2018年1月24日水曜日

「個人取引に参入」は本当? 日経「オリックス、中国ネット金融に出資」

本文にその内容が出てこない見出しを「カラ見出し」と言う。24日の日本経済新聞朝刊 金融経済面に載った「オリックス、中国ネット金融に出資 67億円 個人取引に参入」という記事では「個人取引に参入」 がカラ見出しになっていた。日経に問い合わせを送ったので、その内容を紹介したい。「同社」の使い方など細かい点もついでに指摘している。
甲佐町やな場(熊本県甲佐町)※写真と本文は無関係です


【日経への問い合わせ】

24日朝刊 金融経済面の「オリックス、中国ネット金融に出資 67億円 個人取引に参入」という記事についてお尋ねします。見出しでは「個人取引に参入」 と明言していますが、本文には相当する記述がありません。最初の段落では以下のように説明しています。

オリックスはこのほど個人間の少額の貸し借りをネットで仲介する『ピア・ツー・ピア(P2P)金融』の中国大手、点融(ディエンロン)に出資した。出資額は67億円で取得した株式割合は非公開だが数%とみられる。フィンテックで個人間融資市場が急速に膨らんでおり、同社は先行する中国企業に出資しノウハウを蓄積する狙いだ

常識的に考えて、P2P金融の中国大手に「数%」出資したからと言って、オリックスが中国で「個人取引に参入」したことにはなりません。記事でも「先行する中国企業に出資しノウハウを蓄積する狙いだ」とは記していますが「個人取引に参入」と判断できる書き方はしていません。

見出しの「個人取引に参入」は誤りと考えてよいのでしょうか。問題ないとの判断であれば、その根拠も教えてください。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として掲げた旗に恥じない行動を心掛けてください。

付け加えると、「フィンテックで個人間融資市場が急速に膨らんでおり、同社は先行する中国企業に出資しノウハウを蓄積する狙いだ」とのくだりの「同社」の使い方に問題があります。文脈上は「同社オリックス」なのでしょうが、「同社」の直前に出てくる社名は「点融(ディエンロン)」になっています。「同社」を「オリックス」と直せば問題は解消します。

また、「出資額は67億円で取得した株式割合は非公開だが数%とみられる」というくだりの「株式割合」も耳慣れない言葉で違和感があります。「投資額は67億円で、出資比率は非公開だが数%とみられる」とすれば「出資」の繰り返しを避けながら、自然な言い回しにできます。

さらに言えば、第2段落の「(点融は)これまでに仲介した約8100億円の融資実績がある」との書き方は、やや不適切だと感じました。点融は仲介業者なので「これまでに約8100億円の融資を仲介した実績がある」などとした方がよいでしょう。


◇   ◇   ◇

なぜカラ見出しになったのか断定はできないが、想像はつく。「個人取引に参入」と明確に打ち出しているのだから、見出しを担当する整理部の担当者が勝手に「個人取引に参入」と判断した可能性は低そうだ。
祐誠高校(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

記事が整理部に届いた際に、仮の見出しに「個人取引に参入」が入っていたのではないか。本文でも最初は「個人取引に参入」と取れるくだりがあったものの、「数%」の出資で「個人取引に参入」では厳しいとの判断で削られて、見出しだけが残ってしまった--。そんな展開ではないかと推測している。

日経からの回答が期待できないので、どういう事情だったのかは知る術がない。ただ、今回のカラ見出しに問題があるのは間違いない。再発防止に努めてほしい。


※今回取り上げた記事「オリックス、中国ネット金融に出資 67億円 個人取引に参入
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180124&ng=DGKKZO26032330T20C18A1EE9000


※記事の評価はD(問題あり)。

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