2019年6月11日火曜日

「ルノーとFCA」は「垂直統合型」と間違えた日経 中山淳史氏

日本経済新聞で「本社コメンテーター」として記事を書いている中山淳史氏を「Deep Insight」の執筆陣から外すべきだ。これまでも問題の多い書き手ではあったが、11日の記事では初歩的な部分で躓いている。文章も拙い。顔写真まで付けて長文のコラムを任せる理由が見当たらない。
久留米市の千光寺(あじさい寺)
      ※写真と本文は無関係です

ルノーとFCA」の統合が「垂直統合型」だと確信できるのならば、中山氏に記事を書かせるのは危険すぎる。

日経には以下の内容で問い合わせを送った。


【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 中山淳史様

11日の朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~車再編 規模から『範囲』へ」という記事についてお尋ねします。まずは以下のくだりについてです。

交渉はお披露目の記者会見を開く直前の6日、FCAが統合提案の撤回を発表した。だが、仮に成就し、新会社が誕生したとして、ルノーとFCAは本当に強い会社になりうるのだろうか。筆者は懐疑的だ。資本関係を前面に巨大化をめざす『垂直統合型』業界再編の時代はもう終わっているからだ

中山様は「ルノーとFCA」の場合、「垂直統合型」に当たると見ているはずです。「垂直統合/水平統合」に関して野村総合研究所(NRI)の用語解説では以下のように説明しています。

垂直統合とは、企業グループが、製品やサービスを供給するためのバリューチェーンに沿って、付加価値の源泉となる工程を取り込むことをいいます。水平統合は、バリューチェーン上に定義される特定の工程で、それを提供する複数の企業グループが一体化することをいいます

ともに自動車メーカーである「ルノーとFCA」の場合、一緒になれば「水平統合」に当たります。「垂直統合型」であれば部品メーカーなどと「統合」する必要があります。「ルノーとFCA」の「統合」に関して「垂直統合型」とした記事の説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

付け加えると「交渉はお披露目の記者会見を開く直前の6日、FCAが統合提案の撤回を発表した」という文は不自然です。主語述語の関係が「交渉は~発表した」となってしまいます。例えば「お披露目の記者会見を開く直前の6日、FCAが統合提案の撤回を発表して交渉は打ち切りとなった」などとすれば問題は解消します。

垂直統合/水平統合」の問題は記事の終盤でも起きています。

ボストン・コンサルティング・グループによれば、自動車産業が生み出す利益は35年までに17年の1.7倍に増える可能性がある。増える利益の大部分はカーシェアリングやデータサービスなど新分野から来るという。そうした時代に積極的に備えたい。再編のあり方も一変するだろう。『資本の論理より仲間づくり』と話すのはトヨタの豊田章男社長だが、垂直統合型の再編が陳腐化するのは言うまでもない。『どんな産業を創るか』というビジョンと構想で異業種が集う企業提携。それが主流になる日が近いはずだ

垂直統合型の再編が陳腐化するのは言うまでもない」と中山様は断言していますが、自動車メーカーが「カーシェアリング」企業と「統合」する場合は明らかに「垂直統合型」です。上記のくだりに関しては「水平統合型の再編が陳腐化するのは言うまでもない」としないと成り立ちません。

ついでに言うと「垂直統合型の再編が陳腐化するのは言うまでもない」と書くと、現時点では「陳腐化」していないと取れます。しかし記事の前半で「『垂直統合型』業界再編の時代はもう終わっている」と断言していました。ならば既に「陳腐化」していると見るべきです。

次は日本語訳の問題です。記事の冒頭で中山様は以下のように書いています。

ハリウッド版『ゴジラ』の第3作が封切られ、1作目の公開当時を思い出した。米国での上映開始は1998年5月、宣伝コピーは『サイズ・ダズ・マター(巨大さが度肝を抜く)』といった。なぜ記憶しているかといえば、映画公開とほぼ同時期に米独自動車大手が合併して誕生したダイムラークライスラーをよく取材したからだ。同社も当時、『サイズ・マターズ(英語の意味は同じ)』というコピーを使っていた

matter」に「度肝を抜く」という意味があるのでしょうか。いくつか辞書を調べましたが出てきませんでした。Weblio英語表現辞典で「size matters」の意味を調べると「サイズは重要です(男性器の大きさのことを暗喩する表現)」と出てきます。「巨大さが度肝を抜く」と訳すと正確さに欠けるのではありませんか。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~車再編 規模から『範囲』へ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190611&ng=DGKKZO45905080Q9A610C1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。中山淳史氏への評価もDを据え置く。中山氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経「企業統治の意志問う」で中山淳史編集委員に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_39.html

日経 中山淳史編集委員は「賃加工」を理解してない?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_8.html

日経 中山淳史編集委員は「賃加工」を理解してない?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_87.html

三菱自動車を論じる日経 中山淳史編集委員の限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_24.html

「増税再延期を問う」でも問題多い日経 中山淳史編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_4.html

「内向く世界」をほぼ論じない日経 中山淳史編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_27.html

日経 中山淳史編集委員「トランプの米国(4)」に問題あり
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_24.html

ファイザーの研究開発費は「1兆円」? 日経 中山淳史氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_16.html

「統治不全」が苦しい日経 中山淳史氏「東芝解体~迷走の果て」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post.html

シリコンバレーは「市」? 日経 中山淳史氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_5.html

欧州の歴史を誤解した日経 中山淳史氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/deep-insight.html

日経 中山淳史氏は「プラットフォーマー」を誤解?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post.html

ゴーン氏の「悪い噂」を日経 中山淳史氏はまさか放置?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post_21.html

GAFAへの誤解が見える日経 中山淳史氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/gafa-deep-insight.html

日産のガバナンス「機能不全」に根拠乏しい日経 中山淳史氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_31.html

「自動車産業のアライアンス」に関する日経 中山淳史氏の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_6.html

「日経自身」への言及があれば…日経 中山淳史氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/deep-insight.html

45歳も「バブル入社組」と誤解した日経 中山淳史氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/45-deep-insight.html

0 件のコメント:

コメントを投稿