週刊ダイヤモンド1月16日号に載った村上春樹氏のインタビュー記事は興味深く読めたが、引っかかる部分もあった。「誰もが間違う世界を何が救うのだろうか?」という記事の一部を見ていこう。まず聞き手の杉本りうこ副編集長の問いが気になった。
大阪市中央公会堂 |
【ダイヤモンドの記事】
ーー記者としてはコロナ禍のような事態になると、シングルマザーや学生などの未来ある若者により多くの痛みが生じることに、どうしようもなさを感じます。中高年の正社員より、ずっと多くの痛みを受けています。
◎なぜ「シングルマザー」限定?
なぜ「シングルマザー」に限定して「シングルファーザー」は除外したのだろう。「シングルファーザー」は「痛みが生じ」ていないと杉本副編集長は見ているのか。「正社員」の割合は「シングルファーザー」の方が高いかもしれないが、「シングルマザー」の中にも「正社員」はいる。1人で子育てする非正規労働者に「より多くの痛みが生じる」との認識ならば、そう書いてほしい。
そもそも杉本副編集長はどうやって「痛み」の多寡を判断したのだろう。「コロナ禍」で重症者や死者が高齢者に集中していることを重く見れば「シングルマザーや学生などの未来ある若者」よりも高齢者が「ずっと多くの痛みを受けて」いるとも推測できる。
もちろん「痛み」に関しては様々な考え方が成り立つ。それを「シングルマザーや学生などの未来ある若者により多くの痛みが生じる」と言い切ってしまうところに危うさを感じる。
この問いに対する村上氏の答えは以下の通り。
【ダイヤモンドの記事】
うん、うん、そうだね。
僕が20歳ぐらいだった時代は「世の中は必ず良くなっていく」とみんなが思っていたものです。でも今は、誰もそんなことを思っていない。そればかりか、世の中はどんどんひどくなっていくと思っている。僕はこれが一番の問題だと思う。
◎決め付けが凄い…
村上氏が「20歳ぐらいだった時代」と言えば1970年頃。当時「『世の中は必ず良くなっていく』とみんなが思っていた」のに、50年後には「誰もそんなことを思っていない」。そこまで全員が画一的な考えを持っているのかとの疑問が湧く。決め付けが過ぎる。
自分を振り返ると1970年代には本気で世界が1999年に滅びるのではないかと心配していた。人口爆発によって食糧危機が来るのではとの恐怖もあった。人口が増えないでほしいとずっと願い続けたら、21世紀に入って日本では人口減少が現実になった。
1970年代より今の方がずっと未来に明るい展望を持っている。そういう人もいると村上氏には知ってほしい。
今回のインタビュー記事に関しては、村上氏の発言に事実誤認と思える部分もあった。これに関してはダイヤモンド編集部に問い合わせを送っている。内容は以下の通り。
【ダイヤモンドへの問い合わせ】
週刊ダイヤモンド 副編集長 杉本りうこ様
◇ ◇ ◇
※今回取り上げた記事「誰もが間違う世界を何が救うのだろうか?」
※記事の評価はD(問題あり)。杉本りうこ副編集長への評価はB(優れている)を維持するが弱含みとする。杉本副編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「TSUTAYA特集」に見えた東洋経済 杉本りうこ記者の迫力http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_27.html
「2.5次元」で趣味が高じた東洋経済「熱狂!アニメ経済圏」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/25.html
文句の付けようがない東洋経済の特集「ネット広告の闇」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/blog-post_19.html
「勝者総取り」に無理がある週刊ダイヤモンド「孫正義、大失敗の先」https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/12/blog-post_8.html
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