2018年7月23日月曜日

「銀行は変わらずとも生き残れた」? 週刊ダイヤモンドの無理筋

金融業界に関する特集を組む場合に「金融業界は大きく変わりつつある。これまでにない地殻変動が起きている」などと訴えたくなるのは分かる。その方が記事は書きやすい。しかし、やり過ぎると説得力を失ってしまう。週刊ダイヤモンド7月28日号の特集「さらば旧型金融エリート~メガバンク 地銀 信金 信組」では、冒頭から「さすがに無理があるだろう」と思える説明が出てくる。
大雨で冠水した「洋服の青山久留米合川店」周辺
         ※写真と本文は無関係です

週刊ダイヤモンド編集部には以下の内容で問い合わせを送った。

【週刊ダイヤモンドへの問い合わせ】

週刊ダイヤモンド編集部  鈴木崇久様 田上貴大様 中村正毅様

7月28日号の特集「さらば旧型金融エリート~メガバンク 地銀 信金 信組」についてお尋ねします。「Prologue~大変遅ればせながら銀行が変わります 金融エリート新旧交代の波に乗り遅れるのは誰か?」という特集の最初の記事には以下の記述があります。

ずっと前から国際舞台で真剣勝負を繰り広げてきた自動車や電機などの他業界は、とっくの昔に大リストラを経験し、生き残りを懸けた変革に何度も挑んでいる。一方、規制業種として規制に縛られると同時に守られてもきた銀行業界は、他業界と比べて事業を存続できなくなるリスクが段違いに低く、変わらないままでも生き残ることができた。ところが、前述した業界の構造転換の中で、銀行も存亡の機が迫っていることを自覚。若手から中堅やベテラン、さらには支店長や銀行の役員、頭取に至るまで、銀行というピラミッド型組織のあらゆる層において、遅ればせながら変革が起き始めている


他業界と比べて事業を存続できなくなるリスクが段違いに低く、変わらないままでも生き残ることができた」との説明を素直に信じれば、銀行が破綻した例はほとんどないはずです。しかし、1997年の北海道拓殖銀行、98年の日本長期信用銀行と日本債券信用銀行など多くの銀行が経営破綻に追い込まれています。近年では2010年に日本振興銀行が破綻しました。こうした銀行は「変わらないままでも生き残ることができた」と言えるでしょうか。

特集の別の記事では「89年には13あった都市銀行は、合従連衡を繰り返して3メガバンクとりそな銀行の4行に集約」とも書いています。「変わらないままでも生き残ることができた」のならば、なぜこれほどの大規模な再編が起きたのでしょうか。

自動車や電機などの他業界は、とっくの昔に大リストラを経験し、生き残りを懸けた変革に何度も挑んでいる」と書いてあると、銀行はリストラと無縁でやってきたような印象を受けます。もちろん、そんなことはありません。例えば、りそなグループは2003年にグループ全体で1500人程度の希望退職を実施すると発表しています。

銀行業界は変わらないままでも生き残ることができた」という記事の説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた特集「さらば旧型金融エリート~メガバンク 地銀 信金 信組
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/24085

※特集全体の評価はC(平均的)。鈴木崇久記者への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。田上貴大記者は暫定Dから暫定Cへ、中村正毅記者は暫定Eから暫定でCへ引き上げる。鈴木記者に関しては以下の投稿を参照してほしい。

「頭取ランキング」間違い指摘を無視 ダイヤモンドの残念な対応
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/09/blog-post_29.html

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