日本経済新聞の中村直文編集委員が14日の朝刊ビジネス2面に書いた「ヒットのクスリ~デジタル疲労と『ながら族』 巣ごもり、withコスパ」という記事は苦しい内容だった。「ながら族」が復活し関連消費が伸びているという話だが、裏付けとなる事実はほとんど見当たらない。
進撃の巨人 大山ダム銅像 |
記事を順に見ていこう。
【日経の記事】
高度経済成長期からだろうか。ラジオやレコード、カセットを聴きながら勉強する「ながら族」という言葉が流行した。デジタル生活の日常化と新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり生活は、再び「ながら族」を活発にさせている。
スマホを利用しながら、テレビ、仕事、家事とのマルチタスクは今や当たり前。アプリの利用時間は急拡大し、2020年の世界でのアプリ支出額は前の年に比べ3割増の1109億ドル(約12兆円)に達したとか。今年に入っても高い伸びを示している。
◎「ながら族」増加の裏付けになる?
「アプリの利用時間は急拡大し、2020年の世界でのアプリ支出額は前の年に比べ3割増の1109億ドル(約12兆円)に達した」としても「再び『ながら族』を活発にさせている」根拠とはならない。「スマホを利用しながら、テレビ、仕事、家事とのマルチタスク」をこなす傾向が強まっているといったデータが欲しい。中村編集委員も探してみたとは思うが…。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
この結果、ロート製薬には追い風が吹いた。新型コロナでインバウンド(訪日外国人)需要が消失し、主力の目薬市場は落ち込んだ。だが、ながら族が増えたことで見る力の維持をサポートする同社のサプリメント「ロートV5粒」の人気に拍車がかかった。
◎数字はなし?
データの裏付けがないまま「ながら族が増えた」ことになっている。そして「『ロートV5粒』の人気に拍車がかかった」らしい。しかし、やはり数字を見せてはくれない。
さらに見ていく。
【日経の記事】
今や、ながら族は若い世代だけの「特権」ではない。高齢者でもスマホなどを見ながらのテレビ鑑賞は日常行為で、巣ごもりで一段と強まった。目の疲れを訴える消費者が増え、「アプリ」疲れが「サプリ」需要を喚起しているというわけだ。
◎「ながら族」だからなの?
コロナの影響でスマホ、パソコン、テレビに接する時間が増えたかもしれない。それが「ながら族」かどうかは「目の疲れ」とあまり関係ない。「ながら族」でなくても画面を見つめる時間が長ければ「目の疲れ」は強まる。「ながら族」にごだわる意味があるのか。
さらに見ていく。
【日経の記事】
ながら族の本質は昔から変わることはない。時間を有効に使いたいというコスパ意識だ。それが生活のデジタル化で「はずれ時間」を作りたくないという思考がさらに強まり、新しい消費シーンを生み出す。とりわけ、デジタルライフの拡大に伴う「疲労」をいかに抑えるかをテーマにした商品が増えている。
例えば、眼鏡店「JINS」のジンズホールディングスと磁気治療器「ピップエレキバン」のピップ(大阪市)がコラボした「JINS MAGNET」。メガネバンド型の磁気治療器だ。
JINSのデザイナーが首筋の疲れに悩み、いろいろと試したが、貼るタイプやネックレスタイプの治療器しかないことに気づく。そこで日常生活をしながら、手軽に利用できる治療器を考え、2年前にピップに共同開発を持ちかけたという。
バンドには磁石が付いている。バンドを眼鏡のつるに付けると首の後ろにフィットする。大々的なプロモーションはしなかったが、予定以上の売り上げになったという。
◎既存商品でいいような…
結局「デジタルライフの拡大に伴う『疲労』をいかに抑えるかをテーマにした商品が増えている」という話になってしまう。これだと「ながら族」に焦点を絞る意味がない。「ながら族」の消費を取り上げるなら、「ながら族」だからこそ便利さを感じるような商品を取り上げるべきだろう。
そして「JINS MAGNET」に関しても「予定以上の売り上げになった」というだけで、やはり具体的な数字はない。
さらに気になるのが「貼るタイプやネックレスタイプの治療器しかないこと」に気付いた「JINSのデザイナー」が「日常生活をしながら、手軽に利用できる治療器を考え」たという話だ。「貼るタイプやネックレスタイプ」だと「日常生活をしながら、手軽に利用」はできないのならば納得できる。
しかし「貼るタイプやネックレスタイプ」と「JINS MAGNET」に「手軽」さに関して大差はない。個人的には「貼るタイプ」が最も「手軽に利用でき」る気がする。
ネタがない中で話を捻り出しているのは分かるが、やはり苦し過ぎる。中村編集委員にこのコラムを書かせ続けるのならば、もう少し回数を減らしてはどうか。
※今回取り上げた記事「ヒットのクスリ~デジタル疲労と『ながら族』 巣ごもり、withコスパ」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210514&ng=DGKKZO71866280T10C21A5TB2000
※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html
「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html
スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html
「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html
「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html
キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html
分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html
「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html
「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html
「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html
「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html
日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html
「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html
「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html
渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html
早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html
日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html
「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html
野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_15.html
「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_23.html
平成は「三十数年」続いた? 日経 中村直文編集委員「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/deep-insight.html
拙さ目立つ日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ~アネロ、原宿進出のなぜ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/blog-post_28.html
「コロナ不況」勝ち組は「外資系企業ばかり」と日経 中村直文編集委員は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/blog-post.html
データでの裏付けを放棄した日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/blog-post_17.html
「バンクシー作品は描いた場所でしか鑑賞できない」と誤解した日経 中村直文編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/09/blog-post_11.html
「新型・胃袋争奪戦が勃発」に無理がある日経 中村直文編集委員「経営の視点」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_26.html
「悩み解決法」の説明が意味不明な日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_19.html
問題多い日経 中村直文編集委員「サントリー会長、異例の『檄』」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/blog-post_89.html
「ジャケットとパンツ」でも「スーツ」? 日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/blog-post_30.html
「微アルコール」は「新たなカテゴリー」? 日経 中村直文編集委員の誤解https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/blog-post_12.html
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