BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈氏に対しては低い評価を与えてきた。専門家なのに市場への理解が不十分だと思えるからだ。22日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に載った「エコノミスト360°視点~『合理的バブル』が終わるとき」からも、その傾向が読み取れる。
夕暮れ時の耳納連山 |
まずは「バブル」への理解について見ていこう。
【日経の記事】
しかし、合理的か非合理的かにかかわらず、バブルはいつかはじける。
良く引き合いに出されることだが、電気自動車世界最大手、米テスラ株の時価総額が日本車メーカー9社合計を上回った事実一つをとっても、資産価格の上昇はすでに説明がつかない。警戒感を持ってバブルの波から早く降りれば崩壊に備えられる。とはいえ、まだ株価が上昇するとすれば、指をくわえて見ていられないのが投資家の宿命だ。
◎なぜ「説明がつかない」?
「米テスラ株の時価総額が日本車メーカー9社合計を上回った事実一つをとっても、資産価格の上昇はすでに説明がつかない」と中空氏は言うが「説明」は簡単だ。「米テスラ」の利益が近い将来に「日本車メーカー9社合計」を上回るというシナリオを描けばいい。例えば5年後に「9社合計」を上回り、10年後には2倍以上になるとの前提であれば、今の株価を正当化できる。
そのシナリオの妥当性が「バブル」かどうかを決める。ただ、将来を正確に見通すのは難しいので「バブルの可能性が高い」ぐらいのことしか言えないはずだ。
中空氏は「米テスラ」の株価が「バブル」と言える根拠として「時価総額が日本車メーカー9社合計を上回った」ことしか挙げていない。「いくら何でも『9社合計』を上回るのはおかしいでしょ」ぐらいの感覚で判断しているのか。だとしたら素人レベルだ。
もう1つ気になったのが以下のくだりだ。
【日経の記事】
問題は合理的か非合理的かではなく、(1)このバブルは何をトリガーにして(2)いつ終わるのか――という2点だ。
効率的市場仮説に基づいて価格が決まっているのだとすれば、そこから生じたバブルの限界は、「その価格では転売できなくなった時」か、現実世界の資源の有限性がネックになって「その価格が成立しなくなった時」である。
しかし、前者については、中央銀行が最後の買い手となると市場は理解している。中央銀行の出口戦略がきっかけになるとの声は多いが、極端な政策を取るとは思えない。そうなると、今回のバブルは現実世界の「崩れ」が原因で終わる公算が大きいのではないか。トリガーとなり得るポイントを3つ指摘する。
◎「中央銀行が最後の買い手」?
日本株に関して「中央銀行が最後の買い手となると市場は理解している」のかもしれない。しかし海外市場は違うだろう。記事ではどこの株式市場で「バブル」が発生しているのか明示はしていない。ただ「米テスラ」を例に挙げているのだから日本株に限定していないのは明らかだ。
「米テスラ」の株価が急落した時にFRBが「最後の買い手」となってくれると「市場は理解している」のか。金融危機的な状況になって株価が急落した時に追加の金融緩和策で株価を下支えする可能性はあるだろうが、それは「最後の買い手」になることを意味しない。
もちろんFRBが危機に際して「最後の買い手」になる可能性はゼロではない。イエレン前議長も昨年に「現時点では必要ないと思うが、長期的にはFRBが購入できる資産について議会に再検討してもらうのは悪くない」と述べたらしい。
しかし現時点で「中央銀行が最後の買い手となると市場は理解している」かと言われれば違う気がする。
※今回取り上げた記事「エコノミスト360°視点~『合理的バブル』が終わるとき」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210122&ng=DGKKZO68376020R20C21A1TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。中空麻奈氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
BNPパリバの中空麻奈氏に任せて大丈夫? 東洋経済「マネー潮流」https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/bnp.html
日経「エコノミスト360°視点」に見えるBNPパリバ 中空麻奈氏の実力不足https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/360bnp.html
「『長年の謎』から格付けの意義を問う」中空麻奈氏に感じた「謎」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/blog-post_10.html
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