記事の全文は以下の通り。
大分県日田市の三隈川(筑後川) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
1月31日の日本サッカー協会会長選挙で次期会長に内定した田嶋幸三副会長は、当選後の記者会見で「育成日本の復活」を優先課題の一つに挙げた。裏返せば、同副会長は、この何年かの育成の現状に強い危機感を持っていたことになる。
持って当然ではある。U―16(16歳以下)、U―19(19歳以下)の大会でアジアで負け続けた雪崩は、リオデジャネイロ五輪予選を兼ねた先のU―23(23歳以下)選手権の優勝で何とか食い止めた。しかし、全勝優勝の中身はボタンを一つ掛け違えば結果は逆だったと思える苦闘の連続。
接戦の理由を他国のレベルも上がったからやむを得ないとか、十代で負けても五輪世代で取り返せるから大丈夫と考えるのはあまりにものんきに過ぎよう。現実はもっと厳しい。そう認めた上での新会長になる人の、未来に向けた「宣誓」だったと理解している。
もっとも、2年に一度の会長選の度に「育成」が争点になるのだとしたら、それはそれで由々しき事態だろう。
過ちはただちに改めるべきだし、指導の中身を常にアップデートするのも当然。しかし、5年、10年の長期的なスパンでとらえるべき育成が、2年ごとの会長選の結果次第でぶれるようでは、選手を実際に預かり育てる現場のコーチたちが困るのは目に見えている。そんなことが続けば、誰も何も信じなくなってしまうだろう。
日本の選手育成は、学校スポーツと民間のクラブの混然一体の中からハイブリッドな選手が生み出されるところに特長がある。代表チームはそのエキスを抽出するようにしてつくられてきた。育てる線路の複線化と相互乗り入れは日本の強みなのだから、育成の方針も小中高大学、Jクラブ、町のクラブ、あらゆるセクターの共感を呼ぶものでなければならない。
アジアや世界での敗北の責を現場に押しつけ、検証は甘く、その場しのぎの接ぎ木のような強化策を並べる組織であっては先行きは暗い。
田嶋副会長は「ピラミッド型の頂点にあるのではなく、都道府県協会を下から支える日本協会にしたい」という。育成もまた日本サッカーの土台である。多種多様な英知を集約し、日本サッカーを継続的に強くする、骨太なプランを策定し実行してもらいたい。
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育成に関して「現実はもっと厳しい」と武智編集委員は言うが、なぜ厳しい状況に追い込まれたのかは教えてくれない。強いて原因を探せば「育成が、2年ごとの会長選の結果次第でぶれる」ことだろう。しかし、実際にブレてきたのか、どうブレたのかは明確ではない。
「なぜ育成がうまくいかないのか」「どうすれば改善できるのか」は武智編集委員にも分からないのだろう。それはそれでいい。しかし、長年サッカーを取材してきた自分にさえ分析が難しいのであれば「日本サッカーを継続的に強くする、骨太なプランを策定し実行してもらいたい」と求め、さらに「小中高大学、Jクラブ、町のクラブ、あらゆるセクターの共感を呼ぶものでなければならない」と条件を付けるのは、かなりの「ないものねだり」だ。「改善は難しくない。育成の現実が厳しい理由は明らかだ」と考えているのならば、記事で言及してほしかった。
ついでに他の気になった点を指摘しておきたい。
◎「苦闘の連続」だった?
「全勝優勝の中身はボタンを一つ掛け違えば結果は逆だったと思える苦闘の連続」と武智編集委員は書いている。これはやや大げさだ。1次リーグ第2戦で日本はタイに4-0と圧勝した。第3戦のサウジアラビア戦はスコアこそ2-1だが、首位通過を決めた状態でメンバーも大幅に入れ替え、2点先制してからの1失点なので、「苦闘」とは言い難い。他の試合は「苦闘」でいいと思うが…。
◎「ハイブリッドな選手」とは?
「学校スポーツと民間のクラブの混然一体の中からハイブリッドな選手が生み出される」という説明も気になった。まず、「学校スポーツと民間クラブの混然一体が生み出すハイブリッドな選手」と言われても、どんな選手かイメージが湧かない。ここは説明が必要だろう。「自分の持っているイメージは読者も共有しているはずだ」との前提を感じる。
※記事の評価はD(問題あり)。武智幸徳編集委員への評価はDを維持する。
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