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記事の一部を見ていこう。
【日経の記事】
――5年前は国債買い入れ額の「量」だった金融政策の軸を2016年に「金利」へ変えました。
「長期国債を大量購入してマネーを供給すべきだとした副総裁就任前の主張は、その後の金融政策の理論と実証研究の進歩から判断すると単純すぎた。就任後に実証研究などが進化し、生まれたのが(16年に日銀が採用した考え方である)短期と長期の金利を固定する現行のイールドカーブ・コントロールだ。需給状況を踏まえて金利操作する現行政策は2%達成に最善の仕組みだ」
――就任時、2年後の物価上昇率が2%に達しなかったら「辞任する」と発言しました。
「最高の責任の取り方は辞任との考えは今も変わらない。ただそれは金融緩和策が不十分で説明責任も果たせない時の最終判断だ。今の金融政策は副作用の少ない最善策で、2%未達の理由も説明してきた。『辞任』の言葉が一人歩きして誤解されたことを思うと、発言しない方がよかった」
「2%未達の最大の理由は14年4月の消費増税だ。多くのリフレ派が反対したこの増税がなければ14年夏ごろに2%に到達したはず。19年10月の消費増税は、消費を冷やして物価を下押ししないと確信できない限り再延期が必要。増税は日程ありきではなく、経済情勢に応じて決断すべきだ」
◎「消費増税」についてもう少しツッコんでも…
インタビュー記事に付けた「記者の目」という関連記事で「マネー供給の量に着目した積極策を訴えて5年前に日銀入りした岩田規久男氏が、自らの過去の主張を『単純すぎた』と評した意味は重い。大規模な量的緩和に対するこだわりを明確に修正したことになるからだ」と中村記者は述べている。それはその通りだろう。
横浜赤レンガ倉庫(横浜市)※写真と本文は無関係です |
「辞任する」発言に関する弁明については、過去の会見での内容を踏襲していて目新しさはないが、岩田氏を語る上でこの問題は欠かせないので、記事に入れる必要はある。
若干、物足りなかったのが「消費増税」の部分だ。岩田氏が副総裁に就任した段階で「14年4月の消費増税」は決まっていた。「2%未達の最大の理由は14年4月の消費増税」との言い訳は岩田氏も以前から使っているので、ここはもう少し詰めてほしかった。
例えば、こんな具合だ。
就任時点で消費増税の日程は決まっていました。それでも2%の物価目標を2年以内に達成できると考えたのではないのですか。「達成できなかった時に、『自分達のせいではない。他の要因によるものだ』と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます」と岩田さんは就任時に述べてましたよね。「予想もしない外的要因が生じたから、目標を達成できませんでした」というならば、また分かります。「予定通りに増税が実施されたから目標を達成できなかった」では、まさに「市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます」。岩田さんの弁明は、就任時に述べていた好ましくない「言い訳」そのものではありませんか。
このぐらいは聞いてもいい。実際に中村記者は聞いたのかもしれない。紙面の関係で泣く泣く割愛した可能性も十分にある。その場合は、他の記事を削ってでもこのインタビュー記事を大きくするのが正解だったと思う(この辺りは主にデスクの判断になるが…)。
※今回取り上げた記事「緩和推進『単純すぎた』 岩田・前日銀副総裁 物価2%目標実現できず」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180328&ng=DGKKZO28642670X20C18A3EE8000
※記事の評価はB(優れている)。中村結記者への評価はBで確定とする。中村記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
良い意味で日経らしくない中村結記者の「日銀ウオッチ」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_25.html
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