2018年1月10日水曜日

参入済みでも「滴滴、シェア自転車参入」と打ち出す日経の悪癖

10日の日本経済新聞朝刊アジアBiz面に載った「滴滴、シェア自転車参入 領域拡大、競争力に磨き」という記事は、日経の悪い癖が色々と出ている。まず見出しだ。「滴滴、シェア自転車参入」と打ち出した場合、ほとんどの読者は「滴滴が新たにシェア自転車事業へ参入する」と受け取るはずだ。実際は既に参入済みのようだ。記事の一部を見ていこう。
原鶴温泉(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

【北京=多部田俊輔】中国ライドシェア最大手の滴滴出行は9日、シェア自転車に本格参入すると発表した。2017年11月に経営破綻した中国シェア自転車「小藍単車(ブルーゴーゴー)」の運営を実質的に継承することでブルーゴーゴーの運営会社と合意した。自動車から自転車に事業領域を拡大し、交通のシェアエコノミー分野での競争力向上をめざす。

滴滴とブルーゴーゴーを運営する天津鹿鼎科技の合意によると、ブルーゴーゴーの利用者はシェア自転車を利用する時に支払った保証金や入金残高を滴滴が提供するライドシェアやシェア自転車のサービスのクーポン券に転換できる。

滴滴は「ofo」ブランドでシェア自転車サービスを展開している北京拝克洛克科技に出資しており、スマートフォン(スマホ)向けアプリでタクシーなどの配車やライドシェアに加え、ofoのサービスも提供している。ブルーゴーゴーの運営を実質的に継承することで、ofoとブルーゴーゴーを統合した新サービスを立ち上げる。


◎立派に「参入」しているような…

滴滴、シェア自転車参入」という見出しに釣られて記事を読み始めると、すぐに「シェア自転車に本格参入する」と出てくる。これまでも繰り返し指摘しているように、日経の記事で「本格」の文字を見つけたら要注意だ。話を大げさにしている可能性が高い。

滴滴は『ofo』ブランドでシェア自転車サービスを展開している北京拝克洛克科技に出資しており」「ofoのサービスも提供している」という。だったら、立派に「シェア自転車サービスを展開している」。現状では「サービスを展開している」地域がごく一部に限られるといった事情があれば「本格参入」と書くのも分かるが、そうした説明は見当たらない。

参入」済みの事業での新たな展開を「本格参入」と表現し、見出しでは「本格」も省いて「参入」にしている。これでは「記事に騙しあり」と言われても仕方がない。

ついでに、いくつか指摘しておきたい。まずは「滴滴とブルーゴーゴーを運営する天津鹿鼎科技の合意によると」との記述について。この書き方だと「滴滴とブルーゴーゴー」を「天津鹿鼎科技」が運営しているように見える。簡単に直すならば「滴滴と、ブルーゴーゴーを運営する天津鹿鼎科技」と読点を打てばいい。

記事には「滴滴はブルーゴーゴーの資産や負債などは引き継がないとしている」との説明があるが、一方で「ブルーゴーゴーの利用者はシェア自転車を利用する時に支払った保証金や入金残高を滴滴が提供するライドシェアやシェア自転車のサービスのクーポン券に転換できる」とも書いている。

保証金」も「負債」なので、「保証金」を「クーポン券に転換できる」のならば、実質的に「負債」を引き継いでいるように思える。また、ブルーゴーゴーの「運営を実質的に継承する」のに、ブルーゴーゴーの「資産」に当たる自転車は全く「引き継がない」のかとの疑問も残る。「資産や負債などは引き継がない」との説明が正しければ、事業に必要な自転車は滴滴が全て新たに用意するのだろうが…。


※今回取り上げた記事「滴滴、シェア自転車参入 領域拡大、競争力に磨き
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180110&ng=DGKKZO25464820Z00C18A1FFE000


※記事の評価はD(問題あり)。多部田俊輔記者への評価も暫定でDとする。

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