2016年2月4日木曜日

ロイヤル社長を愚か者に見せる週刊ダイヤモンド須賀彩子記者

インタビュー記事を書くために取材している時に、取材相手が事実誤認とも思える発言をしたとしよう。記者としてはどう対応すべきだろうか。「相手がそう言ってるんだから」とそのまま記事にするのは論外だ。取材時にさらに質問したり、取材後に事実関係を確認したりすべきなのは言うまでもない。
大圓寺五重塔(福岡市中央区) ※写真と本文は無関係です

そんなことを思ったのは、週刊ダイヤモンド2月6日号の「短答直入~菊地唯夫(ロイヤルホールディングス社長) 単一業態での成長は難しい ポートフォリオ経営で対応」というインタビュー記事を読んだからだ。筆者は須賀彩子記者。これまで「素人くささが目立つ」と評してきた。最近の記事では改善の兆しも出ていたが、今回の記事を見る限り「素人くささ」は健在だ。

記事を読むと、取材に応じた菊地唯夫ロイヤルホールディングス社長が愚か者に見えてしまう。万が一愚か者だとしても、インタビュー記事に使わなければ済む話だ。使う以上は「きちんとした話ができる人」に見えるように記事を仕上げてほしい。

前置きが長くなったが、なぜ菊地社長が「愚か者」に見えるか具体的に検討してみる。

【ダイヤモンドの記事】

日本ではデフレが長く続き、消費が抑えられてきました。ところが団塊世代のサラリーマンが65歳を超えると、年金が安定して入ってくるし、使う金に制約がなくなる。そこにアベノミクスが重なり、株価が回復して金融資産も増えた。そのため、団塊世代が消費を増やし、この3年間は外食市場に追い風となってきました。

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菊地社長は「使う金に制約がなくなる」と実際に言っているのだろう。これを記事に使いたいと思うのならば、須賀記者には「『使う金に制約がなくなる』ってどういう意味ですか。全くの制約なしに自由に出費できる人がそれほど多いとは思えませんが…」ぐらいの質問はしてほしい。そうすれば、「『制約がない』は言い過ぎかな。子供の教育費などを考えず、自分たちのために思い切って金を使えるという意味だよ」といった答えが返ってくるかもしれない。そうなれば、菊池社長を「愚か者」にしない形でインタビュー記事を構成できる。

菊地社長は記事の中で事実誤認と思われる発言もしている。

【ダイヤモンドの記事】

団塊の下の世代は、サラリーマンになってからずっとデフレが続き、金をためる時期がなかった。将来への不安もあって、若干給料が増えたところで、消費よりも貯蓄にという志向が強い。その後は、続かないと考えています。

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団塊の下の世代は、サラリーマンになってからずっとデフレが続き~」というくだりは明らかな誤りだ。この件では以下の内容で週刊ダイヤモンドに問い合わせを送った。回答はないだろう。

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

2月6日号の「短答直入」というインタビュー記事についてお尋ねします。この中で、菊地唯夫ロイヤルホールディングス社長が「団塊の下の世代は、サラリーマンになってからずっとデフレが続き、金をためる時期がなかった」と述べておられます。日本がデフレに陥ったのは1999年頃です。この前提では「サラリーマンになってからずっとデフレ」と言えそうなのは30代以下の世代です。例えば今の50代の多くは社会人として80年代末のバブルを経験しているので「サラリーマンになってからずっとデフレ」には明らかに当てはまりません。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠を教えてください。

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菊地氏が「団塊の下の世代は、サラリーマンになってからずっとデフレ」と言ったとしても、それをそのまま載せるようでは素人レベルだ。

最後に、もう1つ問題点を指摘しておこう。インタビュー記事を書くときには、原則として質問にきちんと答える形にすべきだ(相手を追及するようなインタビュー記事ならば話は別だが…)。しかし、今回の記事はそうなっていない。

【ダイヤモンドの記事】

──ロイヤルホストは拡大路線を採らないのですか

2000年代、「もうファミレスの時代は終わった」と、新業態に資金を投入していました。既存店売上高が下がり続けていたため、新店で補おうとしたのです。

それを、09年からは既存店に投資し、メニューの質を充実させて単価を上げました。結果、既存店売上高は前年実績を超え、業績も増収増益のサイクルに入りました。

今、外食で唯一価値が認められるのは「国産」です。だから当社も国産メニューを強化していきます。今期も業績は好調で、4期連続で増収増益を達成できそうです。

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これだと「拡大路線を採らないのですか」という質問に答えないまま終わっている。読者としてはスッキリしない。記事の他のところで「ロイヤルホストは質を追求していく方針です」と出てくるので「拡大路線を採らない」のだとは思う。それでも、質問にきちんと答える形にしてほしかった。

この問題は、ちょっとした工夫で解消できる。質問を「ロイヤルホストはどういう方針で展開していくのですか」に変えれば済む。取材の場で「拡大路線を採らないのですか」と聞いても明確に答えなかったのならば「拡大路線は採らないと理解していいんですね」といった確認をした方がいい。それは当然だ。記事の中でだけ質問を微妙に修正するのは小手先のやり方であり、ベストの選択ではない。ただ、覚えておいて損はないだろう。


※記事の評価はE(大いに問題あり)。須賀彩子記者への評価もEを据え置く。須賀記者に関しては「素人くささ漂う ダイヤモンド『回転寿司 止まらぬ進化』」「週刊ダイヤモンド 素人くささ漂う須賀彩子記者への助言」を参照してほしい。


追記)結局、ダイヤモンドからの回答はなかった。

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