東本川の桜と耳納連山(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
日経BP社への問い合わせと回答は以下の通り。
【日経BP社への問い合わせ】
日経ビジネス編集部 寺岡 篤志様
3月26日号の「時事深層~AI活用最前線(最終回)日本マイクロソフト『義理で出ている会議』が丸分かり」という記事についてお尋ねします。
見出しで「『義理で出ている会議』が丸分かり」となっていて、最初の段落にも「AIが社員のスケジュールやメールの履歴から『義理で出ている会議』を判別」と書いてあります。しかし、以下の記述では話が変わってきます。
「例えば、Aさん主催の会議中にメールを読んだり、送ったりしている時間が長いと、AIからこんな指摘を受ける。『義理で会議に招かれていませんか』。Aさんの会議に参加する必要があるか検討すべし、というわけだ」
これだと、AIの指摘で分かるのは「義理で出ている会議」ではなく「義理で招かれている会議」です。指摘を受ける人を仮にBさんとすると、「義理で出ている会議」は「Bさんにとっては必要ないが仕方なく出ている会議」となります。一方、「義理で招かれている会議」だと「Bさんにとって必要ないかどうか」は関係ありません。「Aさんから見てBさんに出てもらう必要はないが仕方なく招いている会議」となります。
そもそも、Bさんが会議中にどのぐらいメールをしているかは「義理で招かれている」かどうかにあまり関係がありません。重要なのはAさん側の事情です。
こうした点を考慮すると、AIの指摘は「義理で会議に出ていませんか」でないと辻褄が合いません。この部分の記述は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
もう1つ質問があります。気になったのは以下のくだりです。
「今、日本MSは人事評価とオフィス365のデータを組み合わせたAIの開発を進めている。『できる社員』の仕事のやり方を分析して、そのノウハウを社内で共有する試みだ。イノベーションを起こす社員は他の部署とのコミュニケーション量が多い。こんな因果関係も分かってきたという」
「イノベーションを起こす社員は他の部署とのコミュニケーション量が多い」というだけならば、「因果関係」ではなく「相関関係」の類ではありませんか。例えば「大金持ちは高級すし店に通う回数が多い」という関係が成り立つからと言って「高級すし店に通うと大金持ちになる」という因果関係があるとは限りません。
記事の場合、「因果関係」があるのならば、「イノベーションを起こすと他の部署とのコミュニケーション量が増える」あるいは「他の部署とのコミュニケーション量を増やすとイノベーションが起きる」という関係が必要です。しかし、そうは書いていません。
イノベーションとコミュニケーション量の「因果関係」は確認できていないのではありませんか。仮に確認できているとすれば、説明の仕方が違うと思えます。
問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。
【日経BP社からの回答】
日経ビジネスをご愛読頂き、ありがとうございます。ご質問に回答させて頂きます。
1)「義理で出ている会議」について。
今回の記事で、「AIが『義理で会議に招かれていませんか』と指摘する」と表現したのは、AIが社員に注意喚起する表現をそのまま引用したためです。実際の職場でも、義理で招かれた会議と分かっていても、その会議に出ることが多いことを踏まえ、AIが「義理で出ている会議を判別」と表現させて頂きました。
2)因果関係の表現について。
日本マイクロソフトを取材した際に、「イノベーションを起こす社員」と「他の部署との
コミュニケーション量が多い社員」には関係性があるという取材結果に基づき、表現しました。日本マイクロソフトとしては、因果関係を探る目的で研究を進めていますが、ご指摘の通り、現時点で原因と結果に当たるほどの関係性があるとは言い切れません。誤解を招く表現であったと反省し、今後の記事の参考にさせて頂きたく存じます。
以上です。引き続き、日経ビジネスをご愛読頂きますよう、お願い申し上げます。
◇ ◇ ◇
回答から推測すると、AIは「義理で出ている会議」を判別してくれるが、指摘する時には「義理で会議に招かれていませんか」と伝えてしまうのだろう。だとしたら、このAIは使い物にならない。AIの国語力に問題ありだ。自分が「義理で会議に招かれていませんか」との指摘を受ける立場だとしたら「義理で招かれているかどうかは私には分かりません」と返したくなる。
佐世保市総合医療センター(長崎県佐世保市) ※写真と本文は無関係です |
ついでに、他に気になった点を指摘しておきたい。
【日経ビジネスの記事】
AIを活用した業務効率化を主導する輪島文・シニアプロダクトマネージャーは「自身の作業時間を確保するために会議の出席を断ることは、日本の企業風土ではハードルが高い。だが目に見える根拠を示したリポートがあれば、上司にも改善を提案しやすくなる」と強調する。
◎「改善を提案しやすくなる」?
会議中にメールばかりしていると、それをAIが把握して「会議には義理で出ていませんか」と指摘してくれるとしよう。その場合「会議の出席を断ること」を「提案しやすくなる」だろうか。
自分だったら「そういう指摘をAIから受けるのは、お前が会議にきちんと参加せずメールばかりしているからだろ。ちゃんと会議に加われ」と注意されそうで、出席取り止めを「提案」する気にはなれない。「AIを活用した業務効率化」と言えば聞こえはいいが、日本マイクロソフトで本当に有効に機能しているのか疑わしい気はする。
※今回取り上げた記事「時事深層~AI活用最前線(最終回)日本マイクロソフト『義理で出ている会議』が丸分かり」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/031900967/?ST=pc
※記事の評価はD(問題あり)。寺岡篤志記者への評価はCからD(問題あり)に引き下げる。
偶々「フェイスブックと日本交通の不都合な真実」という記事を書いた記者の名前を検索して、本ブログにたどり着きました。
返信削除とてもわかりやすく、もっともだなと思う指摘でした。
他方で、本ブログを読まなければ「時事深層~AI活用最前線(最終回)日本マイクロソフト『義理で出ている会議』が丸分かり」のような記事を流し読みをして、見出しの扇情的な表現だけが記憶に残っていたかもしれないと、反省した次第です。
勉強になりました。
今コメントを書きながら思ったのですが、紙媒体と違い、ネット媒体の記事は一度読んだ文字はスクロールをして通り過ぎてしまい、読み返す頻度が低いのかもしれません。
私は40代前半ですが、取得する情報全体の半分くらいをデジタルメディアに頼っているように思いました。
自分の子どものようなデジタルネイティブな世代では、さらに比率が高まるように思い、さらに新聞や雑誌のような紙媒体を読む必要性を感じました。
長々と書いてしまいましたが、とても良いブログを発見できました。