2018年1月28日日曜日

西船橋は「都心」? 週刊ダイヤモンド特集「勝つ街負ける街」

週刊ダイヤモンド2月3日号の特集「通勤25分圏外の勝つ街負ける街」は多大な労力を費やして作り上げたのだろう。それは伝わってくるが、「都心」「準都心」「郊外」の定義が苦しい。ゆえにランキングにも、あまり意味がなくなっている。「準都心」という耳慣れない括りを設ける必要性も乏しいと感じた。
耳納連山(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

まずは「あなたの街は準都心? それとも郊外? 通勤25分圏外『郊外判定』マップ」という記事で「都心」「準都心」「郊外」の定義を見ていこう。

【ダイヤモンドの記事】

「郊外」とは具体的にどこの地域を指すのか。実は誰もが認める明確な線引きは存在しない。そこで、本誌はまず、本特集における「都心」「準都心」「郊外」の範囲を定義することにした。ビジネス誌という立場から、“郊外判定の指標”として提案するのは、「勤務地からの時間距離」である。

そこで首都圏と関西圏の主要通勤先となる、私鉄やJRの結節点の都心駅(首都圏は「大手町」、関西圏は「梅田」)からの最短移動時間を計測。0~25分を「都心」、26~45分を「準都心」、46~100分を「郊外」と定義した。

◇   ◇   ◇

この定義には色々と問題がある。列挙してみたい。

◎「都心」が広すぎる

都心」とは「大都会の中心部。特に、東京都の中心部」(デジタル大辞泉)という意味だ。ゆえに、かなり限られた地域しか「都心」とは呼べない。今回の特集では首都圏に関して、大手町から「0~25分を『都心』」と定義したため、千葉県船橋市の「西船橋」まで「都心」になってしまった。首都圏に住む人に「西船橋は都心です」と説明しても納得してくれそうもない。


◎「大手町」だと東により過ぎ

特集では、大手町を基準に「勤務地からの時間距離」を計算したために「都心」が東に偏っている。東の「西船橋」が「都心」となる一方で、「都庁前」「西新宿5丁目」などは「準都心」になっており、一般的な認識とはかけ離れてしまった。


◎何のための「準都心」?

都心と郊外に分けるのはまだ分かるが、何のために「準都心」というカテゴリーを設けたのか、特集を読んでも理解できなかった。「都心」でも「郊外」でもない中間の「準都心」で順位付けして、どんな意味があるのか。

特集では「結果を見ると、『準都心』の上位は『武蔵小杉』や『二子玉川』」と書いている。しかし「準都心」を「郊外」と一緒にしてしまうと「武蔵小杉」も「二子玉川」も上位には来ない。
三池港(福岡県大牟田市)※写真と本文は無関係です

武蔵小杉」や「二子玉川」といった知名度の高いところを上位に持ってくるための括りなのか。だとしたら、やはりこの分類には意味がない。

因みに、今回の特集に関して深澤献 編集長は「From Editors」という編集後記で以下のように記している。


【ダイヤモンドの記事】

大学からは東京。キャンパスこそ都心でしたが、東久留米市の祖母宅に居候していました。就職して一人暮らしを始めたのは三鷹市。結婚後は川崎市にマンションを買いました。首都圏住民のつもりでいましたが、気が付いてみると電話番号が「03」の地域には住んだことがない。根っからの郊外の人です。


◎「根っからの郊外の人」ではないような…

深澤編集長は自らを「根っからの郊外の人です」と言い切っているが、違うはずだ。ダイヤモンドの定義に従えば、「東久留米市」は「郊外」かもしれないが、「三鷹市」は「準都心」だ。「川崎市」もほとんどが「準都心」になる。

しかも記事の書き方から判断すると、「電話番号が『03』の地域には住んだことがない=郊外にしか住んでいない」と深澤編集長は思っているようだ。取材班(宮原啓彰、小島健志、鈴木洋子、松本裕樹、山本 輝、大根田康介、西田浩史の各記者)の誰かが編集長に教えてあげたらどうだろうか。「03地域に住んだことがないからと言って『根っからの郊外の人』って訳ではありませんよ。ウチの定義では、03地域外の西船橋でも『都心』ですから」と。

特集をちゃんと読んでいれば、深澤編集長も自らを「根っからの郊外の人です」と位置付けたりはしなかったはずだが…。


※今回取り上げた特集「通勤25分圏外の勝つ街負ける街
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/22517


※特集全体の評価はD(問題あり)。今回は書き手への評価を見送る。

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