2019年3月25日月曜日

1面トップなのに中身乏しい日経「希少薬、日本発で世界へ」

25日の日本経済新聞朝刊1面トップを飾った「希少薬、日本発で世界へ~富士フイルムや武田、収益源に」という記事は苦しい内容だった。中身の乏しい話を強引にまとめてアタマ記事に仕立てたのだろう。繰り返し訴えているが、苦し紛れのまとめ物をニュース記事にするのは避けた方がいい。
平和祈念像(長崎市)※写真と本文は無関係です

最初の段落は以下のようになっている。

【日経の記事】 

日本の製薬各社が難病でもある希少疾患(総合・経済面きょうのことば)向けの開発を加速する。患者数が少なく企業が及び腰になる分野だったが、デジタル化の進展や政府の支援を背景に収益化が視野に入った。富士フイルムや武田薬品工業などは国内外で事業化を加速し、欧米大手に対抗できる収益源を育てる。効果的な薬が乏しかった希少疾患の治療法拡充が期待されるほか、患者数が多い他の難病への応用など技術・産業基盤の強化につながる可能性もある。



◎「開発を加速」と言うが…

日本の製薬各社が難病でもある希少疾患向けの開発を加速する」「富士フイルムや武田薬品工業などは国内外で事業化を加速」と言うが、続きを読むとどうも怪しい。まずは「富士フイルム」を見ていく。

【日経の記事】

富士フイルムは希少疾患「ライソゾーム病」の治療研究を本格化する。体内で不要となった物質を分解する酵素に異常が起き肝臓や骨、中枢神経に重篤な症状が出る。酵素を人為的に補う対症療法が中心で成人になる前に死亡するケースが多い。富士フイルムは再生医療技術を応用。マウスでの実験で疾患の原因となる不要酵素の蓄積を減少させる効果を確認した。

◎「本格化する」してる?

富士フイルムは希少疾患『ライソゾーム病』の治療研究を本格化する」と言うが、どう「本格化する」のかは教えてくれない。最初に出てくる事例がこれだと後は推して知るべしだ。一応、他も見ておこう。


【日経の記事】

武田は希少疾患の大手シャイアーを約7兆円で買収。取り込んだ技術をもとに血液難病の「血友病」や体の様々な場所が腫れる「遺伝性血管浮腫」など12種類の医薬品候補の開発を進める。クリストフ・ウェバー社長は「日本の製薬会社として、希少疾患で世界の先頭を走る」と明言。がんや中枢神経疾患などに続く新たな柱に育てる。

◎「加速」してないような…

富士フイルムや武田薬品工業などは国内外で事業化を加速」させているはずだが、上記のくだりを読んでも「武田」が「事業化を加速」させている感じはない。「開発を進める」と書いているだけだ。

3つ目の事例も見ておく。

【日経の記事】

中堅製薬のJCRファーマは希少疾患治療で難題となる脳への薬物伝達で画期的な新技術の開発に成功した。パーキンソン病やアルツハイマー病など脳神経に関係する難病にも応用でき、世界の製薬大手が提携を持ちかけている。

◎「希少薬」から外れてない?

JCRファーマ」に至っては「希少薬」そのものを開発しているのではないようだ。「画期的な新技術」と言うものの、どこが「画期的」なのかも触れていない。やはりこの記事はまとめ物としては苦しい。なのに1面トップに持ってくるとは、悪い意味で度胸がある。

ついでに言うと、この記事には整合性の問題も感じた。記事によると「希少疾患は患者数が極めて少ない難病」で「個々の希少疾患の市場規模は小さい」らしい。なのに「各社は日本で開発に成功した新薬を海外展開すれば、希少疾患の分野でも年間売上高が1千億円超の『ブロックバスター(大型新薬)』が育つと判断している」という。

だとしたら「個々の希少疾患の市場規模は小さい」とは必ずしも言えない。「希少疾患」の治療薬が「大型新薬」に育つと言われると矛盾を感じる。超高額の薬ならば、あり得ると言えばあり得るが…。


※今回取り上げた記事「希少薬、日本発で世界へ~富士フイルムや武田、収益源に
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190325&ng=DGKKZO42846320U9A320C1MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。

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