2015年10月15日木曜日

説明下手が過ぎる 日経 北沢千秋編集委員の記事(3)

14日の日経朝刊マネー&インベストメント面に掲載された「波乱相場で健闘の投信  ヘッジファンド型で運用」で疑問だったのが「なぜ今ヘッジファンドなのか」だ。筆者の北沢千秋編集委員も一応の答えは用意している。

三連水車(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

米国の利上げ観測と中国景気の変調を背景に、世界の株価が急落した8月。多くの投信の運用成績が悪化するなかで、基準価格が逆行高するファンドがあった。ヘッジファンドに分類される投信だ

(中略)多様な運用戦略があり、ファンドマネジャーの腕前や活用する計量モデルの精度で運用成績が低迷するものもあるが、国内でもそれなりの実績を上げてきたヘッジファンド型投信が少しずつ増えている(表B)


株価が世界的に急落した8月でも運用成績が相対的に良かった上に、国内でも実績のあるヘッジファンド型投信が少しずつ増えているから、このタイミングでヘッジファンドを取り上げたのだろう。しかし、この前提がどうも怪しい。

表Bには「波乱相場の中で健闘した主なヘッジファンド型投信」というタイトルが付いていて、5本の投信を紹介している。5本とも「健闘」はしているが、「8月の基準価格騰落率」を見ると、プラスなのは3本のみ。「多くの投信の運用成績が悪化するなかで、基準価格が逆行高するファンドがあった。ヘッジファンドに分類される投信だ」と強調するほどではない。実は「逆行高」となったのは3本だけではないかと疑いたくなる。

紹介した5本の投信の「純資産残高」も引っかかる。一般的には、純資産残高として30億円以上は欲しいとされる。この辺りは北沢編集委員もよく分かっているはずだ。今回紹介した投信の純資産残高を見ると「45億円」「26億円」「9億円」「2億円」「1億円」。騰落率がマイナスで純資産残高が10億円未満の投信まで取り上げないと、表を埋められなかったのだろう。

純資産残高30億円以上で8月の騰落率がプラスの投信は、5本の中で「野村アセットマネジメントのノムラ・グローバルトレンド(円コース・年2回決算型)」しかない。この投信も信託報酬は「3.3%」。個人的には、問題外の高コストだと思える。北沢編集委員も「信託報酬(運用管理費用)が年3%を超えるファンドも少なくない。運用成績の悪いファンドを選ぶとコスト倒れになってしまう」と書いている。

つまり、現時点で国内に推薦できるヘッジファンド型投信は見当たらないのではないか。それを「もしも安定的な運用を望むなら、ヘッジファンドの活用も資産防衛の手段として一つの選択肢になるだろう」と結論付けてしまうのは、かなり無理がある。「株式や債券などとは価格変動のパターンが異なるヘッジファンドを加えると、資産全体の相場下落に対する抵抗力が増す」のは否定しないが、分散効果を出すためなら、他の選択肢がいくらもある。

記事から得られる情報を基に判断すると「個人投資家がヘッジファンド型投信を選択肢として考える必要はほとんどない」と思える。なのに、北沢編集委員はなぜこんな記事を書いてしまったのだろうか。

※記事の評価はD(問題あり)。北沢千秋編集委員の評価もDを維持する。

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