2019年6月29日土曜日

看板倒れが残念な日経ビジネス原隆副編集長の「時事深層」

看板倒れの記事と言えばいいのか。日経ビジネス7月1日号に載った「時事深層 INSIDE STORY~FBの独自通貨 『9000万』が左右するインパクト」という記事は「9000万」に重要な意味があるかのように匂わせている。しかし、中身を見ると期待外れに終わる。
石巻駅(宮城県石巻市)※写真と本文は無関係

最初の段落で原隆副編集長は以下のように打ち出す。

【日経ビジネスの記事】

米フェイスブックが2020年のサービス開始を表明した独自通貨「リブラ(Libra)」に世界が揺れている。全世界で24億人の月間利用者数を誇る「国家」が独自通貨を発行するのに等しいのだから無理もない。そうした中で、既存の金融機関は「9000万」という数字に注目する。リブラの影響度を測るこの数字の意味とは

◇   ◇   ◇

ここでも「9000万」に注目するよう読者に呼びかけている。しかし、この後になかなか「9000万」は出てこない。ようやく解説が始まるのは記事の終盤だ。そのくだりを見ていく。

【日経ビジネスの記事】

別の金融機関の内部資料には、リブラの脅威を測るためにある数字が挙げられている。「9000万」。フェイスブックのプラットフォーム上でビジネスを展開する企業の数だ。

リブラは個人間送金だけでなく商取引での利用も視野に入れている。企業にとって為替手数料がかからずに事業を展開できるメリットは計り知れない。

仮に企業がリブラを法定通貨に換金せず、フェイスブック経済圏の内側だけでやり取りするようになれば、金融界に及ぼす影響は一段と大きくなる。「(市中に出回るお金の量を示す)マネーストック(通貨供給量)に影響がまったくないとは言えない」と金融機関幹部は指摘する。

そんなリブラに規制強化で対抗するのか、利便性の向上で対抗するのか。国や金融機関はいずれかの対応を迫られることになるはずだ。


◎大きく出た割には…

9000万」は「フェイスブックのプラットフォーム上でビジネスを展開する企業の数」らしい。しかし、「この数字の意味」について解説らしい解説はない。

仮に企業がリブラを法定通貨に換金せず、フェイスブック経済圏の内側だけでやり取りするようになれば、金融界に及ぼす影響は一段と大きくなる」かもしれない。しかし、それと「9000万」の関係は不明だ。

例えば「9000万は世界全体の企業の95%に当たる」などと書いてあれば「影響」の大きさを何となくはイメージできる。だが、原副編集長はそうした情報さえ教えてくれない。

9000万」がどれほど大きい数字で、そのうちのどの程度が「リブラ」を使い「フェイスブック経済圏の内側だけでやり取りする」と見込めるのか。結果として世の中はどう変貌していくのか。

ざっくりとした試算を基にしてもいいので、何らかの未来像を読者に示すべきだ。それができないのだとしたら、「9000万」という数字が「リブラ」の持つ「インパクト」を教えてくれるかのような書き方はしない方がいい。



※今回取り上げた記事「時事深層 INSIDE STORY~FBの独自通貨 『9000万』が左右するインパクト
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00222/?P=1


※記事の評価はC(平均的)。原隆副編集長への評価も暫定でCとする。

0 件のコメント:

コメントを投稿