「空飛ぶクルマ」に関する記事の多くには怪しさが漂う。21日の日本経済新聞朝刊 経済・政策面に載った「『空飛ぶクルマ』本格導入へ~旅客輸送へ法整備検討 政府、まず大阪万博で」という記事もそうだ。
夕暮れ時の筑後川 |
まず 「空飛ぶクルマ」の定義が気になる。個人的には「公道を自動車として走行できて空も飛べる機械」を「空飛ぶクルマ」だと考えたい。しかし記事に付けた「米ジョビー・アビエーションが開発する『空飛ぶクルマ』」はドローンによく似ていて、公道を走れる感じがない。
記事では「空飛ぶクルマは滑走路が不要で垂直に離着陸でき、機動的に動ける」とは書いているが「空飛ぶクルマ」の条件は明確ではない。「滑走路が不要で垂直に離着陸でき、機動的に動ける」だけでいいのならばヘリコプターも「空飛ぶクルマ」と言える。だとすれば「旅客輸送へ法整備」を検討する必要があるのか。
「米ジョビー・アビエーション」が開発しているのは電動垂直離着陸機(eVTOL)らしい。「電動」というところがヘリコプターと違うとしても、機能は似たようなものだ。それを「空飛ぶクルマ」と呼ぶのは適切なのか。そこを日経には考えてほしい。
どんな「法整備」が必要なのかもよく分からない。当該部分を見てみよう。
【日経の記事】
新たに設ける作業部会は経済産業省と万博運営主体の日本国際博覧会協会が事務局を担う。トヨタや同社が出資する空飛ぶクルマ開発の米ジョビー・アビエーション、ドイツの機体メーカーのボロコプターなどが参加する見通しだ。国土交通省や大阪府も加わる。
作業部会では万博を舞台にした旅客輸送の運営計画をまとめるとともに、離着陸場の整備や飛行高度といった具体的な運航ルールを協議する。空飛ぶクルマは法的には航空機とみなされ、国交省が所管する航空法での制度整備が必要になる。
空飛ぶクルマは滑走路が不要で垂直に離着陸でき、機動的に動ける。万博会場となる大阪市の人工島、夢洲(ゆめしま)と周辺地域の移動に適しているとみており、観客の移動体験や富裕層向けサービスを想定する。
◎これは「法整備検討」?
記事を読むと、これは「法整備検討」なのかとの疑問が湧く。「作業部会」で「万博を舞台にした旅客輸送の運営計画をまとめるとともに、離着陸場の整備や飛行高度といった具体的な運航ルールを協議する」だけならば「法整備」には踏み込んでいない。
「航空法での制度整備が必要になる」とも書いているが、これだと「航空法」の改正が必要なのか「航空法」の下での「制度整備が必要」なのかよく分からない。後者ならば「法整備」の検討は不要とも言える。
結局「空飛ぶクルマ」とは何か、その普及に向けてどんな「法整備」が必要なのかが漠然としている。
「空飛ぶクルマ」がヘリコプターに似た大型ドローンの類ならば、社会に与える影響は非常に小さいだろう。道路を走っていた車から翼が出てきて空に飛んでいくような本物の「空飛ぶクルマ」が実用化されれば、新たな「法整備」が要るとは思う。しかし、その手の話はまだまだ先のようだ。取りあえず「空飛ぶクルマ」という言葉が記事に出てきたら眉唾物だと疑ってみたい。
※今回取り上げた記事「『空飛ぶクルマ』本格導入へ~旅客輸送へ法整備検討 政府、まず大阪万博で」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210521&ng=DGKKZO72103500Q1A520C2EP0000
※記事の評価はD(問題あり)
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