2019年6月19日水曜日

「平井一夫氏がソニーを引退」? 日経 西條都夫編集委員の奇妙な解説

日本経済新聞の西條都夫編集委員が書く記事は相変わらず苦しい。19日の朝刊企業2面に載った「平井会長が退任~ソニーを救った『変ジャパ』トップ」という記事も最初から躓いている。記事を見ながら問題点を指摘したい。
千光寺(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

2012年の経営危機のさなかに社長に就任し、ソニーを再生させた平井一夫氏が18日、ソニーを引退した。同日付で取締役会長を退き、今後は要請があればシニアアドバイザーとして助言するだけだ。平井氏が社長、会長をつとめた7年間でソニーの何が変わったのか。



◎「ソニーを引退」?

まず「ソニーを引退」が気になる。例えばプロ野球に関して「巨人を引退」といった使い方をするだろうか。「平井一夫氏」の場合、「経営者を引退」ならば分かる(経営者はやらないと決めているならばの話だが…)。

それに「シニアアドバイザー」という相談役みたいな肩書が残っているのならば「ソニーを引退した」とも言い切れない。

続きを見ていこう。

【日経の記事】

平井氏ほど独自のスタイルを持つ経営者はまずいない。普段はジーパンとポロシャツで出勤し、執務室で洋楽を流す。帰国子女のはしりで「日本語より英語のほうがうまい」といわれる。国際基督教大学(ICU)を出て、レコード会社のCBS・ソニーに就職し、ゲーム事業のソニー・コンピュータエンタテインメントの勤務も長かった。


◎「独自」でもないような…

平井氏ほど独自のスタイルを持つ経営者はまずいない」と西條編集委員は言う。しかし大した「独自」性は感じられない。「普段はジーパンとポロシャツで出勤」しているらしいが、記事に付けた経営説明会での写真はスーツ姿だ。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏ならば、ここにもジーパンとTシャツで登場しそうな気がする。
玄海エネルギーパーク(佐賀県)からの風景
        ※写真と本文は無関係です

執務室で洋楽を流す」のも驚きはない。流れているのがビートルズやクイーンならば「平井氏」の年代としてはありがちだ。「帰国子女」にもそれほどの「独自」性はないだろう。例えば楽天の三木谷浩史氏も「帰国子女」だ。

国際基督教大学(ICU)を出て、レコード会社のCBS・ソニーに就職し、ゲーム事業のソニー・コンピュータエンタテインメントの勤務も長かった」という説明に関しては「独自のスタイル」とほぼ関係がない。

さらにツッコミを入れていこう。

【日経の記事】

平井氏はとにかく陽性で、かつ欲がない。18年に会長になった際は最高経営責任者(CEO)の役職を含め、経営の全権を後継の吉田憲一郎社長に渡した。18年3月期は20年ぶりに営業最高益を更新した。「もうしばらく社長をしたい」と思うのが普通だろうが、あっさり引いた



◎「欲がない」?

2018年6月19日の記事で「平井一夫会長(前社長)のストックオプション(株式購入権)などを含む役員報酬は27億円だった」と日経は伝えている。「個別の役員報酬の開示が始まった10年以降で最高だった17年の自身の報酬(9億1500万円)を上回った」らしい。

それで「欲がない」となぜ確信したのか。ひょっとすると、これまで得た報酬のほとんどはどこかに寄付したのかもしれないが…。

付け加えると、トップを6年務めて後進に道を譲るのは、サラリーマン社長としては常識的な線だ。「強欲」とは言わないが「欲がない」と評するほどでもない。

まだまだ、おかしな話は続く。

【日経の記事】

平井氏のように会社での地位や権力にこだわらず、個人的な楽しみを優先するような人がトップに立ち、組織の風通しもかなりよくなったのではないか。うるさ型OBによる現役批判も最近は影を潜めた


◎「個人的な楽しみを優先」?

平井氏」を「個人的な楽しみを優先するような人」と西條編集委員は評するが、そう言える根拠は示していない。そこは触れてほしかった。

仮に「個人的な楽しみを優先するような人」だったとすると、それがなぜ「組織の風通し」を良くする方向に働くのか謎だ。仕事よりも趣味のゴルフを優先する経営者がいたとして「そういう会社は組織の風通しもいいんだろうな」と思えるだろうか。

疑問は他にもある。「うるさ型OBによる現役批判も最近は影を潜めた」ことを根拠に「組織の風通しもかなりよくなったのではないか」と西條編集委員は推測しているようだが、その因果関係もよく分からない。

うるさ型OB」は「組織の風通し」の悪さを「批判」していたのか。そうかもしれないが、記事からはその辺りの事情が読み取れない。結局、上記のくだりはどう理解すべきか解釈に苦しむ。

書くことがなくて、苦し紛れにあれこれ捻り出しておかしな内容になったのかもしれない。だとしたら、やはり西條編集委員には書き手としての「引退」を勧告したい。「日経からの引退」までは求めないので、記事を書かない仕事で活躍してほしい。



※今回取り上げた記事「平井会長が退任~ソニーを救った『変ジャパ』トップ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190619&ng=DGKKZO46281260Z10C19A6TJ2000


※記事の評価はD(問題あり)。西條都夫編集委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。西條編集委員については以下の投稿も参照してほしい。

春秋航空日本は第三極にあらず?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/04/blog-post_25.html

7回出てくる接続助詞「が」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/04/blog-post_90.html

日経 西條都夫編集委員「日本企業の短期主義」の欠陥
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_82.html

何も言っていないに等しい日経 西條都夫編集委員の解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_26.html

日経 西條都夫編集委員が見習うべき志田富雄氏の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_28.html

タクシー初の値下げ? 日経 西條都夫編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_17.html

日経「一目均衡」で 西條都夫編集委員が忘れていること
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_14.html

「まじめにコツコツだけ」?日経 西條都夫編集委員の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_4.html

さらに苦しい日経 西條都夫編集委員の「内向く世界(4)」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/11/blog-post_29.html

「根拠なき『民』への不信」に根拠欠く日経 西條都夫編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_73.html

「日の丸半導体」の敗因分析が雑な日経 西條都夫編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_18.html

「平成の敗北なぜ起きた」の分析が残念な日経 西條都夫論説委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_22.html

「トヨタに数値目標なし」と誤った日経 西條都夫論説委員に引退勧告
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_27.html

「寿命逆転」が成立してない日経 西條都夫編集委員の「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/blog-post_17.html

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