2018年1月2日火曜日

冒頭から不安を感じた日経 正月1面企画「パンゲアの扉」

日本経済新聞朝刊1面の正月企画「パンゲアの扉 つながる世界」が1日に始まった。「(1)溶けゆく境界 もう戻れない デジタルの翼、個を放つ 混迷の先描けるか」という記事では、冒頭から「違うんじゃないか」と感じた。まずは、そこを見ていこう。
筑後川の恵蘇宿橋(福岡県朝倉市・うきは市)
           ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

 一握りの大国や大企業だけが力を振るってきたグローバリゼーションが変わる。小さな国、小さな企業、そして個人。デジタルの翼に解き放たれ、境界を溶かしてゆく。つながる世界への扉が開いた。もう誰も後には戻れない。


◎これまでは「大国だけ」?

日経の正月企画の難しさが冒頭に出ているとも言える。正月企画は「世界が激変期を迎えてます。そのダイナミックな動きを日経がお届けしますよ」といった力の入ったものになりがちだ。しかし、実際にそんなに劇的な変化が毎年のように起きるわけではない。なので、意義付けが強引になりやすい。

デジタルの翼に解き放たれ、境界を溶かしてゆく」との記述から判断すると、今回の連載は日経が何度も1面連載で手掛けてきた「ネットが世界を変える」的な内容になるのだろう。この手の連載では無理のある「革命」が登場しやすい。そこは、第2回以降を注視したい。

初回の冒頭で気になったのは「一握りの大国や大企業だけが力を振るってきたグローバリゼーションが変わる」との部分だ。従来の「グローバリゼーション」では「一握りの大国や大企業だけが力を振るってきた」との前提を感じる。これは正しいのだろうか。

例えば、ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブはベルギーの会社だ。世界最大の食品飲料会社であるネスレはスイスで、サムスン電子は韓国だ。これらの企業は「グローバリゼーション」の流れの中で「力を振るってきた」と思えるが、ベルギー、スイス、韓国を「一握りの大国」に含める人は稀だろう。

1人当たりGDPで見ても、上位にはルクセンブルク、スイス、ノルウェーなど「大国」以外が目立つ。「一握りの大国だけが力を振るってきた」のがこれまでの「グローバリゼーション」だとしたら、なぜルクセンブルクの1人当たりGDPは高水準なのか。

大企業だけが力を振るってきた」との前提もやはり苦しい。ネット関連ではベンチャー企業が世界的なサービスを生み出した例は珍しくない。フェイスブックやツイッターもそうだ。「一握りの大企業だけが力を振るって」いる世界ならば、新参のベンチャーが大成功を収める余地はないはずだ。

連載では「小国でも、ベンチャー企業でも、個人でもやれる。世界は変わる」と訴えていくのだろう。だが、それは以前と劇的に違う世界ではない。しかし、日経の正月企画では大げさすぎる「革命」が起きてしまいそうだ。杞憂であればいいのだが…。


※今回取り上げた記事「パンゲアの扉 つながる世界(1)溶けゆく境界 もう戻れない デジタルの翼、個を放つ 混迷の先描けるか
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180101&ng=DGKKZO25273990R31C17A2MM8000


※記事の評価はC(平均的)。今回の連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。

アルガンオイルも1次産品では? 日経「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_4.html

スリランカは東南アジア? 日経「パンゲアの扉」の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_28.html

根拠なしに結論を導く日経「パンゲアの扉」のキーワード解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_8.html

0 件のコメント:

コメントを投稿