2021年1月20日水曜日

問題山積みの日経1面「青山商事、売り場最大半減」

20日の日本経済新聞朝刊1面に載った「青山商事、売り場最大半減~6割の400店 スーツ離れ、各社が事業見直し」という記事。見出しを見た時は「青山商事の売り場が最大で半減するのか」と思ってしまった。中身を読んでみると、そんな大きな話ではない。そこを工夫して「1面ワキにふさわしい見出し」にしたのだろう。気持ちは分かるが感心しない。では「青山商事」の「売り場」はどのぐらい減るのか。記事を見ていこう。

夕暮れ時の巨瀬川(久留米市)

【日経の記事】

新型コロナウイルス感染拡大を受けたテレワーク普及でスーツ離れが進んでいる。紳士服最大手の青山商事は専門店の6割にあたる400店で売り場面積を最大5割減らす。空きスペースはコンビニエンスストアなどを誘致する。新しい働き方の普及で、外食や化粧品など幅広い業種で事業の見直しが迫られている。

青山商事がスーツ事業を抜本的に見直すのは1964年の創業以来初めて。2021年3月期最終損益は292億円の赤字(前期は169億円の赤字)に膨らむ見通し。140店舗を閉めた後、存続する紳士服業態の約700店舗のうち400店で、売り場面積を3~5割縮小する

売り場縮小で人件費を抑えるほか、余剰在庫も2~3割削減する。一方、在庫を持たず売上高を確保できるオーダースーツ業態は出店を続ける。


◎色々と疑問が…

約700店舗のうち400店」で「売り場面積」を減らすという話だ。減少率は「3~5割」。つまり最も減る店だと「5割」になる。ここから「青山商事、売り場最大半減」という見出しを引っ張ってきている。間違いではないが誤解を招きやすい。見出しを付けた人間はそれを分かった上で「1面の見出しだから、こうするしかない」と判断したのだろう。

青山商事」に関する説明には他にも色々と疑問が湧く。列挙してみたい。


(1)いつ減らす?

売り場面積を最大5割減らす」と言うものの時期は不明。「140店舗を閉めた後」だとは思うが、この閉店の時期も分からない。

産経新聞によると「青山商事は11日(注:2020年11月11日)、全店舗の2割に相当する約160店舗を令和4年3月末までに閉店すると発表した」らしい。だとすると「140店舗を閉めた後」とは2021年4月以降の可能性が高い。

「when」を抜くのは日経の企業ニュース記事の悪しき伝統ではある。早く断ち切ってほしい。


(2)全体ではどの程度の減少?

6割にあたる400店」で「3~5割」減らすと全体で見ればどの程度の減少になるのかは欲しい。「140店舗」の閉店も合わせた場合の減少率が分かれば、さらに好ましい。今回の記事の説明では、全体でどのぐらい減るのかが見えにくい。


(3)「抜本的に見直す」のは「創業以来初めて」?

昨年11月に大量閉店の方針を打ち出しているのならば、その時点で「スーツ事業を抜本的に見直す」方針を打ち出しているのではないか。これを「抜本的」な見直しと捉えず「専門店の6割にあたる400店で売り場面積を最大5割減らす」段階で「創業以来初めて」の「抜本的」な見直しになると考えるのは無理がある。

1面に持っていくために盛り上げて書いたのだろう。それが記事の質をかえって低下させることに早く気付いてほしい。


※今回取り上げた記事「青山商事、売り場最大半減~6割の400店 スーツ離れ、各社が事業見直し

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210120&ng=DGKKZO68324400Q1A120C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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