2019年3月15日金曜日

「新・物言う株主」が新しくない日経 浜岳彦記者の「スクランブル」

14日の日本経済新聞朝刊マーケット総合1面に載った スクランブル~新『物言う株主』は買い? 東芝への経営関与 試金石」という記事は、話の柱となる「新『物言う株主』」に無理がある。最初の段落で筆者の浜岳彦記者は以下のように述べている。
日田市役所(大分県)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

物言う株主が日本株を再び揺さぶり始めた。オリンパスに続いて東芝にも経営関与を提案。かつての村上ファンドのように株主還元を迫るだけでなく、自ら経営に関与しようとするのが今の潮流だ。新型の物言う株主は日本で市民権を得るか。東芝が試金石だ。



◎昔の「物言う株主」は株主還元だけ要求?

かつての村上ファンドのように株主還元を迫るだけでなく、自ら経営に関与しようとするのが今の潮流だ」と言うが、以前から「物言う株主」は「自ら経営に関与しよう」してきたはずだ。

日本大百科全書(ニッポニカ)」は「物言う株主」について以下のように説明している。

株主としての権利を行使し、企業価値が向上するよう経営の見直しを求める投資家の総称。海外では、大量に取得した株式をてこに、積極的に経営改革を迫ることから、アクティビストactivist(行動主義者)とよばれる。経営効率を高めて株価や配当を引き上げる目的で、低収益事業の売却、高収益事業の買収・合併(M&A)、経営資源の集中、コスト削減、手元資金の活用、改革に消極的な役員の退任、改革推進派の役員選任などを要求する傾向がある。(中略)2013年にはアメリカのヘッジファンド大手サード・ポイントThird Point LLCがソニーの映画・音楽部門の分社化を要求するなど、市場での存在感を高めていった

この説明を信じれば「物言う株主」は過去にも「株主還元を迫るだけ」の存在ではなかったことになる。それを裏付けるような事例を浜記者も取り上げている。

【日経の記事】

物言う株主の関与が成功するとは限らない。かつて米スティール・パートナーズはアデランスホールディングスに経営陣を送り込むがうまくいかず、同社はMBO(経営陣が参加する買収)で上場廃止に。米国でも物言う株主を取締役に招いたゼネラル・エレクトリックは経営が混迷する。



◎2009年には「潮流」が…

米スティール・パートナーズ」が「アデランスホールディングスに経営陣を送り込」んだのが2009年だ。なのに「自ら経営に関与しようとするのが今の潮流」で、そうした手法をだと「新『物言う株主』」になるのか。

浜記者はさらに以下のように解説する。

【日経の記事】

経営陣を送り込み、手間暇をかけてまでリターンを高めようとする背景にはファンド間の競争激化がある。指数連動のパッシブ型ファンドは低コストを武器に巨額のマネーを引き付ける。一方で個別企業を選別するファンドは「特色を出さなければ生き残れない」(国内ヘッジファンド)。



◎「特色」出せる?

経営陣を送り込み、手間暇をかけてまでリターンを高めようとする」ことで「ファンド」としての「特色」が出せるだろうか。「アクティビスト」ならば当たり前の話であり、「特色」は感じられない。

結局、「新型の物言う株主」は存在自体が怪しいと言うべきだろう。


※今回取り上げた記事 スクランブル~新『物言う株主』は買い? 東芝への経営関与 試金石
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190314&ng=DGKKZO42429630T10C19A3EN1000


※記事の評価はD(問題あり)。浜岳彦記者への評価もDで確定とする。浜記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「ソニーがフル生産しない理由」が謎の日経「会社研究」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/01/blog-post_70.html

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