2015年10月1日木曜日

度が過ぎる田島靖久ダイヤモンド副編集長の「鈴木崇拝」

ダイヤモンド10月3日号の「ヨーカ堂の大量閉店を決断 鈴木会長の〝総仕上げ〟」は、またしてもセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長を持ち上げる記事になっていた。筆者の田島靖久副編集長が鈴木氏を崇拝しているのは、6月6日号の特集「流通最後のカリスマ 鈴木敏文の破壊と創造」で分かってはいた。崇拝自体が悪いとは言わない。しかし、「総仕上げ」などと持ち上げるならば、それにふさわしい事実が要る。今回の「ヨーカ堂の大量閉店」が「総仕上げ」に値するものか記事を分析してみる。

アントワープ(ベルギー)の市街地にある広告
             ※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

鈴木会長は、ヨーカ堂対して長年に渡って改革を迫ってきたが、思いは浸透せず業績は低迷、業を煮やしついに決断を下す。全国で展開する181店の2割に当たる40店の閉鎖を決めたのだ。

セブン&アイによれば、まず16年2月期中に数店を閉鎖、20年2月期まで毎年10店前後のペースで閉めていくという。

閉鎖店舗については、土地の所有者との契約などもあり、現在、精査中としているが、都心、地方にかかわらず、同一商圏内に大型ショッピングセンターを建設した店舗や、不採算が続く店舗などが対象となるとみられている。


大量閉店と言っても、全体の2割に当たる40店に過ぎない。しかも閉店が完了するのは「20年2月期」とかなり先だ。例えば「今期中にヨーカ堂を売却」「来期までにGMSの9割を業態転換」といった話ならば「総仕上げ」でも違和感はない。しかし、今期も含めて5年間で全体の2割を閉店する程度で「『鈴木会長の総仕上げ』と見ることもできる」などと書いてしまう田島副編集長は、鈴木会長を崇拝しすぎて冷静な分析ができていない。

そもそも不採算店を中心に2割の店を閉めたからと言って、ヨーカ堂の残りの店舗の収益力が高まるわけではない。記事では「今回の決断の背景には、GMSの苦境がある。大型店舗で、食品から衣料品、住関連商品など幅広い品ぞろえを武器にしていたGMSは、ユニクロや家電量販店といった専門店におされて市場の縮小が止まらず、苦境に陥っている」と田島副編集長自身が書いている。なのになぜ2割の店舗閉鎖だけで「総仕上げ」と見てしまったのか。残り8割の店はGMSとして営業を続けるのならば、「総仕上げ」にはヨーカ堂自体の競争力強化が不可欠だ。

「“信者”が書いているのだから」と言われればそれまでだが、結論部分も必要以上に鈴木会長を礼讃していると感じた。


【ダイヤモンドの記事】

一方、11月からは「オムニチャネル」の展開を本格化、攻めの姿勢も鮮明にする。ネットでいつでもどこでも買い物ができ、受け取ることができるというもので、鈴木会長が「流通の最終形」と位置付けている事業だ。

鈴木会長は、「破壊」と「創造」という真骨頂で、この下期、最後の大仕事にとりかかる。


セブン&アイが11月から本格展開する「オムニチャンネル」とは、要はグループ会社で売っている商品をネット販売し、セブンイレブンの店舗で受け取れるという内容のようだ。だとすると「ネットでいつでもどこでも買い物ができ、受け取ることができる」は言い過ぎだろう。「いつでもどこでも買い物ができ」は許容範囲内だとしても、「(いつでもどこでも)受け取ることができる」は明らかに大げさだ。

それとも、11月から始めるサービスでは、海の上で漁をしている時にも商品を受け取れるようになるのだろうか。「それは極端な例」と言うならば、ローソンやファミリーマートでは受け取り可能なのか。不可能だとすれば、「鈴木会長は、『破壊』と『創造』という真骨頂で、この下期、最後の大仕事にとりかかる」と言われても、空々しく響くだけだ。


※記事の評価はD(問題あり)。田島靖久副編集長の評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。F評価の理由については「週刊ダイヤモンドを格下げ 櫻井よしこ氏 再訂正問題で」を参照してほしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿