2016年2月17日水曜日

日経 北沢千秋編集委員「一目均衡」での奇妙な解説(2)

16日の日経朝刊投資情報面に載った「一目均衡~パッシブ運用者の責任」という記事の問題点をさらに指摘していく。まずは以下のくだりから。ここは説明としてきちんと成り立っていないし、事実誤認の可能性もかなりある。

久留米百年公園(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

低迷相場が長引くと当然ながら株価指数との連動を目指すパッシブファンドのパフォーマンスは上がらない。だが、パッシブ運用者が成績悪化を指数のせいにして、漫然と下げ相場を眺めているとしたら怠慢だ。

機関投資家に対して、企業に持続的成長を促す働きかけを求めたスチュワードシップ・コードは、当初、アクティブ運用者が当事者と考えられていた。しかし今では「パッシブ運用者こそ責任を果たすべきだ」(大手運用会社社長)と見方は変わりつつある。保有株数を考えれば、企業への影響力はアクティブファンドより大きいからだ

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上記の説明では「なぜここにきて見方が変わりつつある」のか理解に苦しむ。筆者の北沢千秋編集委員は「保有株数を考えれば、企業への影響力はアクティブファンドより大きいからだ」と解説している。しかし、これは不可解だ。最近になって保有株数が逆転したわけでもないだろう(もしそうなら、その点に言及すべきだ)。スチュワードシップ・コードの議論が始まった頃からパッシブファンドの方が保有株数が多かったとすれば、なぜ最初から「パッシブ運用者こそ責任を果たすべきだ」とならなかったのだろう。

さらに言えば、「保有株数を考えれば、企業への影響力はアクティブファンドより大きい」かどうかも疑問が残る。これに関しては日経に問い合わせをしてみた。こちら側が何か重要な点を見落としているような気もするが…。内容は以下の通り。

【日経への問い合わせ】

「一目均衡~パッシブ運用者の責任」という記事についてお尋ねします。筆者の北沢千秋編集委員はスチュワードシップ・コードに触れた後で「今では『パッシブ運用者こそ責任を果たすべきだ』(大手運用会社社長)と見方は変わりつつある。保有株数を考えれば、企業への影響力はアクティブファンドより大きいからだ」と述べておられます。これを信じれば、日本国内ではアクティブファンドよりもパッシブファンドの方が多くの日本株を保有していることになります。

しかし、モーニングスターの調べによると、2015年11月時点での国内籍ファンドのパッシブ比率(純資産額全体に占めるパッシブファンドの比率)は29.7%にとどまっています。裏返せばアクティブ比率が70%に達しているのです。これで「保有株数を考えれば、企業への影響力はアクティブファンドより大きい」と言えるのでしょうか。国内ファンドの純資産の全てが日本株で構成されているわけではないので、日本株の保有数でも同じシェアになるとは言えませんが、パッシブファンドの方がアクティブファンドより保有株数が大きい可能性は極めて低いと思えます。

記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、どのデータから「保有株数でパッシブファンドがアクティブファンドを上回る」と結論付けたのか教えてください。1週間以内に回答がない場合、記事の説明は誤りと判断させていただきます。

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長くなってしまったので、この記事の残りの問題点は(3)で述べる。

※(3)へ続く。

追記)結局、回答はなかった。

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