2018年1月12日金曜日

必須情報が抜け過ぎの日経「三井造船、港湾クレーン増産」

12日の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「三井造船、港湾クレーン増産 生産能力1.5倍に」という記事は、必須情報が抜け過ぎている。見出しだけ見ると 「三井造船の港湾クレーン生産能力は1.5倍になる」と思ってしまう。しかし実際はもっと増えるはずだ。そして、それがどの程度かを記事は教えてくれない。
大刀洗平和記念館(福岡県筑前町)のMH2000ヘリコプター
               ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

三井造船はコンテナ貨物の積み下ろしに使う港湾クレーンの増産に乗り出す。国内工場に新設備を導入し、生産能力を1.5倍に拡大。インドネシアでは新工場を立ち上げる。東南アジアやアフリカ、南米を中心に今後、港湾クレーン需要が高まる見通し。三井造船は増産とともに短納期、付加サービスにも力を入れ、世界シェア7割の中国メーカーを切り崩す。

主力の大分事業所(大分市)では約2億円を投じ、クレーンの最終組み立て設備を導入。船から陸上にコンテナ貨物を移す際に使われる大型クレーンの生産能力を、年23台から年36台体制へと引き上げる。


◎全体でどの程度の増産?

記事を最後まで読むと「生産能力を1.5倍に拡大」するのは、あくまで「主力の大分事業所」だと分かる。「主力の」と書いているので、他にも既に生産拠点があるように感じる。仮に「大分事業所」が唯一の拠点だとしても、「インドネシアでは新工場を立ち上げる」のだから、それも含めると三井造船の生産能力はもっと増えるはずだ。しかし、インドネシアでの生産規模が不明のまま記事は終わってしまう。

三井造船、港湾クレーン増産」という内容の記事であれば、三井造船全体でどの程度の増産になるのかは必須だ。それが欠けているのだから、明らかな欠陥と言える。

この記事の欠陥はそれだけではない。日経の“伝統芸”である「When抜き」もダブルでやっている。「大分事業所」で生産能力を増やす時期も、インドネシアで「新工場を立ち上げる」時期も謎のままだ。

さらに言うと「三井造船は増産とともに短納期、付加サービスにも力を入れ、世界シェア7割の中国メーカーを切り崩す」とのくだりも引っかかった。こういう書き方をするのならば、三井造船の現状のシェアを読者に見せてあげるべきだ。

短納期、付加サービスにも力を入れ」と書いているのに、その具体的な内容に触れないのも感心しない。最初は「短納期、付加サービス」の詳しい中身に言及していたものの、紙面化する段階で削ったのかもしれない。その場合は「短納期、付加サービス」を記事から完全に落とした方がいい。残しておくと、読者に余計な期待を持たせかねない。

ニュース記事を書くときには「盛り込むべき必須情報は何か」をしっかり意識してほしい。今回の記事では、記者もデスクも初歩的なところで躓いてしまっている。


※今回取り上げた記事「三井造船、港湾クレーン増産 生産能力1.5倍に
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180112&ng=DGKKZO25587340R10C18A1TJ1000


※記事の評価はD(問題あり)。

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