2018年5月5日土曜日

見出しに問題あり 日経「SMBC日興証券、ビッグデータで生涯収支を試算」

4日の日本経済新聞朝刊 金融経済面に載った「SMBC日興証券、ビッグデータで生涯収支を試算」というベタ記事は、見出しが引っかかった。「個人の生涯収支なんて、ビッグデータを使わなくても試算できるのでは?」と感じたからだ。そこで記事を読むと「ビッグデータで生涯収支を試算」とは書いていなかった。
眼鏡橋(長崎県諫早市)※写真と本文は無関係です

記事の全文と日経への問い合わせは以下の通り。

【日経の記事】

SMBC日興証券は、顧客の生涯収支や家族構成から適切な資産形成を助言する営業ツールを導入する。顧客に設問に答えてもらいながら、人生設計を詳しく把握し、運用ニーズを掘り起こす。金融情報会社モーニングスターと共同で、ビッグデータを活用する「One・PIT」を開発した。国税庁の公開データを用い、顧客の老後の収支の過不足を計算する


【日経への問い合わせ】

4日の「SMBC日興証券、ビッグデータで生涯収支を試算」という記事についてお尋ねします。見出しでは「ビッグデータで生涯収支を試算」となっていますが、本文では「国税庁の公開データを用い、顧客の老後の収支の過不足を計算する」と書いています。「老後の収支」ならば、現役時代の収支は含まないので「生涯収支」とは言えないはずです。また「国税庁の公開データを用い」て「計算する」のであれば、「ビッグデータで試算」とも言い難いでしょう。「ビッグデータ」に明確な定義はないかもしれませんが、「国税庁の公開データ」のみで「ビッグデータ」と見なすのは無理があります。

生涯収支」「ビッグデータ」については「SMBC日興証券は、顧客の生涯収支や家族構成から適切な資産形成を助言する営業ツールを導入する」「金融情報会社モーニングスターと共同で、ビッグデータを活用する『One・PIT』を開発した」というくだりで出てきます。しかし、ここからも「ビッグデータで生涯収支を試算」とは読み取れません。

見出しの「ビッグデータで生涯収支を試算」という部分は誤り(あるいはカラ見出し)と考えてよいのでしょうか。もちろん、本文の方が間違っている可能性もあります。いずれも問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として掲げた旗に恥じぬ行動を心掛けてください。

付け加えると、この記事では「営業ツールを導入する」と書いているだけで、導入の時期に触れていません。ニュース記事としての不可欠な情報が欠けているのではありませんか。

◇   ◇   ◇

顧客の生涯収支や家族構成から適切な資産形成を助言する営業ツールを導入する」という部分から見出しを取ると、ニュースの価値がなさそうに見えるので、整理部の担当者がそれなりに工夫して見出しを考えたのだとは思う。だとすると、見出しを付けにくい記事を書いた記者の側にも問題がある。

追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「SMBC日興証券、ビッグデータで生涯収支を試算
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180504&ng=DGKKZO30122070T00C18A5EE9000


※記事の評価はD(問題あり)。

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