1日の日本経済新聞朝刊総合2面に載った「苦境、女性・非正規に集中~昨年度の就業65万人減、雇用押し下げ 支援策の恩恵に偏り」という記事には、重要なポイントが抜け落ちていると感じた。「苦境、女性・非正規に集中」という切り口に無理があるとは言わない。しかし、今回のデータを見ると「雇用押し下げ」の影響を大きく受けているのは男性の方だと分かる。「コロナ禍では女性の方が雇用面での痛みが大きい」と言われてきたが、それを覆す結果となっている。こんな大事なことをなぜ伝えないのか。
寺内ダム |
記事では「総務省が30日発表した労働力調査」を基に「2020年度の雇用環境は長引く新型コロナウイルスの影響で悪化した」と報じている。「就業者数」で見ればその通りだが、内訳は意外な結果になっている。記事から数字を拾うと以下のようになる。
男性(非正規)32万人減
男性(正規)4万人減
女性(非正規)65万人減
女性(正規)36万人増
男女別に合計すれば、男性が36万人減で女性が29万人減。男性の減少幅の方がかなり大きい。正規雇用の方が労働者にとっておいしいと仮定すれば、女性の雇用環境は悪化したのかどうか微妙だ。一方、男性は正規も非正規も減っており、救いがない。
なのに「コロナで職を失って苦しんでいるのは女性」といった伝えられ方をしてきた。「労働力調査」の数字が正しければ「女性よりも男性の雇用が厳しい」と見るべきだ。
今回の記事では「女性でも正規労働者は需要増が続く」とは書いている。しかし「トータルで見ると男性の雇用減少の方が女性よりきつい」という視点は見当たらない。書き手にはそれが見えないのか、見えているのに見えないふりをしているのか。
いずれにしても問題がある。
※今回取り上げた記事「苦境、女性・非正規に集中~昨年度の就業65万人減、雇用押し下げ 支援策の恩恵に偏り」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210501&ng=DGKKZO71551270R00C21A5EA2000
※記事の評価はD(問題あり)
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