事の評価はD(問題あり)。特集全体の評価もDとする。担当者らの評価は以下の通り。

臼井真粧美副編集長(暫定C→暫定D)
小島健志記者(C→D)
堀内亮記者(暫定D→D)
大根田康介記者(Dを維持)
西田浩史記者(Dを維持)

※今回の特集に関しては以下の投稿も参照してほしい。

偏差値トップは東大理3? 週刊ダイヤモンド「大学序列」の矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_68.html

昔の津田塾は「女の東大」? 週刊ダイヤモンド特集「大学序列」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_11.html

1 件のコメント:

  1. 理系学部が創設されれは西南は名実共に日本私立大学の雄になること明らかである。

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