2016年11月25日金曜日

出店加速には見えない日経「TASAKI、欧米出店を加速」

25日の日本経済新聞朝刊企業・消費面に載った「TASAKI、欧米出店を加速 NYに初の直営店、来年中に」という記事は、最後まで読んでも「欧米出店を加速」しているようには見えない。これを企業・消費面の2番手に持ってくるしかないところに、日経の企業関連ニュースの厳しさがある。
成田山表参道(千葉県成田市) ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

宝飾品販売のTASAKIは欧米の大都市に相次いで直営店を出店する今月に入り、英ロンドンの百貨店内に出店したほか、2017年中には米ニューヨークに路面店を設ける。1店当たりの投資額は数千万円を見込む。従来、海外出店はほぼすべて韓国や中国を中心とするアジアだったが、世界的なブランド力の向上を目指し、欧米の主要都市にも広げる。

同社は海外では直営店を中心に、約60店舗を展開する。直営店のほぼすべてがアジア地域への出店だった。世界的な知名度を高めるためには、欧米の主要都市への出店が不可欠と判断した

直営店を出店しているパリに続き、ロンドンにも直営店を構え、ブランド力を高める。来年中には米国にも進出し、ニューヨークで初の直営店を出す計画だ。出店場所などは調整している。

2016年10月期の海外売上高は連結売上高の1割程度に当たる約27億円だったもよう。積極出店を通じ中長期的に100億円以上に伸ばす。

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例えば「昨年は5店、今年は10店を出し、来年は20店」であれば確かに「出店を加速」だ。TASAKIの場合はどうか。もともとパリには直営店があり、ロンドンにも出店したらしい。そして来年はニューヨークにも出る。つまり現状は2店で、出店計画があるのは1店のみだ。これで「欧米出店を加速」と言われても困る。「欧米の大都市に相次いで直営店を出店する」ようにも見えない。「出店する」と書くためには、これから「相次いで直営店を出店する」必要がある。

ちなみに、パリの出店は今年6月のようだ。欧米出店が仮に「今年2店、来年1店」であれば、来年の「欧米出店」は「加速」というより「減速」だろう。

この記事には他にも問題がある。「従来、海外出店はほぼすべて韓国や中国を中心とするアジアだった」と説明しているが怪しい。TASAKIのホームページを見ると、欧米に10店ある。直営店はパリとロンドンの1店ずつかもしれないが、それ以外も含めて10店に達するのであれば「海外出店はほぼすべてアジア」とは考えにくい。

さらに言えば「欧米の大都市に相次いで直営店を出店する」と書く場合、なぜ「非直営店」ではなく「直営店」を出す必要があるのかも触れるべきだ。記事では、直営店と非直営店の違いにも触れていない。

仮に「非直営店=フランチャイズ店」としよう。その場合「世界的な知名度を高めるためには、欧米の主要都市への出店が不可欠と判断した」としても、直営店かどうかは重要ではないだろう。「直営店でなければブランド力は高められない」と記者が判断しているのならば、その理由は説明すべきだ。

この記事は結局、「TASAKIが来年、ニューヨークに初の直営店を出す」というだけの話だと思える。なのに付加価値を強引に付けようとしたため、無理のある中身になってしまった。こういう記事を世に送り出していては、読者の信頼は得にくい。


※記事の評価はD(問題あり)。

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