2018年3月19日月曜日

親子上場ってそんなに問題? 日経「株式公開 緩むルール」

19日の日本経済新聞朝刊1面のトップを飾った「株式公開 緩むルール 世界の取引所 誘致競う 親子上場に例外」という記事は、筆者らの問題意識が明確に伝わってくる内容で、完成度も低くない。 ただ、親子上場を否定的に捉える理由がよく分からない。
竹崎城址展望台公園(佐賀県太良町)
       ※写真と本文は無関係です

記事の一部を見てみよう。

【日経の記事】

世界で企業の新規株式公開(IPO、総合・経済面きょうのことば)のルールが骨抜きになるリスクが高まっている。企業が自身に有利な条件をのむ市場を選別し、上場の条件交渉で主導権を握るようになったからだ。巨大IT(情報技術)企業が上場前の有望企業を次々と買収する中、取引所も企業誘致のためルール緩和に突き進む。IPOの規律の緩みは上場企業のガバナンス(統治)をゆがませ、市場そのものの魅力を落としかねない

 「大義のない親子上場を認めていいのか」。東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループの幹部は自問する。ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が携帯子会社ソフトバンクの上場方針を表明して約1カ月。東証とロンドン証券取引所の同時上場を狙うが、東証内部は調達2兆円規模の大型案件の歓迎ムードからは遠い。

親会社と子会社が共に上場する親子上場は、株式持ち合いと並び欧米ではほぼみられない日本独特の資本政策だ。親会社が自らの利益を優先し、子会社の一般株主の利益を損なう恐れがある。海外投資家からの批判も強く、2016年度末は270社と10年前のピークから3割減っていた。

東証はジレンマに陥っている。07年、ソフトバンクのような収益の大半を稼ぐ中核子会社の上場に否定的見解を示した。認めれば、従来方針の否定につながりかねない。

半面、IPOを逃す恐怖もちらつく。ロンドン単独上場を選ばれてしまうと「自国の大企業に見切りをつけられたとして、世界からの評価が下がってしまう」(東証幹部)。東証の苦しい胸の内を見透かすように、SBGは条件緩和を迫る。

東証には上場企業の子会社が1部に上場する場合、親会社は持ち株比率を65%未満に下げるルールがある。経営の重要事項を単独で決められる「3分の2以上」に達しないようにするためだ。


◎承知の上での投資ならば…

親会社と子会社が共に上場する親子上場は、株式持ち合いと並び欧米ではほぼみられない日本独特の資本政策だ」としても、それだけでは親子上場を否定する理由にはならない。記事で言えば「親会社が自らの利益を優先し、子会社の一般株主の利益を損なう恐れがある」からダメとなるのだろう。

だが、例えば記事で取り上げている「携帯子会社ソフトバンク」が上場する場合、投資家はこの会社が「ソフトバンクグループ(SBG)」の子会社だと知っているはずだ。「親会社が自らの利益を優先し、子会社の一般株主の利益を損なう恐れがある」ことを承知の上で、それでも投資したいのならば、何の問題もない気がする。

親子上場する子会社の株式を保有することに大きなマイナス面があるのならば、それは市場価格に反映されるはずだ。なので「子会社の一般株主の利益を損なう恐れがある」分は割り引いた価格が市場で付く。

子会社だという事実を隠して上場するならともかく、上場後の出資比率を明確にして上場するのならば、特に問題は感じない。「上場企業のガバナンス(統治)をゆがませ、市場そのものの魅力を落としかねない」と心配する必要があるのか。

大義のない親子上場を認めていいのか」とのコメントも引っかかった。上場で「2兆円規模」の資金調達を目指しているのならば、それは「大義」に当たるのではないか。「資金調達を目的に上場したい」という場合は「大義なき上場」になってしまうのか。

筆者らには、その辺りも考えて、今後の記事につなげてほしい。

※今回取り上げた記事「株式公開 緩むルール 世界の取引所 誘致競う 親子上場に例外
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180319&ng=DGKKZO28287880Y8A310C1MM8000


※記事の評価はC(平均的)。須永太一朗記者の評価は暫定でCとする。宮本岳則記者への評価はD(問題あり)からCへ引き上げる。宮本記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 宮本岳則記者「野村株、強気の勝算」の看板に偽り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post.html

日経 宮本岳則記者「スクランブル」での不可解な解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_3.html

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