2015年10月19日月曜日

ヨイショが過ぎる東洋経済「アシックス 知られざる改革」(1)

東洋経済10月24日号に載った深層リポート「アシックス 知られざる改革」(86~91ページ)に対する評価は、一言で言えばヨイショしすぎ。これでは広告と大差ない。アシックスの関係者は「無料で会社の宣伝ができた」と喜んでいるだろう。常盤有未、杉本りうこ の両記者には、経済記事の書き手としてこれでいいのかよく考えてほしい。

シーサイドももち海浜公園(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です
記事はアシックスのオニツカタイガー表参道店が外国人でにぎわう様子を描写するところから始まる。その後、同社が業績低迷からいかにして復活したかの説明が延々と続く。その中には、「オニツカ」ブランドを復活させたり欧州法人を黒字化したりと“大活躍”した尾山基社長がたびたび登場する。同社長へのインタビュー記事での質問も「今期も業績は好調です」「特に中国は好調です」などと尾山社長に取り入るかのような甘い内容が目立つ。「アシックスはここまでやる! 履き心地を分析し尽くす研究所」というコラムも併せて読むと、宣伝臭さに圧倒される。

加えて、昔話が多すぎる。メインの記事の半分以上を00年代までの話で費やしている。アシックスの復活の過程を描くのは構わないが、中心は最近の話にしてほしい。しかも、昔話には明らかな説明不足と思える部分があった。以下のくだりだ。


【東洋経済の記事】

体育用品は基本的に、卸商社を通じて全国のスポーツ用品店に届けられる。学校や指導者に一度指定されれば、安定的にまとまった数量をさばくことができる強力な販路だ。アシックスを含むすべてのメーカーが、代理店ルートにどっぷりと依存してきた。

一方で80~90年代、ナイキのエアジョーダンやアディダスのスタンスミスといった海外ブランドのストリート系ギアが日本でも大ヒット。若者は学校や試合でこそアシックスを着用しても、プライベートでは海外ブランドを愛用するようになった。それでもアシックスは従来どおり、体育や競技のためのシューズばかりを愚直に売っていた。

「当時のわが社にとって一番のお客さんは代理店。代理店の倉庫に段ボールで商品を送りつければ売り上げが立つから。それだけに代理店の顔色をつねにうかがい、百貨店など新しい販路との取引はNGという雰囲気も濃厚にあった」。かつて国内販売に携わっていたOB社員はそう振り返る。

人員削減、ゴルフ用品撤退などで赤字体質は改善したが、年商1300億~1400億円をさまよう時代は結局、00年代前半まで10年近く続いた。


記事ではアシックスが「90~00年代前半に長い業績低迷に陥った」理由の1つに「学校向け体育用品の衰退」を挙げているが、この件に対してどういう対策を立てたのか全く触れていない。学校向けからは撤退したのか、大幅に縮小したのか、今も頼っているのか。推測さえ困難だ。他を削ってでも、ここは言及すべきだろう。

うがった見方をすれば、アシックスへのヨイショが行き過ぎて「国内事業は改善が進んでいない」という実態をあえて伏せたのではないかとも思える。それについては(2)で述べたい。

※(2)へ続く。

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