27日の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「サントリー会長、異例の『檄』~ビール低調/『らしくない』後追い 停滞打破へ改革本部設置」という記事は問題が多かった。中村直文編集委員に記事を任せ続けるのならば、社内の支援体制をもっと強化すべきだ。
ゆめタウン久留米 |
記事の全文は以下の通り。
【日経の記事】
サントリーホールディングス(HD)の国内アルコール事業に元気がない。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大でビール販売量が低調で、チューハイは思うように伸びなかった。近年は他社の後追い的な商品戦略も目立つ。しびれを切らしたのか、20年末には佐治信忠会長が異例の檄文(げきぶん)を社員にメールで送付。社内には緊張感が走っている。
社内メールはオブラートに包みながらも厳しい内容だった。「来年(21年)はコロナ禍の中、いやコロナ禍だからこそ、サントリービール事業のステージを変えるチャンスだという気持ちが強くあります。勘と言っても良いでしょう。(中略)常識の壁を破り、ステージを変えるチャンスや!如何(いかが)?」
「来年は私たちにとって、『やり返す』『やり返さねばならない』1年なのです」
まるでテレビドラマ「半沢直樹」に出てくるような言い回しだ。佐治氏は会長となってからは国内外の業務執行を新浪剛史社長や鳥井信宏副社長に任せてきた。そんな佐治会長がいつも気にするのは巨大化したサントリーHDが官僚化し、大企業病に陥ることだ。
ビール事業の赤字に長年苦しんだサントリーが「ザ・プレミアム・モルツ」の成功で黒字化したのは08年。この年はハイボールブームも演出し、飛躍の年となった。
清涼飲料を手掛けるサントリー食品インターナショナルの上場(13年)、米国のビーム社買収(14年)と国内外で基盤を固めた佐治会長が、新浪氏に社長を譲ったのは14年。最大の狙いは「外来種」を招き、組織が硬直化しないように社内に緊張感をもたらすことだ。
「やってみなはれ」の言葉で有名なサントリーは発泡酒を先駆けて出したり、ハイボールを成功させたり、独自性が強みだ。しかし今年の事業戦略説明会で打ち出した新商品は、キリンがすでに昨年に投入した糖質ゼロのビール。らしくない。
創業一族の鳥井副社長は「20年は業務用の不振が痛手だった。チューハイは伸びたが、市場の伸び率を下回っている。見通しが甘く、勝った感じはしない」と話す。ちなみにキリンは市場の成長率を超えている。
サントリーHDではこうした反省を踏まえて、1月1日にグループ戦略・改革本部を設置した。トップについたのは将来の総帥最有力候補である鳥井副社長だ。「昔気質の古いサントリーと海外事業などを進める新しいサントリーがある。両方のバランスが大事」と話す。
かつては創業一族が陣頭に立ち、顧客や市場を起点としたマーケティング経営だったサントリー。今は全体バランスを重視している。過去の成功体験が強いと、意思決定の早い創業一族経営でも後れを取る。新たな価値を提示できない企業に成長はない。
◇ ◇ ◇
気になった点を列挙してみる。
(1)1カ月経った今なぜ?
メインの見出しは「サントリー会長、異例の『檄』」。しかし「異例の檄文(げきぶん)を社員にメールで送付」したのは「20年末」らしい。約1カ月が経過している。話が古くないか。
「まるでテレビドラマ『半沢直樹』に出てくるような言い回しだ」と中村編集委員は言うが、内容的にもそんなに厳しくない。
何が「異例」なのかも明確にしてほしかった。「会長」が「社員にメールで送付」するのが「異例」なのか。年末の「送付」が「異例」なのか。毎年恒例だが、いつもはもっと温い内容なのか。
さらに言えば対象が「社員」となっているのも気になる。全「社員」に送ったのならそう書いてほしい。一部の「社員」が対象ならば、その範囲も欲しい。
(2)数字は見せない主義?
「国内アルコール事業に元気がない」と言うものの、具体的な数字は全く出てこない。経済記事でこれは辛い。どの程度「元気がない」のか把握できない。
(3)「新浪剛史社長」には任せられない?
「異例の檄文」を社員に送ったという話の後で「国内外の業務執行を新浪剛史社長や鳥井信宏副社長に任せてきた」「今年の事業戦略説明会で打ち出した新商品は、キリンがすでに昨年に投入した糖質ゼロのビール。らしくない」と続く。
「新浪剛史社長」に任せていてはダメだから「佐治信忠会長」が前面に出るという宣言の意味が「異例の檄文」にはあるようにも取れる。しかし中村編集委員はその辺りを明確にしていない。個人的な見解でもいいので、そこは触れるべきだ。
「1月1日にグループ戦略・改革本部を設置した。トップについたのは将来の総帥最有力候補である鳥井副社長だ」とも記事では書いている。これも「新浪剛史社長」では頼りないから「創業一族」が指揮を執るとも取れる。しかし「今は全体バランスを重視している」とも書いていて結局よく分からない。
もう少しきちんと解説してほしい。
(4)「総帥」という役職がある?
「トップについたのは将来の総帥最有力候補である鳥井副社長だ」と書いているが「総帥」という役職が「サントリーHD」にはあるのか。あるとしたら現在は「佐治信忠会長」が兼務しているのか。いきなり「将来の総帥最有力候補」と言われても困る。
※今回取り上げた記事「サントリー会長、異例の『檄』~ビール低調/『らしくない』後追い 停滞打破へ改革本部設置」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210127&ng=DGKKZO68542870W1A120C2TJ1000
※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html
「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html
スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html
「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html
「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html
キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html
分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html
「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html
「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html
「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html
「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html
日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html
「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html
「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
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渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html
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https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html
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https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html
「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
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野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
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「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_23.html
平成は「三十数年」続いた? 日経 中村直文編集委員「Deep Insight」
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拙さ目立つ日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ~アネロ、原宿進出のなぜ」
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「コロナ不況」勝ち組は「外資系企業ばかり」と日経 中村直文編集委員は言うが…
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