2019年6月26日水曜日

セゾン投信社長に「アクティブ投信」を宣伝させる週刊エコノミストの罪

週刊エコノミスト7月2日号の特集「老後2000万円貯める! おまかせ投資」でセゾン投信の中野晴啓社長が「アクティブ投信」の良さを必死に強調している。「アクティブ投信」を手掛ける会社の社長としては当然の行動かもしれない。しかし、主張にはかなり無理がある。中野社長に好き勝手なことを書かせたエコノミスト編集部の責任は重い。
石巻駅(宮城県石巻市)※写真と本文は無関係

では何が問題なのか。「投信の『迷信』を斬る! 危うい『インデックス信仰」~“本格志向”投信の選び方」という記事の内容を見ながら指摘していく。

【エコノミストの記事】

いま、日本の個人投資家は、低コストのインデックス(パッシブ)投資に対して“礼賛一辺倒”な状況にある。インデックス投資とは、日経平均株価などの「インデックス(指数)」と連動した運用成績を目指す投資手法だ。

この状況を放置したままでは「アクティブ投信」への関心が薄れ、見捨てられかねない。その結果、日本の資産運用業は存在価値を失い、この国の生活者に芽生えつつある長期投資の機運が損なわれてしまう可能性もある



◎「長期投資の機運」と関係ある?

アクティブ投信」が見捨てられると「長期投資の機運が損なわれてしまう可能性もある」という流れが謎だ。「インデックス投信」で「長期投資」をすればいいだけだ。

「インデックス投信では手数料が低くて儲からない。日本の資産運用業が栄えていくためには高コストのアクティブ投信を売っていく必要がある」と中野社長は言いたいのかもしれない。だとしたら「日本の資産運用業」が「存在価値」を失うのは当然だし、高コストの投信を売らないと生き残れない企業は消えてもらって構わない。

続きを見ていこう。

【エコノミストの記事】

本来、投資は、消費者一人一人が「成長が期待できる」「応援したい」企業を選び、資金を投じる行動である。人々は日常生活の中で、例えばスーパーでもデパートでも、厳しい選択眼を持って消費(買い物)をする。

ところが、なぜか投資の世界では、業績の良い会社も悪い会社も一緒くたにした指数を使うインデックス投資の方が、コストが低くてありがたいという「迷信」が広まっている。インデックス投資は、いろいろなものがそろった「店」を“丸ごと買う”ようなものだ



◎「アクティブ投信」も同じでは?

インデックス投資は、いろいろなものがそろった『店』を“丸ごと買う”ようなものだ」と中野社長は言うが、それは「アクティブ投信」も同じだ。投資家は個別銘柄を「厳しい選択眼を持って」選んでいる訳ではない。

また「インデックス投資の方が、コストが低くてありがたいという『迷信』が広まっている」と言い切るだけで、なぜ「迷信」なのか触れていないも気になる。「低コスト」が「迷信」で実は「高コスト」なのか。それとも「低コスト」をありがたがるのが「迷信」なのか。その辺りは根拠を示して説明すべきだ。

記事の続きを見ていく。

【エコノミストの記事】

億や兆単位の莫大(ばくだい)な金額を運用しなければならないため、なかなか個別企業にまで目配りができない年金などの機関投資家であればともかく、これでは「つみたてNISA(ニーサ)」や「iDeCo(イデコ)」で、ようやく資産運用の意義に目覚めつつある個人投資家が、この「迷信」によって投資信託が単なる株式や債券の詰め合わせであると誤解してしまう



◎「誤解」とは言えないような…

単なる」をどう取るかにもよるが「投資信託」を「単なる株式や債券の詰め合わせである」と理解しても「誤解」とは言えない。株式や債券で運用する「投資信託」に関しては、この理解でいい。他の金融商品が混じっている訳ではない。

さらに続きを見ていく。

【エコノミストの記事】

そうした誤解が広まったことについては、運用業界にも責任がある。特に「疑似アクティブ投信」の問題は深刻だ。最近、ある日本株アクティブ投信の月次報告書で、組み入れ上位企業に「トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、NTT、ソニー、ホンダ」が組み入れられているものを見つけた。ここに挙げた企業は、日本の時価総額上位企業ばかり。運用成績のグラフを見ると、この投信は、「アクティブ」をうたいながらTOPIX(東証株価指数)のインデックス投信と、ほぼ同じような値動きをしている。これが「疑似アクティブ投信」問題である。業界で、インデックスと乖離(かいり)しないアクティブ投信が優れていると言われた時代があり、そのあしき名残を引きずっているのだ。日本では、擬似アクティブ投信のせいで、アクティブ投信が「手数料が高いのに、長期間の平均ではインデックス投信の運用成績に負けている」とたたかれる状況になっている

一方、米国では疑似アクティブ投信を駆逐するため「アクティブ・シェア」という尺度が導入されている。これは疑似アクティブ投信と疑われる投信と、インデックスとの“乖離度”を定量的に測ることができる仕組みである。仮に乖離度が低いと「アクティブ投信なのに真剣に運用していない」と投資家に叱責されることになる。日本でもアクティブ・シェアの早期の普及が待たれる。


◎「真のアクティブ投信」なら勝てる?

日本では、擬似アクティブ投信のせいで、アクティブ投信が『手数料が高いのに、長期間の平均ではインデックス投信の運用成績に負けている』とたたかれる状況になっている」と中野社長は訴える。
筑後広域公園(福岡県筑後市)※写真と本文は無関係です

では「アクティブ・シェア」が一定以上の「アクティブ投信」に関しては、コストの高さを正当化できるほど安定的に「インデックス投信」に勝っているのか。それならば中野社長の言う「迷信」にも説得力が出てくる。

そうなると、「アクティブ・シェア」の高い「アクティブ投信」を多数保有すれば、手数料を考慮してもほぼ確実に「インデックス投信」に勝てる。素晴らしい話だ。本当にそうならばという条件付きだが…。

ところが中野社長は根拠となるデータを示してくれない。それで「インデックス投資の方が、コストが低くてありがたいという『迷信』が広まっている」と言われても信じる気にはなれない。

そして中野社長は「本物志向」のアクティブ投信を8本選んでくれる。信託報酬は全て1%以上の高コスト。その中にはセゾン投信の「セゾン資産形成の達人ファンド」もしっかり入っている。

セゾン投信の商品を売り込むにはどうしたらいいのか中野社長が一生懸命に考えているのは伝わってくる。だからと言って、投資家にセゾン投信の経営を助けてあげる義理はない。「中野社長の説明は基本的にセールストークだ」という認識は持っておくべきだ。

投信を売る会社の社長としては正しい「トーク」をしていると思える。ただ、記事の書き手としての評価はどうしても低くなる。


※今回取り上げた記事「投信の『迷信』を斬る! 危うい『インデックス信仰」~“本格志向”投信の選び方
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190702/se1/00m/020/062000c


※記事の評価はD(問題あり)。中野晴啓社長への評価もDとする。

0 件のコメント:

コメントを投稿