2015年10月3日土曜日

日経 松崎雄典記者 「スクランブル」での奇妙な説明(1)

3日の日経朝刊マーケット総合1面に載った「スクランブル~荒れ相場、枯れる商い 投機筋も逃げ出す悪循環」は奇妙な説明が多かった。特に「低い流動性だとすべての投資家の売買コストが上昇する」という説明は疑問が残った。まず、そこから考えてみよう。

福岡タワー(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

低い流動性では狙った価格で売買しづらくなり、すべての投資家にとって売買コストは上昇してしまう

2日のトヨタ自動車株は売買コストの重要性を示す好例だ。札幌証券取引所で100株の成り行きの買い注文が入り、4年ぶりに売買が成立した。価格は7300円と東証価格を233円上回り、流動性の低い札証で投資家はトヨタ株を高値づかみしたことになる


ここで言う「売買コスト」とは、「本来の価格より高く買うコスト(あるいは安く売るコスト)」を指すのだろう。「札証でトヨタ株を買った投資家は、東証で買うのに比べて売買コストが1株233円高い」と松崎記者は訴えているようだ。そこに異論はない。ただ、売る側のコストはどうか。東証で売るより233円高く売れているのだから、「売買コストは東証で売るより233円低い」と考えるべきだ。ゆえに「すべての投資家にとって売買コストは上昇してしまう」とは言い切れない。

次に気になったのが「ブログラム売買の比率が高まっている」というタイトルの付いたグラフだ。その注記には「大阪証券取引所の日経平均先物の売買に占めるABNアムロ証券とニューエッジ・ジャパン証券の比率合計」と書いてある。まず、この2社のシェアの比率がなぜ「ブログラム売買の比率」なのかは説明すべきだ。そこを自明としてよいほど、日経の読者がこの件に精通しているとは思えない。

大証の日経平均先物で、プログラム売買と言えばこの2社とされているのだろう。しかし、他社もゼロではないだろうし、ABNアムロとニューエッジもプログラム売買のみとは限らない。2社のシェアをブログラム売買の比率の近似値として使うのは否定しない。それならば、例えば「大証の日経平均先物におけるプログラム売買の9割以上は2社が占めるとされ、この2社の売買はほぼすべてがプログラム売買」といった情報が欲しい。それを示さないで、いきなり2社の売買シェアを「プログラム売買の比率」として使われても困る。

この記事は他にも問題が多い。残りは(2)で述べる。

※(2)へ続く。

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