2018年3月6日火曜日

日経 川上穣記者「一目均衡~AI投資は万能か」への注文

日本経済新聞の川上穣記者が6日の朝刊投資情報面に書いた「一目均衡~AI投資は万能か」という記事は、悪い出来ではなかった。「AI投資は万能か」との問題提起に対しては「森羅万象を映す市場の前ではまだか細い存在と言える」との結論を明確に示しているのも評価できる。
横浜赤レンガ倉庫 ※写真と本文は無関係です

ただ、気になる部分もあった。以下のくだりだ。

【日経の記事】

さらに「AIは市場の潮目の変化を読むのは不得手だ」との見方がある。直近のデータの延長線上で次の展開を予想するため、長期的な相場トレンドの変化への対応が遅れがちになる。株式市場には誰もが予測し得ない「ブラックスワン」が潜むが、今のAIでは「市場で起きる想定外を想定内にすることは難しい」(ドイツ証券の村木正雄・グローバル金融ストラテジスト)。

株式市場の歴史は危機の繰り返しだ。最近の20年をみても1998年にはノーベル賞学者が設立した米ヘッジファンドLTCMの破綻に見舞われ、08年にはリーマン・ショックが起きた。過去に起きた危機の分析や検証を待たずに、次の危機は忍び足でやってくる


◎矛盾してない?

記事では「アセットマネジメントOne」が採用している「ディープAI」について「株価の上昇・下落のモメンタム(勢い)を気にせず、流動性の低い銘柄を好む」と書いている。だとすると、少なくとも「ディープAI」は「直近のデータの延長線上で次の展開を予想」しているとは考えにくい。

記事では「ディープAI」の投資パターンについて「なぜそうなったのかは分からない」としている。だとしたら既にAIが「長期的な相場トレンドの変化への対応」を進めていてもおかしくない。

ブラックスワン」についても、これが記事に出てくる「米ヘッジファンドLTCMの破綻」や「リーマン・ショック」といったレベルの話ならば、当時のデータを読み込むことで対応できるのではないか。

付け加えると「過去に起きた危機の分析や検証を待たずに、次の危機は忍び足でやってくる」との説明はおかしい。「米ヘッジファンドLTCMの破綻」や「リーマン・ショック」については様々な分析がなされてきた。日経もその一翼を担っている。ここは「過去に起きた危機の分析や検証をどれだけやっても、次の危機は忍び足でやってくる」とでも書いた方がよいだろう。

最後に「AI投資は万能か」との問いについて一言。この問いが「AI投資に頼れば確実に市場平均を上回るパフォーマンスを確保できるか」という意味ならば、最初から答えは出ている。市場参加者の全てがAIに投資判断を委ねる状況を考えてみればいい。その時、AI全体のパフォーマンスは市場平均と同じになる。ほぼ半分のAIのパフォーマンスは必然的に市場平均を下回る。「AIに頼れば大丈夫」とならないのは自明だ。


※今回取り上げた記事「一目均衡~AI投資は万能か
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180306&ng=DGKKZO27726770V00C18A3DTA000


※記事の評価はC(平均的)。川上穣記者への評価はD(問題あり)からCへ引き上げる。川上記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

読む価値を感じない日経 川上穣記者の「スクランブル」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_8.html

積み立て型NISAで業界側に立つ日経 川上穣記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_26.html

相変わらず金融業界に優しすぎる日経 川上穣記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_13.html

セゾン投信の解約しにくさを「顧客本位」と日経は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_18.html

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