29日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「先進国の債務、戦後最大~IMF今年予測 世界の財政赤字、GDP比8.5%」という記事はいくつか引っかかる点があった。まず「戦後最大」に注文を付けたい。後藤達也記者と高見浩輔記者は以下のように説明している。
福岡市内を流れる室見川 |
【日経の記事】
財政支出の拡大を受けて政府債務残高は膨張が続く。19年に104.8%だった先進国の残高のGDP比は20年に122.7%に拡大した。
21年はさらに124.9%まで膨らみ、第2次世界大戦直後の1946年の124.1%を上回る。GDP見通しを上方修正したが、歳出も増えるため比率が歴史的な高水準に達する。米国は132.5%でユーロ圏は99.0%となる。世界全体では99.5%とほぼGDP並みの債務になる。
◎過去最大の可能性も…
記事に付けたグラフには1900年以降の推移が出ていて「1946年」を頂点とする山の形が見える。「21年はさらに124.9%まで膨らみ、第2次世界大戦直後の1946年の124.1%を上回る」のであれば、遡れる範囲での「史上最大」となる可能性もあるのではないか。「戦後最大」は間違いではないが、「史上最大」だとすればそちらを前面に出すべきだ。
1900年より前に「史上最大」があるのかもしれない。その場合は、いつ以来の高水準なのかを読者に見せるべきだ。
さらに言えば、「先進国」に焦点を当てるのも不可解だ。「1946年」を上回るからかもしれないが、まずは「世界全体」で考えるべきだ。新型コロナウイルスの感染拡大は「先進国」に限った問題ではない。
「世界全体では99.5%とほぼGDP並みの債務になる」とは書いているが、これが「戦後最大」なのかといった点には触れていない。そこは欲しい。
順序が逆になるが、最初の段落の説明にも気になる部分があった。
【日経の記事】
先進国の政府債務の膨張が続いている。国際通貨基金(IMF)によると2021年の国内総生産(GDP)比は124.9%の見通しで、20年比2.2ポイント上昇し戦後最大となる。世界の財政赤字がGDP比で8.5%と高水準となることが響く。新型コロナウイルス禍で家計や企業を支える財政拡大により、中央銀行の国債購入に依存する構図が一段と強まる。
◎「先進国」の話なのに…
「先進国の政府債務」が「戦後最大となる」理由として「世界の財政赤字がGDP比で8.5%と高水準となることが響く」と書いている。「先進国の政府債務」に影響するのは「先進国の財政赤字」ではないのか。先進国以外の「財政赤字」は直接的には「先進国の政府債務」を増やさないと思える。
※今回取り上げた記事「先進国の債務、戦後最大~IMF今年予測 世界の財政赤字、GDP比8.5%」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210129&ng=DGKKZO68631750Z20C21A1EA1000
※記事の評価はD(問題あり)。後藤達也記者と高見浩輔記者への評価もDを据え置く。
※後藤記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「先進国の金利急低下」をきちんと描けていない日経 後藤達也記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_87.html
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