2021年1月24日日曜日

ノルウェーを見習えば少子化克服? 山口慎太郎 東大教授の無理筋

東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の山口慎太郎氏が少子化対策に関しておかしな主張をしている。23日付のたまひよOnlineに載った「ジェンダーの不平等が原因?なぜ少子化を食い止められないのか」という記事の一部を見ていこう。

神戸市

【たまひよOnlineの記事】

――日本では少子化が進む一方です。原因はどこにあると思われますか。

山口先生(以下敬称略) 子どもを持つか持たないか、持つとしたら何人ほしいかは、夫婦で話し合って決めることです。でも、夫婦で意見が一致しないのは珍しいことではなく、その場合、妻のほうが子どもを持ちたくないと考えるケースが多い、という調査結果があります。

そして、妻が「子どもを持ちたくない」と思っている割合が高い国ほど、男性の子育て参加度が低く、出生率も低くなることもわかっています。

――出生率が下がる一方の日本は、「妻が子どもを持ちたいと思いにくい国」ということなのでしょうか。

山口 急激に少子化が進んでいる現状を見る限り、残念ながらそう言わざるを得ません。

子育てや労働環境において男女平等が進んでいる国ほど、子どもを持つことに夫婦間の意見が一致しやすいという研究結果もあります。

世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ指数2020」によると、日本の順位は153カ国中121位。1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランドと続き、イギリスが21位、アメリカが53位、アジア圏では中国が106位、韓国が108位で、日本は断トツに低い順位です。

また、6才未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児関連時間の国際比較によると、日本のママが1日に家事・育児に費やす時間は7時間34分(うち育児が3時間45分)で、パパは1時間23分(うち育児が49分)です。「ジェンダー・ギャップ指数2020」2位のノルウェーでは、ママが5時間26分(うち育児が2時間17分)、パパが3時間12分(うち育児が1時間13分)ですから、かなりの差がありますね。

こうした男女の不平等を改善していかないと、日本の少子化を食い止めることはできないと思います。


◎「ノルウェー」を見習うべき?

男女の不平等を改善していかないと、日本の少子化を食い止めることはできない」と山口氏は言う。そして「ジェンダー・ギャップ指数」が「2位のノルウェー」と日本を比較している。「ノルウェー」の出生率が高いのならば説得力はある。

「世界経済のネタ帳」というサイトで2018年の合計特殊出生率ランキングを見るとノルウェーは1.56で156位。170位の日本(1.42)と大差ない。「ジェンダー・ギャップ指数」が「3位」の「フィンランド」に至っては日本より下位の173位。なのに「家事・育児に費やす時間」の男女差を縮小すれば少子化対策になると考えるのが不思議だ。

東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授」という肩書からの推測になるが、山口氏は賢い人なのだろう。そんな人がなぜこんな主張をしてしまうのか。

それは「見たいものを見よう」という気持ちのせいだと思える。「北欧のような社会を日本も目指すべきだ」という信条が山口氏にはあるのだろう。なので少子化問題に関しても、それに合ったデータをご都合主義的に選んでしまうのではないか。

少子化問題では多くの論者が「先進国の中だけで考える」という罠にはまっている。少子化クラブとも言える先進国の中で、わずかな出生率の差に着目して対策を考えるので、どうしても無理が生じてしまう。

途上国・新興国に目を向ければ高い出生率の国はいくらもある。だが、そこから少子化対策を学ぼうとすると、どうしても「不都合な結論」になってしまう。だから山口氏のような人でも、おかしな分析をしてしまうのだろう。

妻が『子どもを持ちたくない』と思っている割合が高い国ほど、男性の子育て参加度が低く、出生率も低くなることもわかっています」と山口氏は言う。しかし具体的なデータは示していない。先進国に限定しない近年のデータでもそうした傾向が出るだろうか。少なくともノルウェーは「男性の子育て参加度」が高いのに「出生率」は低いのではないか。

付け加えると「ジェンダー・ギャップ指数」に関する「アジア圏では中国が106位、韓国が108位で、日本は断トツに低い順位です」との説明は誤りではないか。日本より下位のトルコ、タジキスタン、ヨルダン、オマーン、レバノン、サウジアラビア、イラン、シリア、パキスタン、イラク、イエメンは全て「アジア圏」外と言えるだろうか。


※今回取り上げた記事「ジェンダーの不平等が原因?なぜ少子化を食い止められないのか」https://news.yahoo.co.jp/articles/9427ffa99cda44c78614625122ab98def6ec1f38


※記事の評価はD(問題あり)

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