大分川(大分県由布市) ※写真と本文は無関係です |
今回の記事では何が問題なのか。日経BP社へ問い合わせを送ったので、その中身を見てほしい。
【日経BP社への問い合わせ】
日経ビジネス2月22日号の「時事深層~激震、世界市場に3つのシナリオ すくむ米欧中、長期景気停滞へ」という記事についてお尋ねします。記事では、2月15日の日経平均株価の大幅高に関して「その原因になったと見られるのが、中国人民銀行が昨年8月の為替レート切り下げ以後、続けてきた人民元安誘導を一転させて、大幅な元高に誘導したこと」と解説されています。
しかし、昨年8月から今年2月の途中まで人民元安誘導を続けてきたという説明には疑問が湧きます。2月7日の日経の記事によれば、中国人民銀行は「1月末の外貨準備高が3兆2309億ドルで、前月に比べ995億ドル減った」と発表したそうです。その原因は「人民元への下落圧力が強まり、人民銀がドルを売って元を買う為替介入を繰り返していること」にあると記事では説明しています。元買い介入を繰り返しているのであれば「人民元安誘導」とは方向としては正反対です。
御誌の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。
この記事には他にも不可解な記述が見られます。「原油安の影響は当然、産油国だけではない。既に米国のシェールオイル業者の一部は経営が悪化。破綻に追い込まれており、米情報会社などの分析では、原油安の継続で資源企業、約140社の3分の1が1年以内に手元資金が枯渇する可能性すらあるという」という部分です。
記事の説明だと「米国=非産油国」と解釈するしかありません。しかし、米国は世界有数の産油国です。2015年6月には日経でも「米が世界最大の産油国に 39年ぶり、14年英BP調べ」という記事を載せています。「原油安の影響は当然、産油国だけではない」と書いた後に、原油安が米国に与える影響を解説したことはどう理解すればよいのでしょうか。
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ついでに、記事の書き方でいくつか細かい助言をしておこう。
◎どこに読点を打つべきか?
【日経ビジネスの記事】
2月に入って、円はドルに対して10日余りで約7.4%も急騰、一時1ドル=110円前半を付ける場面もあった。市場の混乱で流動性が高く、安全資産とされる円に一気に買いが入ったためだ。
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読点を打つと、意図しなくても文がグループ分けされてしまう。記事の書き手はその点に注意を払ってほしい。「市場の混乱で流動性が高く、安全資産とされる円に一気に買いが入ったためだ」と書くと、「市場の混乱で流動性が高く」と「安全資産とされる円に一気に買いが入ったためだ」に分かれてしまう。
そこから素直に解釈すると「市場の混乱によって流動性が高くなった」と理解したくなる。しかし、筆者は「流動性が高く、安全資産とされる円」と言いたかったのだろう。しかし読点で分離してしまったために「流動性が高く」は「市場の混乱で」との結び付きの方が強くなってしまった。改善例を示しておこう。
ついでに言っておくと「約7.4%」に「約」を付ける必要はない。
【改善例】
市場の混乱を受けて、流動性が高く安全資産とされる円に一気に買いが入ったためだ。
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◎ダブり表現に注意
【日経ビジネスの記事】
デフォルトで弁済に行き詰まることがあれば、中国経済への悪影響も及ぼしかねないはずだ。
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デフォルトとは「債務不履行」を意味する。「弁済に行き詰まること」と言い換えてもいいぐらいだ。だとしたら「デフォルトで弁済に行き詰まる」という説明は「リフォームで改築する」とか「イノベーションで技術を革新する」にも似た重複表現だと思える。
記事の別のところで「デフォルトすれば、原油市場の混乱は避けられない」と書いていたのも引っかかった。意見が分かれるかもしれないが、「デフォルトする」には違和感がある。「債務不履行する」とは普通は言わない。自分だったら「デフォルトとなれば、原油市場の混乱は避けられない」などと書くだろう。
※記事の評価はD(問題あり)。上海支局の小平和良記者、ニューヨーク支局の篠原匡記者、ロンドン支局の蛯谷敏記者の3人は暫定Dとしていた評価をDで確定させる。田村賢司主任編集委員はDで据え置きとする。
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