日本経済新聞が大好きな「世界一変」系の連載は危ないと繰り返し訴えてきた。しかし、やめられないようだ。1日の朝刊1面で「第4の革命 カーボンゼロ」という連載が始まった。この手の連載に頻繁に出てくる「革命」という言葉がタイトルに入っている。そのせいか、初回の「脱炭素の主役、世界競う~日米欧中動く8500兆円」という記事で既に危うい雰囲気が漂っている。
夕暮れ時の筑後川 |
最初の段落から見ていこう。
【日経の記事】
世界がカーボンゼロを競い始めた。日本も2050年までに二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出を実質ゼロにすると宣言した。化石燃料で発展してきた人類史の歯車は逆回転し、エネルギーの主役も交代する。農業、産業、情報に次ぐ「第4の革命」を追う。
◎「逆回転」?
「人類史の歯車は逆回転」するという説明が引っかかる。「化石燃料」の利用をやめて馬車や帆船で移動する生活に戻るのならば「逆回転」でいいだろう。しかし、そういう話ではないはずだ。
「革命」を打ち出す難しさはここにある。大変なことが起きないと「革命」にはならないが、実際には日経の思い通りの「革命」的な動きが出てこない。なので物事を大げさに表現してしまう。「逆回転」もそうだ。
「化石燃料」の利用が減っても、再生エネルギーで代替して人類としてのエネルギー消費量が増え続けるのならば「逆回転」ではない。
次は「カーボンゼロ」について考えてみよう。
【日経の記事】
カーボンゼロの奔流が世界を動かす。国連環境計画によると世界の3分の2にあたる126の国・地域がCO2など温暖化ガスの実質ゼロを表明した。米国も追随すれば、温暖化ガス排出量で世界の63%の国・地域がゼロを約束する。
◎遠い先でも実現が難しそうな…
例えば、2025年に世界で「カーボンゼロ」が実現するとしよう。この場合は、かなり大きな変化が起きそうだ。しかし「日本も2050年までに二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出を実質ゼロにすると宣言した」だけ。目標を達成できたとしても30年近く先の話だ。
記事によれば「米国も追随」と仮定した場合でも「温暖化ガス排出量で世界の63%の国・地域がゼロを約束する」に過ぎない。最後まで「約束」しない国もあれば「約束」したものの目標を達成できない国も出てくるという状況は十分に考えられる。
「2050年」(日本の場合)という遠い未来の「約束」を基に「革命」が起きると読者に訴えるのが今回の連載だ。苦しい内容になるのは避けられそうもない。
無理は既に出ている。1面の記事の終盤を見てみよう。
【日経の記事】
人類は18世紀の農業革命で穀物生産を伸ばし、産業革命では工業生産を飛躍的に増やした。20世紀末の情報革命は社会をデジタル化し、経済や雇用の姿も変えた。カーボンゼロは人類の営みでこれまで増え続けたCO2を一転して減らす革命で、世界の産業や暮らしのあり方も塗り替わる。
◎「一転して減らす」?
「カーボンゼロは人類の営みでこれまで増え続けたCO2を一転して減らす革命」なのか。世界が足並みをそろえた上で目標を達成したとしても「カーボンゼロ」だ。その後は減少に転じるかもしれないが、それまでに30年近い年月をかけるのならば「一転して減らす」とは言えない。
第2回以降ではさらに苦しくなるのだろうか。見守っていきたい。
※今回取り上げた記事「第4の革命 カーボンゼロ(1)脱炭素の主役、世界競う~日米欧中動く8500兆円」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1689Q0W0A211C2000000
※記事の評価はD(問題あり)
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